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Gary Kildallインタビュー(月刊ASCII 1987年11月号13) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

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たまにあるインタビュー記事がいい。かなり言い過ぎの面もあるが宝物といってもいいかもしれない。
この号はデジタルリサーチのゲイリー・キルドールのインタビューだった。8bitでくたばれBASICと言っていた私は、CP/MでOSというものを学んだ。Editor でプログラムを書いて、アセンブラでアセンブルして、リンカーでリンクしてオブジェクトを作る。この手間が楽しかった。そういった楽しみを与えてくれたゲイリー・キルドールのインタビューを記事を発見した記念にスクラップする。

あおり文をスクラップする。
 1971年11月,Intel社がElectronic News誌に最初のマイクロプロセッサ4004を公開してから,16年が経過した.その間,マイクロプロセッサは8bitから16bitを経て、今や32bitの世界に突入している。
 パーソナルコンピュータの使用環境も,簡単なモニタプログラムからCP/M,MS-DOSへと変化し,UNIXさえも動くようになるなど,目まぐるしく進歩してきた.急速に拡大しつつあるパーソナルコンピュータ業界にあって,Gary Kildallは,Bill Gatesと並んで常に業界を一歩リードしてきた.
 彼は,CP/Mの開発者として有名だが,現在はDigital Research社の会長職をこなすかたわら、パーソナルコンピュータ関係のテレビ番組にレギュラー出演するなど多忙な日々をおくっている.そして最近は、CD-ROMのソフト開発を目的としたKnowledgeset社*1を設立するなど,新たな動きが注目されている.
 Digital Research社の本拠地モンタレー市は高級保養地として知られ,毎年夏に行われるジャズ音楽祭でも有名である.筆者の住むサン・ジョゼからは,自動車で約1時間,ハイウェイ17号線を南に走り,サンタ・クルーズで1号線に乗り換えると,まもなくモンタレー市に着く.松の林にかこまれた丘の中腹にある同社の建物は,シリコンバレーにあるような軽薄なティルトアップ工法のオフィスとは異なり,巨大な山荘風のデザインだ同じ敷地内にあるKnowledgeset社のコンファレンスルームで待っていると、ラフな格好をしたGary Kildall氏が現れた.
*1 Knowledgeset社: Gary Kildallが3年前に設立したCD-ROMのオーサリング/製作会社, Grolier社の百科事典のCD-ROM版に搭載されているKRS (Knowledgeset Retrieval System)は,同社が開発した検索専用ソフト.膨大な情報の中から,目的の単語を短時間で検索できる.

DigitalResearch社を創業して11年
Q:アスキーは今年で10周年を迎えましたが,Digital Research社を創業されたのはいつ頃ですか?」
G:DigitalResearch社も去年の12月でちょうど10年を迎えたところです.アスキーとほぼ同じですね.
Q:Digital Research社を創業してから,様々なことがあったと思いますが,特に印象に残っていることは何ですか?
G:10年やってきて、大きな分岐点がいくつかありました.システムプログラマとして働いていた頃には,学校での経験がとても大きかったと思います.私は,当時,バローズ社のB5500というマシンを使っていましたが,そのOSやプログラミング言語にとても関心がありました.優秀なマシンだったからです.もっとも影響を受けたのは、ミニコンピュータや大型コンピュータです.それらで動作するソフトを,もっと小さなマシンに対応させようと考えたのが事の起こりです.1970年の終わり頃から,われわれは,リアルタイム/マルチタスク/マルチユーザーのOSの開発に取り組んでいました.そして,ミニコンピュータに要求されるようなレベルのOSや言語を作ろうとしていました。
Q:初期には,Intel社のISIS・OS用*2にPLMを作りましたね。そして,それが同社の戦略言語になっていく……
G:そうです.1973年頃だったかな.当時は、PDP10のタイムシェアリングシステム上でプログラムを書いていました.そのPLMがIntel社の手でISIS上にポーテイングされたわけです.PLMは,カリフフォルニア大学サンタクルーズ校で開発されたXPLと呼ばれる言語に影響を受けています。
Q:現在,80386をターゲットにしたOSが各社で開発されていますが,Digital Research社では80386について,どのような戦略,あるいはOSを考えていますか?
