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ワープロ,その他ハード,他(月刊ASCII 1989年10月号3) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII EXPRESSの記事をスクラップする。

ソニーがラップトップ型の日本語ワープロを発売
ASCII1989(10)b09ソニーがラップトップ型のワープロ_W520.jpg
40文字×10行表示のPJ-300の価格は12万8000円。

日立がラップトップ型の日本語ワープロなどを発売
ASCII1989(10)b09日立ラップトップワープロ_W520.jpg
ワードパルLF500の価格は23万8000円。

富士ゼロックスが12インチCRTを搭載した日本語ワープロを発売
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815II JWPの価格は19万8000円。

三洋電機,手のひらサイズのワープロを発売
ASCII1989(10)b10三洋電機手のひらサイズワープロ_W503jpg.jpg
電子ノートES-20の価格は5万5000円。電子手帳ではなくワープロということだ。

イーティーシー,PC AT/XT用内蔵HDDを発売
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CARD68は68Mbytesで18万8000円。

エプソンがPC-9800/286用HDDなどを発売
ASCII1989(10)b11エプソンHDD_W520.jpg
HDD-40Fは40Mbytesで16万8000円。

ニューテックがPC-9800/286用SCSI対応HDDを発売
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NT100-55は2100Mbytesで5万8000円。

キャラベルデータがSCSI対応のHDDなどを発売
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CA-6016SCは600Mbytesで94万8000円。

システムサコムがSCSI対応HDDを発売
ASCII1989(10)b11システムサコムHDD_W520.jpg
MB-45Hは45Mbytesで18万円。

日電が光磁気ディスクドライブなどを発売
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PC-OD101が45万円。

アイテック,プリンタ切り替え器を発売
ASCII1989(10)b06アイテックプリンタ切替器_W511.jpg

関西電機,3回路プリンタ切り替え器を発売
ASCII1989(10)b08関西電機プリンタ切替器_W503.jpg
34年前パソコンの台数は増えてきたが、プリンタはそうでもないのでプリンタ切替器というかプリンタから見ればパソコン切替機が必要だった。

ジャストシステム,メモリボード用増設メモリを発売
ASCII1989(10)b08ジャストシステムメモリボード_W496.jpg
2M増設で6万円もかかった。

インテルジャパン,32bitEISAチップセットを発表
ASCII1989(10)b12インテル32bitEISAチップセット_W502.jpg
反MCA陣営に加担していたのか?

日立製作所,12インチ白黒液晶モジュールを発売
ASCII1989(10)b06日立12インチ白黒液晶_W501.jpg
サンプル価格で16万円。

データイースト,携帯電話用インターフェイスを発売
ASCII1989(10)b12データイースト携帯電話用インターフェイス_W500.jpg
34年前既に携帯電話を使ってパソコン通信をしようとすればできた。

カシオ,電子手帳の最上位機種を発売
ASCII1989(10)b16カシオ電子手帳_W499.jpg
DK-5000は2万8000円。

ソニー,音声記録も可能な電子スチルカメラを発売
ASCII1989(10)b16ソニー電子スチルカメラ_W504.jpg
MVC-A10が8万6800円。34年前はデジカメではなく電子スチルカメラと言っていた。

国際コンピュータ囲碁大会第2回日本代表選抜大会が開催
ASCII1989(10)b05国際コンピュータ囲碁大会_W520.jpg

米国通商部,対ソビエト輸出規制を緩和
ASCII1989(10)b14米国通商部対ソビエト輸出規制を緩和_W503.jpg

文部省,小・中・高にパソコンを本格導入
ASCII1989(10)b16文部省小中高にパソコン本格導入_W509.jpg

ボイジャー2号,トリトンに氷の火山を発見
ASCII1989(10)b12ボイジャートリトンに氷火山_W502.jpg
この発見はワクワクした。探査機を送ることは意義あることだ。人間の想像力を超える発見がある。

電波望遠鏡で創世記のガス状星雲発見
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太陽系とかの生成に関する研究が電波望遠鏡により発展した。
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ゲーリー・A・キルドール,業界動向,パソコン他(月刊ASCII 1989年10月号2) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII EXPRESSの記事をスクラップする。
Digtal Research会長のゲーリー・A・キルドール氏のインタビュー。氏はDR DOSのプロモーションに来日した。
ASCII1989(10)b02ゲーリー・A・キルドール_W520.jpg
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CP/Mを作ったDigital Reaerchのゲーリー・A・キルドール氏のインタビュー記事をスクラップする。
 8bitパーソナルコンピュータの標準OSの位置を確立していたCP/Mの生みの親,ゲーリー・A・キルドール氏が来日した。今回の来日は、MS-DOSと互換性を持つオペレーティングシステム「DR DOS」の日本市場投入に伴うものだ(P.215参照).
――DR DOSの開発の狙いは?
キルドール:我が社は,1984年にマルチユーザー・マルチタスクの互換OS「Concurrent DOS」を発表していますが,ユーザーの間にはシングルユーザー・シングルタスクの互換DOSを望む声が根強くありました.と同時に、我々はROM化可能なOSへの要求も感じとっていたのです.デスクトップマシンはもちろん,ハンドヘルドやラップトップマシンなどの需要が高まるだろうと考え,ROM化が可能なMS-DOS互換OS「DR DOS」を開発しました。Concurrent DOSを開発した経験もありましたので,互換性という点では自信があります.DR DOS上でMS-Windowsはすでに動作していますし,少数のアプリケーションとの相性の不具合いも来年の初めに出荷されるバージョンでは改善されます。
 マイクロソフトがOSをROM化するという話は以前からありますが,実物を見たという話は聞きません.MS-DOSは,Ver.1.xから2.x,3.xへとバージョンアップするにつれて,サイズがどんどん大きくなっています。このままROM化するのは難しいのではないでしょうか。その点,DR DOSは初めからROM化を意識した作りになっていますから,非常に効率が良いのです。

――DR DOSの市場は?
キルドール:ROM化が可能ということで,今までIB MPCとあまり互換性のなかった分野,たとえばFAなどの分野へも進出できるだろうと考えています。また,プロセッサとRAM,ROM,I/Oの組み合わせだけで心臓部はできあがりますから,民生品の分野にまでかなり入っていけるのではないでしょうか。もちろん,これにFDDやHDDを組み合わせればデスクトップコンピュータを作ることもできるわけです.
 日本では,今までソフトウェアにDOSがバンドルされて売られてきましたが,マイクロソフトはこの方針を変更しました。ソフトウェアメーカーと話をして,PC-9800シリーズ用ソフトウェアにDR DOSをバンドルするといったビジネスもしていきたいですね.

