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失敗しないハードディスク選び’88その1(月刊ASCII 1988年6月号7) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

この号の特集は「失敗しないハードディスク選び’88」だった。後半には光ディスクもあったが、まずはHDDの部分をスクラップする。
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やっとこのころパソコン個人ユーザがハードディスクを買うようになった。当時の雰囲気をスクラップで味わう。
低価格,高速,小型化

 ハードディスクの最近の傾向は,大きく3つに分けられる.低価格化,高機能化,そして小型化である.
 まず,価格について見てみよう.PC-9801シリーズは、発表当初から5/10Mbytesのハードディスクが周辺装置として用意されていたが,1983年当時,5Mbytesのもので47万円であった.本体価格が29万円だったことを考えると,かなり高価な周辺装置だった.5Mbytesといえば,8インチフロッピーで5枚にしかならないが,MS-DOSは複数のフロッピーにまたがるファイル(マルチボリューム)がサポートされていないため、ファイルの最大容量はメディアの最大容量に左右されてしまう。大量のデータを処理する場合には,大きな容量を持つ,ハードディスクが必要な場合もあったのである.
 その1年後には、サードパーティから20Mbytesで同程度の価格のものが登場している.その後の20Mbytesの値段の動きを1年ごとに見てみると,35万円,29万円,16万円と値段が下がり,1987年末から,1988年にかけて10万円を切ったものが登場した。
 低価格化が進むにつれ,各社ともに価格が接近し、他社との差別化を図る必要が出てきた.そこで登場したのが,キャッシュ機能(後述)を取り入れたものや,シーク時間の速いドライブを使う「高機能化」である.また,デザインを重視したり,3.5インチドライブを使い,「小型一化」したものも現れた.
 ハードディスクドライブは、大きく分けて、「ドライブ」,「コントローラボード」,「電源」,そして「低体」の4つの要素から構成されている.ドライブやコントローラボードは,製造しているメーカーの数も限られ,数社しかない.そのため,各社から出ているハードディスクの中には,低体は違っても内部はほとんど同じという場合もある。価格もそれほど変わらない場合が多いのも,そのためである.
 ドライブやコントローラが同じものである場合には,デザイン面でしか差をつけられない.ハードディスクも最初の頃は,鉄板を曲げただけといった感じのものがほとんどだったが,最近では、曲線的なデザインや,横置きなどさまざまなデザインのものが登場している.最近では,20Mbytesのものは3.5インチのドライブのものが主流で,5インチは40Mbytes以上のものに使われているのがほとんどである.また,コントローラボードをドライブと一体化して,5インチフロッピードライブの代わりに本体に格納するタイプのものもある.このタイプは筐体,電源がいらなくなるため,かなり低価格のものとなっている.
 前記4つの要素の中で価格的に大きな比重を占めるのがドライブである.このドライブの価格は,シーク速度で決まってしまう.20Mbytesのものでは日電のものと同じ80msecが普通だが,高速タイプと呼ばれているタイプは30~40msecのものである.シーク速度が速いものは当然,ヘッド移動による待ち時間が短くなり,データを高速にアクセスできる.しかし,最近では低価格になったメモリを利用して、コントローラボード上にキャッシュを組み込んで高速化したものもある.これは、アクセスしたデータをメモリ上に置き,キャッシュ上にデータがある場合にはディスクアクセスを省略できるため,シーク速度の遅いドライブでも見かけ上のアクセス時間を短縮できる(図1).

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そして当然パソコンユーザは使用するにあたり、ハードディスクの基礎的知識も知らねばならなかった。
ハードディスクとは

 ハードディスクとは,その名称のとおり,堅い(HARD)円盤上に記録を行うものである。基本的な原理は,フロッピーディスクと同じで,磁化の向きにより1,0を記録する。つまり同心円状分割し(トラック),それぞれを円周方向にいくつかに分割し(セクタ),これを記憶領域の基本単位とする(図1).しかも,記録面のある円盤は1枚だけでなく,数枚で一組になっており,ヘッドも複数あるのが普通である.複数枚を同時に扱えるため、記憶容量も大きくすることができる.フロッピーディスクは、メディアを交換して使うために,機構上,その精度があまり高くなく,しかもコストを考慮し柔らかいプラスティックで作られている.そのため記録密度が大きくできない,回転速度も遅く転送速度も低いという欠点を持っている.これに対して,ハードディスクは,記録機構が密閉されており,記録面の材質も強固な金属でできているため,精度を高くし、回転速度も大きくできるので,記録密度が高く,データ転送速度も速い。

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 さらに,フロッピーディスクのヘッド|はメディアの記録面に接触しているのに対し,ハードディスクのヘッドは,記録面とは接触しないため,ヘッド移動も高速で行えるのである.
 ハードディスクは、高速で大容量という利点を持っている反面,震動やホコリに弱いという欠点を持っている.しかし,最近のものは,各種の安全機構を備えているため、昔のように簡単に壊れてしまうことはない.しかし,動作中に移動するなどといったことは禁物である.
 ハードディスクとパーソナルコンピュータのインターフェイスは、通常SCSI(Small Computer System Interface)と呼ばれているものを使う.このインターフェイスは、ハードディスクなどのデータを高速で転送できる周辺装置を接続するためのもので,ハードディスクの他にCD-ROMドライブや光学式ディスクドライブなどにも採用されている.
 各社のマシンとも標準あるいはオプシションでインターフェイスが提供されており,ハードディスクを接続する場合には,これが必須となる.各社ともに,インターフェイスにSCSIを採用しているが,実際にはマシンごとに細かな違いがあり,電気的には接続できても,制御コマンドが違っているなどの理由で,一般的には他機種用のハードディスクを接続することはできない。