G:現在のところ,80386で走るOSは2つ開発しています.1つはコンカレンートDOS386で,もう1つはFLEXです.FLEXは,80386のプロテクトモードで走り,C言語もサポートしています.30ms程度のレスポンスタイムでリアルタイムに動作します。だから,どちらかと言うとインダストリアル・コントロール用OSですね。
 これに対して,コンカレントDOS386は、MS-DOSコンパチブルであるうえに、マルチユーザー/マルチタスク機能を持たせています.そして,LIM-EMS*3もサポートしています.LIM-EMSは,Lotus,Intel,Microsoftの拡張メモリ仕様のことです.
Q:将来的には、どういうOSあるいは環境を作っていくつもりですか?
G:FLEXなどは,かなり新しい環境を提供しているので,今のところは次のステップに移る考えはありません.1984年に,FLEXはIBM PCのコントロール用OSとしてインプリメントされています.セーフウェイストア(西海岸を中心にしたスーパーマーケットチェーン)にいけば実物が見られますよ.キャッシュレジスタとしてね.その業界では,かなり好調に売れています.
*2 1SIS・OS: PDP10上で動作するタイムシェアリングOS.
*3 LIM-EMS: Lotus, Intel, Microsoft社のバンク切り換え方式による拡張メモリの規格,最大8Mbytesまでの拡張メモリを16Kbytesのページ単位で扱うことが可能.IBM PC用の規格としては一般的になっているが,最近ではPC-9800 シリーズ用のEMSソフトも開発されている.
FLEX OS あったような記憶がするが、全く関心が無かった。趣味のパソコンユーザには浸透しなかった。インタビューの初めにあったASCIIが10周年を迎えたという前振り必要だったか?いらんだろう。
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CD-ROMに必要なのはHypertextのコンセプト
Q:最近は,Knowledgeset社に専念されているようですが,CD-ROM分野では,どのような戦略を展開していくお考えですか。
G:Knowledgeset社の基本的なアイデアは、オプチカルパブリッシングビジネスです。その手始めとして,2年前にGrolier社の百科事典のディスクを作ったわけです。
 それ以後は,テクニカルなドキュメンテーションの分野に的を絞りつつあります.テクニカルドキュメンテーションは膨大で,現在,マイクロフィルムからのリプレイスが必要になってきています.つまり,マイクロフィルムをCDROMに置き換えるわけです.現在われわれが作っているディスクは、ほとんどが,こうした置き換えです.
 置き換えの際の全体的なアイデアは,Ted Nelsonが提唱したHypertext*4のコンセプトに従っています.御存じのとおり,HypertextやHypergraphicsというものは、データへのアクセスを非常に簡略化します.ただ画面上の点をマウスなどでクリックするだけで望みのデータを引き出せます。
Q:予備知識のない人が巨大なデータを操作するときには,Hypertextのようなコンセプトを用いる必要があるということですが,他に何かアイデアをお持ちですか?
G:いくつか考えなければいけないことがあります.ただ単に、画面上の言葉を指してナビゲートするだけではだめです.他にもいろいろな要素が含まれているわけですから、データの内容はどんなものであるか,どの種の情報を取り扱おうとしているのか,といったことを把握しなければなりません.それを明らかにしなければ,テクニカルなドキュメントを取り扱うことは不可能です.
 重要な点は、素早く応答でき,操作性が良くなければならないということです.単なるテキストサーチやグラフィックス・サーチみたいなものでも,マイクロフィルムの操作に匹敵するものでなければなりません.たぶんブックマークのようなものが,その手助けになるかもしれません.
 われわれのシステムでは,それをExpert Viewと呼んでいます.Expert Viewは,見ている情報に関連するドキュメントが何かを知らせるようなものです.Expert Viewを用いると,任意のテキストを取り出して,後でワードプロセッサで簡単に処理できます.テクニカルドキュメンテーションには,非常に効果的な機能でしよう。
Q:そのシステムは,シアトルのCD-ROMコンファレンスで公開したGEMベースのシステムですね.
G:そうです。われわれは,単なる電子-百科事典からテキストとグラフィックスを組み合わせたテクニカルドキュメンテーションの分野に移行しつつあります.HypertextやHypergraphicsのコンセプトは,こうした分野では非常に大切なものになるでしょう.
Q:テキストデータやグラフィックスデデータを再構成するのは,大変な労力でしよう?