――DR DOSを使うメリットは?
キルドール:DR DOSを使うメリットは,まず価格が安いという点。メーカーにとっては,OSもHDDやRAMといったコンポーネントの一部にすぎません。コンピュータの価格が1000ドルを割るようになった現在,OSのコストもばかにはなりませんから.
 MS-DOSは,累計3000万のユーザーがいるといわれています.DR DOSは、この整備された開発環境を有効的に使うことができるのです.MS-DOSマシン上でPOSやFA関係のマシンの開発ができるのはたいへん大きなメリットでしょう.
 ユーザーの立場に立ってみれば,同じことをやるにしても2つの選択肢があるのは良いことでしょう.スタンダードが固定化して競争がなくなってしまった業界は,硬直化し進歩が止まってしまいます。

――今後のOSの行方は?
キルドール:MS-DOSはこれからも生き残るでしょう.MS-DOSユーザーが,すべてOS/2に移行していくとは思えません.ワードプロセッサや表計算などのアプリケーションソフトを使うユーザーはMS-DOSの世界に止まるでしょう。こういったユーザーにOS/2は難しすぎます.
 問題は,80386などの強力なマシンのパワーをフルに活用したいと思っているユーザーですが,MS-DOSは力不足です。マルチユーザー・マルチタスクなどの要求にも応えられません。こういったユーザーはMS-DOSの世界から飛び出していくでしょうが,すべてがOS/2に移行するとも思えません。1つのOSですべての分野をカバーすることは不可能です。
 たとえば,科学技術計算などの分野にはUNIXが適していますが,一般のOA処理には不向きです.OS/2は,MS-DOSの延長線として汎用のOAシステムに使われていくでしょうが,リアルタイム処理に問題があります。今後,ビデオやサウンドを取り込んだマルチメディアシステムが数多く出てくるでしょうが,こういうシステムにはリアルタイム処理が可能な別のOSが使われていくことになるでしょう.
 1つのOSの独壇場となる時代は終わりました。そのマーケットに合ったOSが選ばれる時代になったのです。重要なのは、それら複数のOSがネットワーク上でお互いにコミュニケートできるようにしなければならないということです.

Gary A.Kildall
ワシントン州シアトル生まれ。1972年,ワシントン大学でコンピュータサイエンスのPh.Dを取得.1976年にDigital Research社を設立し,CP/Mを発表.その他,PL/MやPL/I,Logoなどのコンピュータ言語のデザインにも従事した。
(P.215参照).の記事が下。
デジタル・リサーチ・ジャパンがMS-DOS互換OSを発表
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DR DOSは結局MS-DOS互換として広まらなかった。特定のソフトウエアで独占された市場に食い込むことは難しいということだ。

「米国ハイテク産業の動向」をスクラップする。
ASCII1989(10)b03米国ハイテク産業の動向_W520.jpg
Apple社,DVIと競合
 8月にボストンで開かれたMacWorldEXPO(P.217~参照)では,Apple社の一連の技術動向とIntel社のDVIとの関係が一部の間で注目された.
 DVIは本誌でもたびたび報告している通り,ライブビデオデータのコンプレス(圧縮)/デコンプレス(展開)処理を中核としたマルチメディア技術である.ビデオデータを記憶媒体に格納したり,通信を行なう場合には,一般にはデータ量が多すぎてリアルタイムで処理できないことが多い.これは,現時点ではデータを圧縮することによってはじめて可能になる.今回のMacWorldEXPOでは,Apple社がこのDVIに挑戦する形で極めて興味深いデモがなされた.
 Apple社のAdvanced Technology Group(ATG)では,このデモのためにMacintoshIIの約2倍の大きさの銀色に光るグラフィックスコントロールボックスを開発した.この内部には,グラフィックス処理のためのカスタムチップが詰まっているという.DVIが発表された時のプロトタイプボックスを連想させるものだが,ATGのSteve Perlmanは「グラフィックス処理のためにハードウェアの高速化を追求したというよりも,グラフィックスの新しいハンドリング方法を開発した」と説明する.すなわち,応用段階になっても高価なハードウェアを使用しなくてもすむというのだ。
 Perlmanはこのシルバーボックスを用いて,“Pencil Test"と題するフルアニメーションのデモを披露した.MacintoshII上で24bitカラーのアニメーションをリアルタイムで表示するというものだが、新たに開発した圧縮アルゴリズムを用いることで1.6Gbytesあったオリジナルデータを3Mbytesにまで圧縮できたという.
 さらにApple社として,こうしたビデオイメージのコンプレス/デコンプレス技術に特に注目している点,またそのための方法論としてシンメトリーな構造を持つアルゴリズムに興味を持っている点を明らかにした(すなわち,コンプレスとデコンプレスが同じシステムで可能であるということだ。DVIのそれは非シンメトリ構造である)。
 現段階のPerlmanのデモは,アニメーションであってライブビデオイメージではない(圧縮効率が両者間では格段に異なる)。また,リアルタイム圧縮はこのシルバーボックスを用いても不可能である.したがって,今の時点でApple社が開発した技術が直接DVIと競合すると断定することはできないが,Apple社がDVIと同じ方向で(しかも逆の方法論で)動き出した点は注目に値する.将来的には,Apple社の技術がDVIと競合関係になることは十分に予想される.

486レース始まる
 Intel社がi486をアナウンスしてから数カ月が経過し,米国では486レースがますます激化しつつある。最初に製品レベルでのアナウンスを行なったのは,他でもないIBM社.PS/2モデル70対応のアップグレードキットである.このキットは,CPUとROMを載せた“PowerPlatform 486/25"をマザーボード上のCPUと交換するもので、価格は約4000ドルIBM社によると,普通のビジネスアプリケーションで約1.8倍の速度向上が図れるという(数値計算主体だと約3倍だそうだ)。
 IBM社のアナウンスの直後,AST Research社が同社の386マシンから486マシンへの同様のアップグレードを3000ドルで行なうと発表した。同社の"Fastboard 486/25"は64Kbytesの高速RAMキャッシュ付きだ。また,ほぼ同時にCompaq社も今年末までに486搭載製品を出荷すると発表した。もしかしたら,Compaq社の出荷のほうがIBM社の本格的出荷よりも早いかもしれないとの観測も流れている.もちろん,台湾を含めた多くのPCクローン企業も,486搭載マシンを来年初頭までには出荷開始すると見られている.
 こうして,ポスト386マシンをめぐる486レースの幕がいよいよ切って落とされたわけだが,486の潜在ユーザーと見られる現時点での386ユーザーは,PCユーザー全体の10~15%程度といわれている。この市場でどれだけのユーザーが486へ移行するか疑問視するアナリストも多い。
 その最も大きな理由が,486の386に対する機能面での優位性への疑問だ。Intel社が386の発表を行なった時には,8086/80286などの従来CPUに対して機能的に上位に位置することが明白であった。この点が,現在の一種の386信仰を生じさせているわけで,386UNIXの登場とともに386への移行はむしろ必然的となった感がある.ところが,486は386/387に対して新しく追加された6個の新規命令を除いては目新しい機能は何もない。ただ計算速度の向上がなされているだけだというのだ。しかもその速度面についても,ベンチマークテストを行なったほとんどのレポートでは,486は33MHzの386に比べて20~40%の高速性しか得られないと結論づけている。486は内部に8Kbytesのデータ/命令キャッシュを搭載しているので,ごく小さなループなどを多く含むプログラムでは確かに高速化はされるのだが,市場に出回っているプログラムの多くはこうした486アーキテクチャにまだ対応していないのが現実である.
 今年後半から,Intel社は486チップの本格的販売を開始する。それに伴って,上に述べたような486搭載のマシンも数多く出回るようになるだろう.ただ,速度向上が唯一のメリットであるとすれば,来年一杯は(チップの価格が十分に低下するまでは)ユーザーへの浸透は非常にゆっくりとしたものになると見られる.