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ハードディスクが振動に弱いと脅されていたのでなんかの拍子にハードディスクにペンなどの文房具を落としただけで真っ青になり、ディスクのエラーチェックをしたものだ。
 スカジーインターフェースが懐かしい、パソコンの筐体を開け内部の拡張スロットにインターフェースボードを差し込み太いケーブルで繋げたものだ。
ハードディスクとソフトウェア

 通常のパーソナルコンピュータには、基本ソフトとよばれるものがあり,これらがハードディスクの制御を行う.現在では、MS-DOSが一般的だが,DISK BASICからでもハードディスクを使うことができる。
 通常,ハードディスクは、フロッピードライブと同じようにドライブ番号が割り当てられ,フロッピーの場合と同じコマンドが利用できるようになる.また,ハードディスクにシステムプログラムを転送しておけば,ハードディスクからシステムを起動することも可能である.つまり,見かけ上,フロッピーと同様の使い方ができるわけである.
 ハードディスクは容量が大きいため,1つの物理的なドライブを2つにわけて使うこともできる(パーティション).これを使うと1つのドライブの中に複数のシステムプログラムを登録しておき,切り替えて使うといったことも可能になる.
 ハードディスクの記憶領域の管理は,フロッピーの場合に使われたトラック,セクタ,サーフェース(表,裏)に加えて,どの円盤かを指定して行う。また,各円盤の中心から同じ距離にあるトラックすべてをシリンダと呼ぶことがある.同一シリンダ内にあるトラックは、ヘッドを移動せずにアクセスできるため、アクセス時間を短縮できる.このため,ファイル配置はシリンダを考慮して行われる(図2).このセクタ,トラックを指定してユーザーがデータをアクセスすることは通常必要ないが,ハードディスクのメンテナンスを行うなど直接ハードディスクを操作する場合には,これらをつかってデータをアクセスすることになる.

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ハードディスクを使う前に

 ハードディスクは、使う前にフォーマニットしなければならない。ここでは,PC-9801シリーズのMS-DOSの場合を中心に,フォーマットの方法を解説する.
 フォーマットの基本的な方法は、MS-DOSでは1つしかないが,使用機種,バージョンやドライブの容量によって若干違ってくる。
 まず,MS-DOSのバージョン2.11では、20Mbytesまでのハードディスクしか使えない.このため,40Mbytesのドライブを使うためにはバージョン3.1を用意する必要がある。
 MS-DOSバージョン3.1を使う場合,40Mbytesのドライブは、拡張フォーマットと呼ばれるフォーマットを使用する(20Mbytesまでのハードディスクに使うフォーマットを標準フォーマットという).このフォーマットは,MS-DOSのバージョン2.11ではアクセスすることができないので,複数のバージョンを利用する場合には注意が必要である.
 フォーマットプログラムは,MS-DOSのコマンド待ち状態から,
FORMAT /H
とコマンドを打ち込んで起動する.
そうだった。MS-DOS 2.11 では20Mbytesまでしか使えなかった。容量の壁はこの後何回もあり、何年も(10年以上だったはず。スクラップしていくと明らかになるだろう)壁にぶち当たった。
(中略)
 最初に説明したように,ヘッドを浮かせて高速動作するハードディスクは,起動中に震動を与えることは禁物である.ドライブをちょっとでも移動する場合にはかならず電源オフの状態にすることである.この他,ホコリや熱といった問題があるが,パソコンが使用できる環境であれば特に問題はないと思う.
 さて、PC-9801シリーズのMS-DOSのユーザーズ・マニュアルには,「電源を切断する前には,必ずSTOPキーを押して一ください」と記載してある.これはどういうことだろうか?ハードディスクのヘッドは、ディスクが回転することにより起こる空気の流れを利用して,ちょうどグライダーのように浮いているのである.電源が切断され,回転が止まるとへッドがディスクに当り,そこに傷がついてしまうこともある.そこで,ディスク上には,滑走路に当る,シッピングゾーンという「着陸」した状態のヘッドを置く,データの記録を行わない場所が用意されている.MS-DOSでは,STOPキー-が押されると,ヘッドをこのシッピングゾーンの上まで持っていくようになっている。
 最近のディスクは、電源が切断されるとヘッドを持ち上げて、ディスク上に落ちないようにする機構や,シッピングゾーンまで自動的にヘッドを移動する機構が付いている.したがってSTOPキーを押さなかったからといって、ディスクが壊れてしまう可能性は低い.
 ただしそれは,あくまでもMS-DOSのコマンド待ち(A>といったプロンプトが出ている状態)で電源を切る場合であって、プログラム実行中,特にディスクのアクセスランプが付いている場合には、電源切断を行ってはならないことに注意してほしい.書き込んでいる最中に電源が切れてしまった場合には,そのデータが保存されるかどうかが保証されないばかりでなく、他のデータも壊れてしまう可能性がある.電源切断は,かならずプログラムの実行を終了してからにすべきである.MS-DOSに慣れないうちは、とにかく何回かSTOPキーを押して,アクセスランプが消えているのを確認してから電源を切るようにするといいだろう.
シッピングゾーン懐かしい用語だ。ハードディスクはすぐ壊れるものだと恐る恐る使っていたところがあり、こういった儀式的なことは欠かさず行っていた。



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