G:はい.最大の問題は,膨大な量のスキャンデータがあって,それらを何らかの方法で圧縮した形にしなければならないことです。スキャンされただけのデータは多量のディスクスペースを必要とします.そこで,われわれはグラフィックスをベクトル化してディスクスペースを-小さくするテクニックを開発しています。
Q:PC-WORLD誌上でのAlan KayやTom Lopezとの討論の中で,あなたはCD-Iについてコメントしていますね.小規模な企業にとってCD-Iをやるには金がかかりすぎるだろうと,現在,数社がCD-I用オーサリングシステムの開発をしていますが,どうお考えですか?」
*4 Hypertext: Ted Nelsonが1970年代に提唱したコンセプトで、テキストや - グラフィックスなどから構成される非連続な構造体のこと、構造体内のどの要素に対しても,新たな構造体が追加できる柔軟なシステムが基本になっている。代表的なソフトとしては, Apple社のHyperCardがある(本誌169ページ参照).

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CD-lは,まだリスキーなビジネス
G:CD-IとCD-ROMを比べた場合,小規模な企業にとって重要な問題は資金です.まず第1に,CD-Iディスクは、ただ単にディスク上にデータを配置する以上のことをやらなければなりません.本質的には,映画を作るようなものです.
 まずストーリーボードを作る必要性が出てくるし,それから各種のキャラクターを作る才能も必要になってきます.私の知る限り,本質的にはかなり高価な映画を作るのに匹敵します。例えば,平均レベルのビデオを作ろうとしたら,たぶん10万ドルか20万ドル,あるいはそれ以上かかると思いますね.CD-Iも同じくらい必要でしょう.
 第2に,CD-Iを作るには膨大な量のスチルフレームを処理する必要があるし,サウンドの質という点でも多くのことを片づけなければいけません.元のデータを準備するだけでも高くつきます.オーサリングシステムについては、私の知る限り,研究所やごく限られたところにしかないはずです.したがって,Knowledgeset社は、CD-ROMに投資したほうが得策だと結論したのです.CD-ROMは、はっきりした市場が存在していますからね.その上,オリジナルデータのコストもCD-Iに比べるとはるかに安いのです.データは,磁気テープの形で存在していることが多く,複雑な処理をする必要はありません.
 ビジネスという観点から見た場合,少ないコストで,すでに存在している市場に売ることができるわけです.現時点では,CD-Iは大企業のビジネスではないでしょうか。
 ただ,私は決してCD-Iがだめだと言っているわけではありません.将来的には見通しは明るいと思います.今がビッグチャンスかもしれません.
CD-ROMならまだしも、CD-Iってなんだ?ゲーム機に搭載された?私は多分使ったことがない。このようにダメだったものが沢山あったのがパソコン関係の歴史だ。前にも使ったが、死屍累々というのがパソコンの歴史にはピッタリの言葉だ。
DVlは,標準仕様の策定がカギ
Q:GE/RCAのDVI*5についてはどうでしょうか?
G:DVIは,CD-ROMの1つの方向として非常に成功するかもしれません.リアルタイムビデオのプレゼンテーション用としてね.プレイ時間が60分間あることや,CD-ROMの通常の回転速度で利用できることなど,強みはたくさんあります。画質は,テレビほど良くないにしても,見るに耐えないというほどではありません.
 だから,オブジェクトオリエンテッドなグラフィックスなどに適していると思いますよ.しかし,DVIの最大の強みは、はっきりと定義されたシステムではないという点でしょう.CD-Iのようなプレーヤーである必要もないし、完全なシステムである必要もない.いろいろ使い方ができるわけです.その逆に,問題点としては,標準がないこと、好き勝手にできる代わりに,収拾がつかなくなる可能性があります.
 DVI,CD-I,CD-ROMは,将来的には共存するでしょう。すべてが同じ分野をねらう必要もないわけですから、例えば,DVIにはCD-Iのようにオーディオに関して選択の余地が少ない。必然的に,それぞれの分野も違ったものになるでしょう.
*5 GE/RCAのDVI (Digital Video Interactive):GE/RCAが今年3月のCDROMコンファレンス(Microsoft社主催)で発表したCD-ROMの動画システム.1枚のCD-ROMに音声付きのフルモーションビデオ(1時間分)を記録/再生 できる。試作段階では320×200ドットの解像度で再生可能になっており,製品段階では、最大768×512ドットで記録/再生を可能にする予定。カラー表示は ピクセル毎に1600万色が選択できる. CDを利用した動画再生システムには, この他にCDVがある.
ゲイリー・キルドールは共存すると思っていたが、DVI,CD-I,CD-ROM結局DVDに収斂した。彼でも予想はできなかった。35年前はアイデアだけがあって技術がないというか、こういうものが欲しいという要望があってもそれを実現できる製品を作る技術が無かった時代だった。
CD-ROMの検索システムはエキスパートシステムで
Q:以前,Microsoft Press社の「Programmer's at Work」という本の中で,エキスパートシステムは究極的なインターフェイスになるであろう,というようなことを言っておられたと思いますが,何かエキスパートシステムを取り入れたプロジェクトを進めているのですか?