(ザイロンコーポレーション代表 脇山 弘敏)
今普通に使っている動画データ圧縮技術が登場しだしたと言ってもいいのだろうか。ただ、一般ユーザに普及するまでには年数がかかった。私が最初に使ったのはMotion JPEGだった。静止画データを圧縮しただけだった。その後カノープスのMPEG-2キャプチャボードを使い、地デジ時代にはMPEG-4と動画データ保存は進歩していった。データもMbytesからGbytesへと大きくなっている。それを軽く操作できるようになったCPUとHDDの進歩には年数が必要だった。
 486CPUの予測。結果はWindows 3.1の登場から486CPUが伸びていった。Windows 95には386ではきつかった。最低486だった。「ベンチマークテストを行なったほとんどのレポートでは,486は33MHzの386に比べて20~40%の高速性しか得られないと結論づけている」なんか怪しいが、486DX4とかの内部クロック3倍速タイプが出てから使い物になったのだから、妥当なテスト結果だったのかもしれない。

メーカーなど10社がOS/2 API共通規約を策定
ASCII1989(10)b05OS2共通規約_W520.jpg
OS/2は一般ユーザには広まらずダメだったOSだが、日電以外のメーカーはPC-9801独占を切り崩すOSだと期待していた。

流通メーカーなど5社がWindowsコンソシアムを設立
ASCII1989(10)b05Windowsコンソシアム_W520.jpg
「マイクロソフトでは,WindowsにOS/2への橋渡し役を期待しているが」本当かいなと思う。一体いつからマイクロソフトはOS/2を見限りWindowsをもってOS/2を駆逐することを決意したのか。

IBMとCompaq,クロスライセンスを締結
ASCII1989(10)b14IBMとCompaqクロスライセンス_W501.jpg
MCAとEISAバスとの争いに関係してくるニュースだ。
過去のスクラップ記事 MCA vs. EISA(月刊ASCII 1989年5月号6)
の年表では
(4) 1987年
  ISA Busの限界を見越してIBMが投入したのが「MicroChannel」(MCAバス)
  規格がオープンではなく、利用にはIBMにロイヤリティーを支払う必要があるという点が反感を買い、結局ほとんど普及することはなかった。
(5) 1988年
  ISAをベースに拡張した「EISA Bus」
  性能そのものはISAの2倍と、あまり性能改善には役立っていなかった
(6) 1992年
  「VESA Local Bus」(VL Bus)
  「Intel 486」のバスをそのまま引っ張り出して接続する
だから、このクロスライセンス契約は大して影響を与えなかったのだろう。

SunとLotus,協同開発の提携を発表
ASCII1989(10)b14SunとLotus協同開発提携_W504.jpg
ワークステーションを使って1-2-3というのは、いまいちそうかと思えない。MS-DOSのレベルと適合したソフトウエアだと思う。

ソニーがNEWSの新機種などを発売
ASCII1989(10)b07ソニーNEWS新機種_W520.jpg
CPUが68030(25MHz)のNWS-1860が395万円。さすがワークステーションはパソコンより一桁高い。

日立がUNIXワークステーションを発売
ASCII1989(10)b07日立UNIXワークステーション_W520.jpg
CPUが68030(25MHz)の2050/32Eが260万円。

日立製作所,ラップトップワークステーションを発売
ASCII1989(10)b04日立ラップトップワークステーション_W503.jpg
CPUが80286(10MHz)の2020モデルLが69万円。CPUも価格もパソコン並みだ。

沖電気工業,32bitオフィスプロセッサを発売
ASCII1989(10)b04沖32bitオフィスプロセッサ_W511.jpg
オフィスプロセッサとは何かよく分からない。CPUの説明もない。

シャープがAXをベースにしたCAD/CAEシステムを発売
ASCII1989(10)b07シャープAXをベースにした_W520.jpg
AX386ベースのSYSTEM1が165万円。CPUは大したことないがソフトが高価なのだろう。

IIcxとSE/30の投入で,現行Macintoshを値下げ
ASCII1989(10)b10IIcxとSE30Mac値下げ_W500.jpg
売り上げ目標は約700億円

米Zenith,2インチFDD搭載ラップトップを発売
ASCII1989(10)b14Zenith2インチFDDラップトップ_W501.jpg

アンテナハウス,J-3100用データ変換ソフトを発売
ASCII1989(10)b06アンテナハウスJ-3100用データ変換ソフト_W495.jpg
よくあるワープロ文書ディスクを読み込み、MS-DOSファイルに変換するソフト。J-3100用なのはMS-DOSといっても機種ごとに違ったのだろう。昔から思っていたがMS-DOSがこんなに機種ごとに違うソフトを用意しなければならないことが面白くなかった。OSを名乗るな。プログラムローダーだろうと思っていた。

立石ソフトウェア,SunWS用の日本語ワープロを発売
ASCII1989(10)b12立石ソフトウエアSunWS用ワープロ_W503.jpg
UNIXでワープロを使うのか。マシンを2台置けばいいのではないかと思ってしまう。安く収めたければワープロ専用機でいいのではないか。UNIXマシンがもったいない。

米Ashton-Tate,dBASE IV Ver.1.1を発表
ASCII1989(10)b14Ashton-TatedBASEIV_W511.jpg
出荷時期価格未定ではだめではないか。
フィリップ・カーン、CD-ROM、その他(月刊ASCII 1989年6月号4)
でフィリップ・カーンが言っていた。
> 事前発表を行うことで,自分達を窮地に追い込んでいる会社が数多くあります。事前発表された通りのスケジュールで製品を出荷できなかった場合には,その会社は信用を失ってしまい,マーケットシェアも失ってしまうことでしょう.ご存じのように,Lotus社やAshton-Tate社はこれで苦境に立たされています.
上の製品のことではないか。

ソフトウェア・」インターナショナルがNorton UtilitiesをPC-9800用に移植
ASCII1989(10)b15ソフトウエアインターナショナルNortonUtilities_W520.jpg
ノートンはWindowsのときに使ったが、いい思い出はない。どんなトラブルだったかは思い出せない。



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パソコン広告(月刊ASCII 1989年10月号1) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

もう一度読み返し、スクラップする。

ASCII1989(10)表裏_W520.jpg
裏表紙はFM TOWNSだった。前号と同じだった。

表紙見返しの広告はこの年もNECが独占した。
ASCII1989(10)見開_W520.jpg
カラー液晶のPC-9801LX5Cだった。価格は748,000円だった。

