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特集CD MEDIA 第2回 その2(月刊ASCII 1988年4月号8) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

コラム記事「CDIとそのソフトウェア」をスクラップする。
CDIとそのソフトウェア
データフロー・インターナショナル(株)■James A. Parker
 CDIは,コンシューマ向けエレクトロニクス市場では,たぶん,これまでにないぐらい最高にエキサイティングな技術といえよう.そして同時に,最もむずかしく,奥の深い技術のひとつでもある.それは、CDIが情報の扱いを大きく変える可能性を持っているからだ。ちょうど印刷機の登場により文字の扱いがすっかり変わったように,CDIもまさに時代を画する技術なのである.
 1450年のグーテンベルクによる印刷機の発明は,2つの点で画期的なものであった.第1は,応用技術としての革新性である.当時すでにあった2つの技術――木版活字組みと金属平板印刷方式――をひとつにまとめたものだが,その基本的な考え方は現在まで受け継がれ,今でも印刷機の基本となっている.しかし,もうひとつの点である社会的な影響の方が,はるかに大きくまた根本的であった。グーテンベルク以前は,文字とは少数の人々のものであったが,印刷機が発明されたために安価なメディアが登場し,今日のさまざまな便益を我々が享受できるのである.
 CDIも,技術的にはそう革命的なものではない。この技術の大部分は,既存の技術の上に成り立っている.ディスクドライブは,音楽用コンパクト・ディスクプレーヤーがベースになっており,CPUは,モトローラの68000系である.既存の技術とハードウェアをできる限り利用することで,コスト面では大きな効果を上げることができ,また音楽用コンパクトディスクも再生できるようにしたため,ユーザー層を広く確保できる.さらにインタラクティビティ(対話性)といった特性もあるが,これについてもCDIは,特にユニークとはいえない.そうした機能を持つメディアは,ほかにもいくつもあるからだ。
 同じ機能を提供していてもCDIが他のメディアと異なる点は,既存技術の利用による低価格の実現と,国際的な互換性を持ち、世界市場を対象としていることである。1989年のはじめに登場するCDIプレーヤーは,価格が1500ドル前後と予想されているが、最終的には音楽用コンパクト・ディスクプレーヤーより100~200ドル高い価格帯になるだろうといわれている.そして,CDIプレーヤーとテレビさえあれば,ソフトを楽しむことができるのである.その上,CDIプレーヤーは,音楽用コンパクト・ディスクプレーヤーとしても使えるため,AVシステム購入時に考慮する人もあるだろう.
 他のインタラクティビティを持つメディアでは,低価格化のメリットや従来製品とのコンパチビリティを持つものは少ない。例えばDVIでは,プレーヤーのほかにコンピュータや専用ディスプレイなどが必要であり,CD-ROMは,ドライブの価格は安いものの,やはりコンピュータシステムが必要となる.
 過去において,手書きの写本が高価だったために,文字の一般への普及が遅れた。同様にインタラクティビティにかかる高いコスト(コンピュータの処理機能や信頼性の高い大容量メディアの価格など)が,そのアプリケーションの普及を妨げてきたのである現在では,そういった問題は解決されつつあり,インタラクティビティのあるアプリケーションの普及は近いといえる.
CDIソフトをつくるには