G:潜在的にかなり大きな情報ソースを取り扱うとなると,エキスパートシステムは,データベースの検索にかなり有効です。エキスパートシステムを“人工知能”だと言う人もいるようですが,私はそれほどおおげさなものである必要はないと思います.エキスパートシステムも徐々にアルゴリズム風になっていくと思いますよ。
 長期的に見ると,エキスパートシステムは、ロケートナビゲータのような情報検索の手段と結合されていくような気がします。
 例えば,10個ぐらい質問をしたとします.ところが,それではヒットしなかった,あるいは,探しているものまでは,絞りきれなかった.こうした時に,それ以前にした質問の内容が,最終的にサーチを助けるための材料になると思うのです.エキスパートシステムみたいなもの-が,それらの情報を使えば,もっと的の絞られたサーチをするための手助けになるのではないでしょうか。
 さらに時間がたって、また同じエキスパートシステムに質問をするとします。その時,システムは、何があなたの必要とするもので,どういう検索法が適しているのか,すでに知っています.また最初からやり直す必要はないのです.そして,数万件の情報の中から,もっとも必要とされる情報を探すことができます.このようなエキスパートシステムを,今,作ろうとしています.まだR&Dの段階ですが,実際にやっているところです.もっと常套的なやり方でね.
 まだ発表はしていませんが,今あるものとしては,ちょっと前に述べたExpert Viewがその1つです。そのためにわれわれは,データを作成する前に,データベスの内部結合を分析しているところです.中の項目同士が,どのくらいの強さで関連しているのかということをね.それによって,後で情報を検索する場合に,質問した項目にどれがもっとも強く関連していくかとか,どれがもっとも関連が薄いかとかを一目で調べることができるようになります.先ほど言ったExpert Viewは,その種の最初のステップだと考えています。
まだ、インターネットが無かった時代。大容量のデータをクラウドに置くなんてできないから各自ローカルにデータを置くしかなかった。CD-ROMで配布するしかなかったろう。ハードディスクは高価だったからCD-ROMのデータをHDDに置くなんて贅沢なことはできず、CD-ROMドライブにディスクを入れ替えして使っていた。
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コンピュータで今後注目されるのは知識,コミュニケーションそしてグラフィックス
Q:最後に,今後10年間でどのような変化があるとお考えですか?どのような点に関心を持っていますか?
G:まず最初に,“知識”(knowledge)というものが,ライセンスされたり,それ自身売り物になってきています.ある種の“知識"は、オンラインのデータベースの方向に進んでいますが,別の“知識”は,まったく新しい,ちょうどCDIやDVIのようなメディアで提供されようとしています。明らかに,何か大きな変化が起ころうとしていますね.
 例えば,今までのパーソナルコンピュータのソフトウェアのことを考えると,データベースやスプレッドシートやワードプロセッサなどは非常に小さな一部にしかすぎなくなっていくでしょう。多くの人が“知識”を利用するようになると,誰もが簡単に使える“知識”というものが,かなり普及してくると思います。まず,それが第1点です.
 その次の大きな方向は,コミュニケーションです.コミュニケーションは,完全に普及しているとは言えません.重要なのは,音声とデータを結合したコミュニケーションです.しかし今後は,もっと変化に富んだサービスが供給されるようになるでしょう.個人的な情報の伝達から,各種サービスとしての情報まで,いろいろな情報がネットワークを通して,より一般的にアクセスされようとしています.今日の電話網は,もっと洗練されたものになるでしょう.
 第3は、グラフィックスです。われわれの業界では、ごく最近になってキャラクタベースのアプリケーションから,高解像度のピクセルベースのアプリケーションへと変化しつつあります.WIMPと呼ばれるインターフェイス,つまりWindow,Icon,Mouse,Pull down menuということですが,そういった方向に確実に進もうとしています。
 現在,われわれは,レーザープリンタやスキャナなど、かなりの機器を持っています.これらは,すべてグラフィックスの一部です.今後は,こうした機器の需要が飛躍的に増大していくでしょう.グラフィックスベースのシステムは,中心的なコンピュータ文化を形成すると思います.
 以上の3点が,特に注目しているところです。
今後10年というと1997年になるわけだが、Windows95とインターネットの普及がされたころだ。変化の大体のところはゲイリー・キルドールの考えの通りだった。
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