ASCII1989(10)a01NECラップトップ_W520.jpg
ラップトップだけの広告だった。前号から2機種増え7機種となった。

ASCII1989(10)a02パーソナルシステム55_W520.jpg
右頁がIBMのパーソナルシステム/55とOS/2の広告。前号の使いまわし。

ASCII1989(10)a03X68000_W520.jpg
X68000は前号の使いまわし。

ASCII1989(10)a04X68000_W520.jpg
X68000の周辺装置の広告。

ASCII1989(10)a05PanacomM_W520.jpg
PanacomMは前号の使いまわし。

ASCII1989(10)a06TOWNS_W520.jpg
TOWNSは前号の使いまわし。

ASCII1989(10)a07TOWNS_W520.jpg
TOWNSは前号の使いまわし。

ASCII1989(10)a08TOWNS_W520.jpg
TOWNSのソフト募集広告は前号の使いまわし。

ASCII1989(10)a08FM77森下桂_W520.jpg
左頁がFM77AV40SX。
右頁が富士通のモデム。
ASCII1989(10)a08森下桂_W520.jpg
森下桂がイメージキャラクター。ググると森下涼子の改名前の芸名。ドラマに出演していた。

ASCII1989(10)a09FMR_W520.jpg
富士通のFMRは前号の使いまわし。
前号でもコメント書いたがOS/2の時代は来なかった。

ASCII1989(10)a10エプソンラップトップ_W520.jpg
エプソンのラップトップは前号の使いまわし。

ASCII1989(10)a11PC-286VF_W520.jpg
エプソンのPC-286VFとラップトップの広告。

ASCII1989(10)a12WORDBankNote2_W520.jpg
右頁がエプソンのWORD Bank-note2の広告。

ASCII1989(10)a13NeXT求人_W520.jpg
ASCII1989(10)a13NeXT求人募集要項_W520.jpg
キヤノンによるNeXTの求人募集広告。

ASCII1989(10)a14LASERSHOT_W520.jpg
LASER SHOT

ASCII1989(10)a15NAVI_W520.jpg
NAVIは前号の使いまわし

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アップルとキヤノンの共同によるMacの広告は前号の使いまわし。

ASCII1989(10)a17AXi_W520.jpg
キヤノンのAXマシン。AXiは前号の使いまわし。

ASCII1989(10)a18Bubble-Jet_W520.jpg
キヤノンのバブルジェットプリンタ

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SONYのQuaterL「買うたれ」の広告は前号の使いまわし。

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SONYのNEWS

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SONYのNEWS

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左頁が東芝のJ-3100

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左頁がコモドールのAMIGAの広告

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東芝のDynaBook。片手で小脇に抱えているのが、軽量化の証。

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一太郎の広告

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花子の広告

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エクセルの広告

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シャガール(写嬢)の広告。シャガールにはお世話になった。昔、学会発表とかではスライドを作っていた。パソコンの画面をそのままリバーサルフィルムで撮影できるこのシャガールができてからスライド作成が楽になった。

ASCII1989(10)a29エコロジーノストラオーシャノグラフィー_W520.jpg
エコロジー、ノストラダムス、オーシャノグラフィの広告。それぞれをスクラップする。
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ASCII1989(10)a29ノストラダムス_W520.jpg
ASCII1989(10)a29オーシャノグラフィー1_W520.jpg
ASCII1989(10)a29オーシャノグラフィー2_W375.jpg
ASCII1989(10)a29オーシャノグラフィー単純_W361.jpg
ASCII1989(10)a29オーシャノグラフィー追加_W368.jpg
ASCII1989(10)a29オーシャノグラフィーデュアル_W410.jpg

ASCII1989(10)a30WALKMAC_W520.jpg
左頁がCOLBYのWALKMACの広告。CPUが68030(16MHz)のパソコン。広告だけでは、よく分からない。

ASCII1989(10)a31花王フロッピー_W520.jpg
花王のフロッピーディスクの広告だが、パソコン通信の記事になっている。パソコン通信会員同士の結婚が写真掲載されていた。当時はパソコン通信で知り合った者同士の結婚は珍しかった。

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ツクモ電機の広告。パソコンショップでASCIIのカラーページに広告を掲載しているのはツクモだけだった。

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裏表紙裏はFUJI FILMの広告。
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プラズマディスプレイ,CPU判別,韓国(月刊ASCII 1989年9月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

TBNのプラズマディスプレイの解説をスクラップする。
プラズマディスプレイの正体は
Q:プラズマディスプレイはどのようにして階調表示をしているのですか。またカラー化が進んでいるそうですが市販化されるめどはたっているのでしょうか.
A:プラズマディスプレイの階調表示を説明する前に、まずプラズマディスプレイの原理を簡単に説明しましょう.
 プラズマディスプレイは不活性ガスを電極間に閉じ込め,高い電圧をかけて放電させることによって発光させています.発光原理そのものは街中にあるネオンサインとほぼ同じです.このようなガス放電は,封入するガスの種類によって発光色が変化します(表1)。実際にはこれらのガスの中で,安全でかつコントラストの高いネオンガスを主にした混合ガスが使われています。


ASCII1989(09)g01プラズマディスプレイ表1_W466.jpg
 ここで放電の原理を簡単に説明しましょう.放電は,絶縁物に強力な電圧をかけることによって絶縁性がなくなり電気が流れる現象です.放電が行なわれているときに電極から直接またはガスの原子がイオン化することによって電子が放出されます。その放出された電子がガスの原子にぶつかるときに発生するエネルギーが,発光となるわけです(図1).

ASCII1989(09)g01プラズマディスプレイ図1_W343.jpg
 ディスプレイの構造としては,細長い電極を格子状に配列することによって1つ1つの画素(ピクセル)を作り出しています(図2)このようなマトリクス構造は液晶ディスプレイにも使われています。

ASCII1989(09)g01プラズマディスプレイ図2_W520.jpg
 表示の際には,CRTや液晶ディスプレイと同じく走査線方式を用います。ただしプラズマディスプレイの場合は1ラインずつ表示する方法です(図3).ちなみにCRTの場合は1ピクセルずつ,液晶ディスプレイはプラズマディスプレイと同様に1ラインずつ表示します.