 ゲームプログラムを1本ヒットさせて,数百万ドルを稼ぐといった夢を、一度や二度抱いたことのある人は多いだろう。実際に夢が実現した例もある.この点は,CDIではどうだろうか。
 CDIのソフト制作コストは、その規模や内容の複雑さにもよるがだいたい1タイトルにつき25万~75万ドルかかるとされている.ソフト開発に必要なハードのコストを計算しなく。てもこれだけかかるのである.
 なぜ,これほどコストが高いのだろうか?必要となるプログラミングについて,平均的なコンピュータゲームとCDIソフトを比較すると,そのスケールの差は,ちょうど模型の飛行機と本物の最新ジェット戦闘機ほど違う.まず,扱うデータの量に格段の差がある.CDIディスクの容量は.2Mbytesのフロッピー約550枚分に相当するのである.
 もうひとつ重要なものに,著作権の問題がある.コンピュータのソフトウェアを無断でコピーすると著作権に触れるように,音楽,写真などの著作物を無断でCDIソフトに利用することはできない.しかし,CDIの容量は膨大で、今までのゲームのようにすべてを自分で作るには限界がある.また,これらを下請け会社に依頼しても,著作権所有者から権利を買っても膨大な金額になってしまう.つまり,個人や小さな会社では、独自にすべてを行うといったことは不可能に近い.
 CDIは未開拓の領域である.CDIの周辺では、初期の試みとしてこれまで数々の動きがあったが,現在制作中のソフトは、どれも皆,この意欲をそそる新しい分野の草分け的な存在である.CDIを,あるいはインタラクティビティをどう捉えるか,また,どのような可能性があるかについては,意見が山ほどあるが,商品といえるソフトはまだ実際に作られていない、確かなことは,CDIに必要なインタラクティビティを実現するためには,さまざまな分野の人間の知識を凝集することが必要だということである.CDIソフトの作成はあるひとつの分野の知識でのみ処理できるものではないのである.
 例えば,コンピュータのプログラマは,一般に,映画などの映像分野の経験がなく,フイルム制作者がプログラミングに携わったこともおそらくないだろう.インタラクティビティとなると,まず間違いなく,両者とも未経験であろうと思われる.ヒット商品を作り出すには、幅広い分野からの参加を得てチームワークであたることが必要である.このような混成チームの制作作業では,個々の専門的分野からの要求が出され,その調整にはかなり苦労することだろう回を重ねるうちに,この問題は克服されるだろうが,ヒット商品を完成するまでに3~4回の試行が必要となると,制作コストの点で持ちこたえられるかどうか,多少疑問である.
 では,個人や小さな企業がCDIソフトを制作することは全く不可能なのだろうか?いや、まだ方法はいくつかある.フィリップスは、ヨーロッパ,アメリカそして日本という3大市場で,CDI産業助成と振興のための組織作りをしてきた。日本では,昨年,トッパン印刷と共同で電子メディアサービス社を設立し,CDIソフト作成のためのオーサリングシステム作成に当ることになった.また,つい最近では、ポリグラム,ポニー,キヤノン,ヤマハ各社共同でJIM(ジャパン・インタラクティブ・メディア)が設立されている.これらは、CDIの企画,作成,販売をサポートするための会社で,こうした会社と提携することで、個人や小企業でもアイディアを実現できるわけだ。
CDIソフトができるまで

 CDIソフトはインタラクティビティを考慮した新しいものでなくてはならない、CDIソフトの制作について記述した“CD-I: A Designer's Overview"(KLUWER刊,邦訳予定あり)によると以下の質問にきちんとした回答ができなくてはならないとしている.
 (1) なぜ,そのアイディアを使うのか,それはCDI市場での可能性に最もふさわしいものなのか。
 (2) すでに市場に出回っている既存メディアのものに比べてどう位置付けられるか,既存のものの複製か,補足的なものか,あるいは取って代わるものなのか.
 (3) どのような人々を対象とするものなのか.特にまだプレーヤーを持っていない人に対してもアピールできるものなのか.のユーザーはインタラクティビティをどのように利用するのか、何度見ても興味の尽きないものか,ユーザーが使いこなせなかったり,反応できない場合にはどうなるのか.
 これらにきちんと回答できたら,CDIソフトの制作に入ることになる.その段階は、同書によると8段階に分かれている.
 (1) タイトルの扱いや予算,スケジュールなどの概要を決めるアイディアマップの作成.
 (2) プロトタイプのストーリーボードとフローチャートの作成.
 (3) 諸問題の解決と設計上の細部の詰め.
 (4) 部分的なストーリーボードの模擬試験.
 (5) 映像撮影台本の準備と必要な画像のリストアップ,予算,制作スケジュールの詰め.
 (6) 映像データの収集,処理,統合.
 (7) 音声データの構成,編集,加工,そして妥当な音質レベルを選択する.
 (8) オーサリング,すなわち,すべての構成要素を統合化する。
 以上のような手順によってCDIソフトができあがる.あとは,実際にプレスするだけである.

 ASCIIの読者なら、御存知のようにAppleのコンピュータのすばらしい点は,ユーザーの知りたい情報が全て公開されていた点にある.ハードウェアを自分で作るかどうかは別として,その内部に入っていき,ちょっと遊んでみることが可能だったのである.
 では、CDIではどうだろうか?Appleのユーザーは,多くの場合コンピュータホビイストで、そういったことに夢中になるが,CDIは広く一般の消費者を対象としているのである.CDIシステム自体は,16bitCPUでIMbytesのRAMを持つ強力なコンピュータシステムであるが,市場に対しその面をアピールはしない。あえて,コンピュータらしさを避けているのである。
プレーヤーを購入し,テレビにつなぎ,ディスクを入れるだけでいい、広い意味で,どんな人にも親しみやすい形でインタラクティビティを提供するのがCDIなのである.

ASCII1988(04)f08CDIソフト_画面_W709.jpg
結果CDIは市場に広まらなかったわけだが、一体どうしてなのか、何が原因なのかはこれを読んでもわからない。とりあえず分かっていることはCD-ROMとしてパソコン、ゲーム機に搭載されてそれが使いやすく広まったため、独立したCDIというものが一般に支持されなかったということだろう。パソコンやゲーム機でもできることにわざわざ高い金をだしてそれだけのためにCDIプレイヤーを買うユーザがいなかったということだろう。


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