ASCII1989(09)g02プラズマディスプレイ図3_W520.jpg
 なお1つのラインを表示している時間を1水平走査期間(1H期間),ラインが集まって1画面分を構成する時間を1垂直期間(1V期間)と言います。
 プラズマディスプレイの駆動方式はディスプレイの放電/発光に交流電源を使うAC方式と,直流電源を使うDC方式の2種類に分かれます。両者は基本的な構造に関しては大きな違いはありませんが,電極や駆動回路等の細部はかなり異なります.また,実際の放電現象にもかなりの違いがあります。
 AC型ディスプレイは電極が一種のコンデンサになっています。そのため,放電開始電圧よりわずかに低いパルス波を常時電極にかけておけば,一瞬でも電圧を上げれば放電,以後は発光を維持するという特徴を持っています。これをメモリ機能と言います。放電を止めるときは,電圧を最小放電維持電圧以下に落とすことによって行ないます。このメモリ機能によりAC型ディスプレイは1V期間中,つまり次に同じラインが書き換えられるときまで発光を続けます.
 AC型ディスプレイの発光の仕組みをもうすこし見てみましょう.まず常時電極に流す維持用の電圧(維持パルス)を,最小放電維持電圧よりわずかに低く設定します。点灯をするときは放電開始電圧を超える電圧(書き込みパルス)を流します.すると電極の構造上,電極に電荷(壁電圧)がたまります.次に維持パルスの極性が逆転します。これによって壁電圧の分が維持パルスにプラスされるため、実質上の電位差は放電開始電圧を超えることになります。そして放電を起こし壁電圧がゼロに戻ります。その後また壁電圧がたまり……,の繰り返しで発光が維持されます。消灯するときは、壁電圧がたまらないように電圧(消去パルス)をかけます(図4).


ASCII1989(09)g02プラズマディスプレイ図4_W520.jpg
 このためAC型ディスプレイの発光は点滅することになりますが,そのサイクルが非常に速いため(1秒間に10000回以上)人間の眼には持続した発光に見えます。
 DC型ディスプレイはAC型とは違い,電圧をかけている間だけ持続した発光を行ないます。ただし電圧が十分に上がり実際の放電が起きるまでにはタイムラグがあり,またその間は放電が安定しないため画面にちらつきが起こるなど,なかなか安定した表示が得られません。そのため応答速度を上げ画面を安定させるために,1H期間ごとにパルス波を流すなどをして発光しない程度の放電を常に起こさせています。これを種火放電と言います.種火放電によってガスの絶縁性がほとんどなくなり,電圧をかけるとすぐに安定した放電が起きるのです(図5).


ASCII1989(09)g03プラズマディスプレイ図5_W520.jpg
 さて,ご質問のプラズマディスプレイの階調表示ですが,これは発光を行なう時間を変化させることによって行なっています。この考え方はAC型もDC型も同じです.DC型では1日期間あたり,AC型では1V期間あたりの発光時間を80%,60%と短くしていくことによって,1ピクセルあたりの輝度を変化させて階調表示を行なっています.たとえば4階調表示の場合は,1回の期間を3等分して発光する回数を調整しています(図6)。この方法では原理的には無制限に階調表示が可能で、今までのところ最大16階調まで表現できるディスプレイが製品化されています。

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 現在プラズマディスプレイでは,カラー化の研究が進められています。カラー版のディスプレイはネオンガスの代わりにヘリウムガスなどを使い,放電によって発生する紫外線を用いてRGBの蛍光体を発光させる方式をとっています.この方式では緑の輝度はよいのですが赤と青の輝度がまだ弱く,研究者の頭を悩ませています。最近は各メーカーからカラー版のディスプレイの発表が相ついでいますが,それらの大半はまだ試作品の粋を出ていません。しかし階調表示には優れ,色の再現性そのものもいいため,輝度が向上すれば液晶ディスプレイ,ことによればCRT以上の高画質が期待できます.
(加藤)

協力:松下電子(株),富士通(株)
プラズマディスプレイは液晶ディスプレイに駆逐されてしまったが、スピードが速いということで健闘していた。

「困ったときのプログラミング・トラシュー 第2回 CPUの判別」をスクラップする。
Q:8086とV30をソフトウェア的に識別する方法はありませんか?これができると「8086では走りません」などと表示してプログラムを止めることができるようになるのですが.
システム定義域や8086の未定義命令を使う方法もあるようですが,機種などに依存したくないのです.

 A:8086に対して,80286やV30などのCPUでは,いくつかの命令が強化されています。プログラムの実行効率を上げるために,これらを使用したくなるというのも当然でしょう.特に,ある種のbit操作においては,V30や80386などのCPUのbit操作命令が使用できれば,実行速度を向上させることができます。
 たとえば,パソコン通信で非常によく使用されているishというプログラム(注1)では,その性質上bit操作が大量に必要になります。ですから,ishはCPUがV30の場合には,その拡張命令を使用してより実行効率を上げ,そうでない場合でも,正常に動作するように記述されているそうです.

 注1 バイナリファイルをネットワークに転送可能なテキストファイルに変換したり,変換されたテキストファイルからもとのバイナリファイルを復元するためのコンバータ.回線の雑音などによる伝送エラーに対処するため,エラー復元機能も備えている.
 そのような処理をするには,使われているCPUが何なのか,判別しなくてはなりません.そして,そのCPUに応じて最も高速な命令シーケンスを選択するのです.
 ところで,Intel系のCPUを判別する方法には、かなり標準的なものが存在しています.これは,SYMDEBやCodeViewなどのプログラムも採用しているもので,そういう意味からは信頼性が高いといえます.
 ただし,この判別方法は通常の命令の実行処理結果の差異を利用しているものですから,逆にいえば通常のプログラムでも,これらの判別命令と同様の処理を行なっていると,プログラム自体がCPUによって誤動作する可能性があるといえます。これらの命令はその面でも注意をする必要があるでしょう.
 その判別方法ですが、まず判別の第1段階として,32bit以上のシフト動作が使用されます.80x86CPUでは,CLレジスタに設定した回数だけレジスタまたはメモリ上の値をシフトまたはローテートさせることができます。
 ただし,レジスタをそのbit幅以上シフトさせると,その値は常に0になってしまうので,プログラム上で意識的に使用される可能性はかなり低いといえます。しかも,この値が大きくなると,1命令の実行処理時間がかかることになるので,割り込みなどに対するCPUのレスポンスが悪くなります。
 そこで,8086以外のCPUでは,まずシフトする回数と1FH(31)とのANDをとった回数だけシフトを実行することにしています.
ですから,たとえば,
MOV AX,OFFFFH
MOV CL,32
SHL AX,CL

という一連の命令を実行すると,8086CPUでは,AXレジスタは実際に32回シフトされて0になりますが,それ以外のCPUではまったくシフトされず,OFFFFHのままです。この違いを利用して,まず8086を判別することができます。
 次に,80186の判別ですが,これはPUSH/POP命令の動作の相違によって判別できます.具体的にいうと,80286/80386では,指定されたレジスタ/メモリの値をスタック領域に書き込んでからスタックポインタの値を減算します(ポストデクリメント).しかし,8086/80186ではまず減算を行なってから,指定された値をメモリ領域に書き込むのです(プリデクリメント).そのため,スタックポインタの値をスタックにPUSHした時の値が8086/80186と80286/80386とで異なることになります(図1).


ASCII1989(09)h02CPUの判別図1_W520.jpg
 実際には,
PUSH SP
POP AX

 という命令を実行した後で,AXとSPの値を比較し,同一であれば80286/80386,異なっていれば8086/80186ということになります.
 80286と80386の判別には,GDTRレジスタ(注2)

注2 GDTRレジスタというのは,プロテクトモードでシステムが使用するレジスタ詳しい説明は,80286/80386の解説書などを参照のこと。
 のbit幅が異なることを利用します。80286ではGDTRレジスタは40bit(5bytes),80386では48bit(6bytes)なのです.そこで,特定のアドレスにGDTRレジスタの値を書き込むと(SGDTという専用命令を使います),80286では6byte目の値は変化しませんが,80386では6byte目にも値が書き込まれます.したがって,
GDTW DB 6DUP (OFFH)
  ……
SGDT GDTW

というように,6bytesの領域を確保してあらかじめOFFHで埋めておき,このアドレスに対してSGDT命令を実行し,6byte目の値を調べれば80286と80386を判別できます.GDTRレジスタの上位8bitがOFFHになっていて,6byte目の値が変わらないことは,現在のシステムではほとんど考えられませんが,より慎重を期すには,さらに0で6bytesの領域を埋めて,同じ操作を繰り返せば確実でしょう.
 まとめると,表1のようになります。


ASCII1989(09)h02CPUの判別表1_W520.jpg
 さて,問題のV30の判別ですが,まずV30はシフトに関して8086と同等ですので,8086以外のCPUとの判別は,容易に行なえます.つまり,8086と区別できればいいのですが,残念ながら,明確な形で判別する方法はないようです.
 1つは,やはり未定義の命令を使用する方法です.たとえば,コード0D6Hで表わされる命令は,Intelのマジックコードと呼ばれることもある命令で,V30の著作権争いの時に,V30が8086と異なる動作をすることを示す材料として提出されていたものです.Intel系のCPUでは,これはCYフラグが立っている時にALにOFFHを,立っていない時に0をロードする命令と解釈されるようです.この命令は80386に至っても同様な動作をし,Intelの開発システムで使用されているという話ですから、この範囲なら安定に動作すると考えていいようです。
 V30でどのような動作をするか,ということについては確実なことは分からないのですが,XLAT(コードは0D7H)と同じ動作をするようです.ですから,適当なアドレスをBXとALにセットした上で,CYフラグを立てて0D6Hを実行した後のALの値がOFFHであれば8086,そうでなければV30と見ることができます.
 動作についてより信頼性のおける未定義命令を使用する方法としては,POP CSを使うことができます.POP CS(0FH)は,8086では文字どおりCSレジスタの値が操作されてしまいますが(80286以上では,未定義命令のトラップ),V30では拡張命令の第1byteとして使用されます.ですから,たとえばOFH/10H/OCOHというシーケンスを実行すると, 8086ではCSがPOPされた後,ADC AL,ALが実行され,V30ではTEST1 AL,CLが実行されます。あらかじめALに非0の値を入れ,CSレジスタの値をスタックにPUSHしておけば,ALレジスタの値を調べることで8086/V30の判別ができます。
 既存の命令だけを使って調べる方法としては,命令実行速度の差をもって調べる,という方法が考えられます.8086では,複雑なアドレッシングモードの時に実効アドレス(EA:Effective Address)を計算する時間が随分かかります。
MOV  CS:[BP+SI+1],AL
というような命令を実行するためには,V30の場合に比べて14クロック程度もの余計なクロックが要求されます.その間に続く命令が先読みされるため,同様な命令を連続して実行した場合に,8086の場合は命令キューが満たされた状態になり,V30では満たされていない状態になります。ここで,この境目にある部分の命令を書き換えた場合,8086ではそのアドレスの命令はすでに先読みされているため,書き換える前の命令が実行されますが,V30ではこのアドレスの命令がまだ先読みされていないため,書き換えた後の命令が実行されることになります.ただし,この方法ではキューの大きさが違うV20/8088が使われているシステムでは,正常に判別ができない可能性があります。国内の機械では,これらを使用しているものはまずありませんが,古いIBMPCのコンパチ機の場合は,8bitバスのCPUを使用している場合があります.これらも考慮に入れる場合は,同様な方法でキューの大きさ自体もあらかじめ判別する必要があるでしょう.なお,古いV30チップのマニュアルでは,PUSH時のスタックの処理がポストデクリメントと80286などと同様な記述になっているものがあります。実際には8086と同様なプレデクリメント動作をしていて,マニュアルの誤りだと思われます.マニュアルも,最近のものでは修正されているようです。マニュアル通りの動作をしてくれるなら,はるかに簡単に判別を行なうことができたのですが.以上のような手続きをまとめて,アセンブラのプログラムにしたものをリストページ(略)に示します.

PC-9801VX2とPC-9801VM2かの比較にはEGCのあるなしで判別した記憶がある。コードはどうだった分からない。このCPU判別も使ったはずだが忘れた。

日本の半導体産業は韓国に対して周回遅れと言われるまで落ちぶれたが、一体いつの何が原因だったのか。韓国はいつから躍進したのか34年前の記事をスクラップして手掛かりを探す。
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躍進著しいNIESパソコン事情を探る
松岡 洋

 6月4日に中華人民共和国北京市で起きた民主化要求運動に対する武力鎮圧は,近隣諸国に大きな衝撃を与えた。台湾,韓国、香港そしてシンガポールとNIES諸国はいずれも人,文化,経済のさまざまな面で中国と関係が深い。武力鎮圧のニュースが入ると、香港,韓国の株式は大暴落するなど中国のNIES経済に対する影響は無視できないものがある.そのような状況のなか、本誌は昨年12月号の「台湾・香港編」に続いて古くから日本との関係が深い韓国へ、と取材に赴いた。
 韓国は1950年から3年間の朝鮮戦争で,国土の大部分が戦場となった。朝鮮半島を数度にわたって縦断した戦闘は「破壊のローラー」と呼ばれ、主要工業地帯の生産設備はほとんど破壊された.ゼロからの出発を余儀なくされた韓国経済は,乏しい物資を最大限有効に利用するために特権的大企業に集中させ,経済の立て直しを図った。これらの企業が現在の財閥の核となり,高度経済成長期にも主導的な役割を果たしてきたのだ。
 昨年のソウルオリンピックで近代国家としての自信をつけた韓国は,オリンピックに付随したさまざまな整備事業で一段と近代化している。
 韓国の経済は輸出依存型で、電気製品も輸出が中心だ。パーソナルコンピュータの輸出も好調で、米国のコンピュータ雑誌の広告のあちこちに韓国メーカーの製品が登場している。日本でも時折電子業界誌に広告が掲載されているが,まだその企業規模に比べると知名度は低い。
 パーソナルコンピュータ専業メーカー主体の台湾では核となる半導体素子その「ものも輸入に頼る状況だが、韓国では太型コンピュータこそ生産していないものの、家電製品から半導体素子まで生産すある垂直型の総合電気メーカーが市場を制している。
 毎年世界の大企業売り上げ高500社ランキングが米国の経済誌「フォーチュン」から発表されているが,韓国の財閥系企業も多数ランク入りしている.今年発表された。米国企業をのぞいた500社ランキングでは15位に三星がランクされており,以下韓国企業は大宇,鮮京,双竜,現代自動車,金星と続く。ちなみに日本企業はトヨタ,日立,松下,日産の4社が三星よりも上位にランクされ,東芝ホンダ,NECが下に続いている.
 韓国では日米に対抗するため,これらの大企業間で先端技術の共同研究を行なっている。最近では,三星,金星,大宇が4MDRAMの共同開発に成功しておりサンプルチップの出荷を始めている。
 今回は,ソフトウェア見本市のSEK'89と電子機器関係のトップメーカー三星電子,ハイテク研究者養成機関の韓国科学技術大学,そしてソウル市内の電気街を紹介しよう.

天安門事件はこの年だったのか。


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韓国
 韓国のコンピュータソフトウェアの総合展示会SEK'89(主催・電子時報社)が6月23日から5日間にわたり,ソウル市内の韓国総合展示場KOEXで開催されまた、今年で3年目を迎えたSEK'89は,海外からの参加約20社も含めた約150社が出展した。
 6月26日午後ソウル金浦空港に着いた我々は、オリンピックスタジアムに隣接するKOEXに直行した。空港からソウル市街地までタクシーで約30分、さらにオリンピック大路に入って10分ほど走るとKOEXが見えてくる。すぐとなりには55階建ての貿易タワービルをはじめ国際会議場,ホテル,ショッピングセンタ一等が並び,KOEXも含めた韓国総合貿易センターを形成している。この貿易センターは昨年のソウルオリンピック開催の付帯事業として建設されたもので、SEK'89も今年からKOEXに会場を移し大規模な展示会となった。
 真新しい会場には、夏休みと物珍しさも手伝ってか、学生や会社員が多数詰めかけていた。あちこちのブースでパンフレットを集めて回る様は,どこの国でも同じだ。
 KOEXではホールの展示のほかに,セミナールームで各種の技術セミナーが開かれている。
 ホールには,パーソナルコンピュータやEWS(エンジニアリングワークステーション)が並び,OA,FAおよび通信関係のシステムが展示されている。
 韓国の主要なコンピュータメーカーは,いずれも大財閥に属している.SEK'89の会場にも、三星,現代,ラッキー・金星,大宇,双竜の大財閥系の各コンピュータメーカーが出展している。
 これらの一般展示のほかに、ホールの中央では特別展示としてSEK'89の主催者が募集したソフトウェアコンペティションの入賞作が実演されている.入賞作内訳は,大賞,金賞が各1点,銀賞2点,銅賞3点および奨励賞5点の計12点このうち大賞と奨励賞に入賞した双竜(サンヨン)のブースをのぞいてみた。

フトウェアコンペティション
 大賞に選ばれたのは,パーソナルコンピュータに接続したフライス盤(切削加工機械)をCADで作成したデータに従って制御するシステム奨励賞には、パーソナルコンピュータ上で稼働するオブジェクト指向エキスパートシステムのMORUSが選ばれた。
 主催者側の電子時報社事業部の閔丙縞(ミン・ビュンホ)次長の話では、韓国はコンピュータでどのようなことができるのか,どのような応用分野があるのかを模索する段階にあるという。これらの入賞展示も,それを如実に表わしているといえるだろう.
 MORUSはソウル大自然大学(ソウル大学の自然科学系分校)で研究していたエキスパートシステムをベースに、双竜自然大学産学共同で開発されたものだ。1987年に3人で開発を開始,当初はLispで記述していたが,機能が固まった段階でC言語への書き換えを行なったというGUIやオブジェクト指向プログ・ラミング特有のインヘリタンス(機能継承)機構は,Smalltalkを参考にしたそうだ。
 MORUSの大学側の開発者は卒業後その開発成果と共に双竜に移り、来年の市販を目指していると語った。

ソウルオリンピックが1988年。やはり初めてのオリンピックを開催すると経済が発展するのだろう。


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韓国ワークステーション事情
 一般展示の主力はいずれもIBM PC互換機とそのアプリケーションソフトである。三星などのメーカーのブースを取り巻くように、中小のソフトハウスがCAD,科学計算などのパッケージを展示していた。とはいえ大メーカーや外国系企業のブースでは,EWSも数機種展示されている。
 Sun Microsystems韓国総代理店の現代電子は,SUN3と米国のCADシステムを展示していた。一方金星のブースでは、自社開発のGS8000/32を展示していた.WE(ウェスタンエレクトロニクス)の32ビットCPUのWE32100を使用し、クロック周波数18MHzで処理速度4MIPS.OSにはUNIX System Ver.2.1をハングル(韓国語)化している。1988年6月に発表され、現在はモデル110と130の2機種を販売している。両機種共にキャッシュ32Kバイト,主記憶2Mバイト,ハードディスク86Mバイトを装備。違いは匡体と拡張性,ユーザー数などだ。価格はモデル110が1700万ウォン(日本円換算で約360万円),130が3500万ウォン(同約740万円)同程度の性能のSUN3やNEWSなどと比較すると,ま割高である.
 データゼネラル・コリアはAViiONを参考出品していた.AViiONはCPUにMotorolaのRISCチップ88000を使用処理速度17MIPSを誇る。会場ではXヴィンドウのデモを行なっていたが,まだハングルは扱えないようだ.どうも韓国内でのハングル文字コードが統一されていないため、様子をみているところらしい(コラム参照)。



コラム
ハングル文字とコンピュータコード
 韓国では,ハングル文字と呼ばれる独特の表音文字を国字として用いている。ハングル文字は子音と母音を表わす表音記号で構成され,子音+母音,または子音+母音+子音の組み合わせを取る。母音は複合母音も含めて21種類,子音は双子音を含めて19種類あり,一般的には約4000の組み合わせ(=文字)が使われている.
 ハングル文字をコンピュータで扱えるようにコード化するにはいくつかの方法がある.簡単なのは,子音,母音に各々1バイトを割り当て,2バイトまたは3バイトのバイト列で扱う方法だ。もちろん,英字と区別するため16進数で80以降に子音と母音のコードを配置する。これをかりに1バイトコード体系と呼ぶ.
 一方,子音,母音が各々5ビット(=32種)で表わせることを利用し,子音+母音+子音を5+5+5ビットにパックして2バイトで文字を表わす方法も考えられる.英字との区別は,2バイト=16ビットの残りビットを最上位ビットに配置して英字とハングル文字の区別を行なう.この方式を2バイトコード体系と呼ぶことにする.
 韓国のコンピュータ業界は,2つのコード体系をばらばらに内部コードとして採用してしまった(通信に使使用する外部コードは統一されている).これは非常に大きな問題である.
 もたもたしているうちに、業界が三星,現代をそれぞれ中心にした2グループに分裂してしまった。両グループには主要メーカーがほぼ同数に分かれ、勢力が均衡しているために問題を長期化している.
 昨年公的機関が標準化を諮ったが,両陣営が互いに譲らず失敗に終わった。今後の発展を考えると,早期解決が望ましいが,勢力が均衡しているだけに見通しは立っていない。
 ソフトハウスや一部のメーカーは、仕方なく2つのコード体系をサポートしているというのが現状である.

表示と入力
 ハングル文字の表示には縦14画素を必要とするため,IBM PCで25行を表示するには14×25=350ライン表示可能なEGAビデオカードが必要になる。IBM PC互換機環境でハングルの使用を可能にする通称「ハングルDOS」は,約4000種のハングル文字フォントを内蔵してEGAのグラフィック画面に文字を展開している.この方法では文字の表示速度が遅いため,文字フォントをROM化したKEGAビデオカードも最近開発された.
 文字の入力には子音と母音を逐次入力する方法がとられており,各キーに各々の音を割り当てている。キー配列については早期に業界で統一されたという.

なんとハングル文字のコンピュータ内部表現が統一されず2つの体系があるとは。解決すべき大問題だと思うけど何年に解決したのだろうか。
普及が始まったデータ通信
 韓国でデータ通信を独占するDACOMのブースでは,コンピュータ,テレックス,ファクシミリ間で通信を行なうMHS(メッセージハンドリングシステム)を展示していた。日本から取材に来た旨を告げると、係員がMHSを実演してくれるという。公衆回線に接続した端末から入力した電子メールがDACOMのコンピュータセンターでファクシミリのデータに変換され,約30秒後にとなりに設置されたファクシミリから歓迎のメッセージが出力されてきた。
 DACOMは経済情報のKETELを始め、種々のデータベースサービスも運営している。昨年のオリンピックでは市内の所々に設置された端末で,競技結果速報などを行なった.
 データ通信関係では,韓国富士通がNIFTY-Serveのデモを行なっていた。日本語ワープロの通信機能を使って日本のアクセスポイントに接続し読み出すメッセージも日本語表示のままだが,来場者の興味はちょうど我々が米国のCompuServeやGEnieに抱くものに近いようだ。
 韓国のパーソナルコンピュータ産業は年間約240万台を生産しているが,これまでは輸出が主体。国内ではまだ学生や技術者といった目的のはっきりした層にしか浸透していない。特にビジネス・家庭などはまだ未開の分野だけに,これからの普及が期待されている。




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電子機器のトップメーカー 三星電子
 電子機器最大手の三星電子は、三星物産と共に三星財閥の中核を形成している。昨年三星電子と三星半導体通信が合併し結果、現在の従業員数は3万8000人,1988年の総売り上げは3兆ウォン(約6300億円)を突破した。売り上げの3分の2を輸出に依存する,典型的な輸出型企業である.
 三星電子の営業および企画部門はソウル市内にオフィスを構えているが,会社の本拠地はソウル市から西に約60kmの水原(スウォン)市郊外にある工場群だ。水原では主に電気部品と家電製品、そしIBMPC互換のコンピュータを生産している.水原のほかにも国内に3カ所の工場があり、各々メモリチップ,半導体素子,通信機器を生産している。
 まずはソウル市内の情報機器部門を訪問し、企画課の金炳起(キム・ビュンキ)課長代理に三星電子と韓国コンピュータ産業の現状を説明していただいた。
 韓国のパーソナルコンピュータ市場は、80%以上がSamsung(三星),Hyundai(現代),Deawoo(大字),Goldstar(金星),Trigem(三宝)の財閥系5大メーカーで占められている。また市場の70%はCPUに8088を用いたIBM PC/XT互換機が占めており,AT互換機(CPU80286)が25%,386AT(同80386)が5%程度の比率という。また最近はゲームマシンも普及しているが、やはり韓国でも任天堂に人気が集中し、セガとMSXが後を追っているそうだ。
 三星電子のコンピュータ部門はIBM PC/XT互換機のOEM供給から始まったが,現在ば大部分をオリジナルのSamsungブランドで出荷している。出荷先は今のところ輸出6に対して国内4の割合で,これから企業向けを中心に国内の割合を上げていく方針だ。
 「輸出だと(価格競争で)利益率がとても小さいが,国内企業相手ならばそれほど苦しい商売ではない」(金氏)という。輸出分についても現在は米国と欧州が半々だが,米国が保護貿易の様相を呈してきたので今後は欧州市場に力を注いで「いかなければと力説する。
 日本への進出の予定はないかとたずねてみたが,日本の市場は三星の主力のIBMPC互換機とは市場傾向が異なる。ため、残念ながら考慮していないという.日本ではエプソンがPC-9801の互換機で成功しているという話を持ちかけたが,「開発期間と資金を考えるとあまりおいしい商売とは思えない」(金氏)そうだ。ただし,JEGAボードを組み込んだAX規格機を1990年に発表する計画があるそうなので、それに期待したい。
 日本法人の三星電子ジャパンも情報収集と資材調達の性格が強い.ちなみにコンピュータ部品の自給率はメモリチップを中心に20%,残り80%のほとんどが日本製という.日本企業との競争力を高めるためにも1990年前半までに自給率を50%に引き上げる方針だ。

米国中心の輸出で生き残れたのか。日本は米国への貿易黒字が大きく、日米貿易摩擦でバッシングを受けた。韓国はどうだったか。


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またEWSについても、いくつか計画中という。パーソナルコンピュータからのアプローチとして,クロック周波数20MHzの386ATにハングル版UNIXを搭載したWSを来年発売の予定だ.SunのSPARCstationやMIPSのEWS相当する機種も計画には入っているが,姿を表わすのは少なくとも1991年以降となるだろう。
撮影禁止 禁断の水原工場
 ソウル市のオフィスを後にし、三星電子の水原工場に向かう.ソウル市から水原市まで電車で約80分,さらに駅からタクシーで20分ほど走ると,前方に巨大な工場群が見えてきた。150万平方米の敷地に、三星電子をはじめ三星電管(CRT),三星コーニング(ガラス)等の三星グループの電子機器関連企業が集まっている。
 中央正門前でタクシーを降りると,迎えに出ていた研究所管理部門の李泰藩(イ・テグォン)氏にまず注意を受けた。ここは軍関係の仕事も手がけているので、工場内外は写真撮影禁止なのだ.
 構えていたカメラを慌ててしまい,李さんに従って門をくぐる。案内されたのは正門から一番近いビルで,Samsungのロゴが入った直径数mのパラボラアンテナが3基設置されている。ビル自体は上から見ると曲線を生かした造りになっており、SF映画に出てくる研究所のイメージをそのまま作ってしまったような印象だ。
 入口には海外からの来客を迎える各国の国旗が掲揚されている。今日は,日本,フランス,ベルギー,アメリカの4カ国で,我々と前後してソウル市で開催中の技術交流セミナー「ベルギーハイテク89」来賓のアルバート皇子と,貿易相の一行が到着した。李さんの話では、韓国を訪れる外国元首や閣僚クラス,いわゆあるVIPの公式訪問コースに,三星電子の工場も入っているということだ。
 水原には家電製品とコンピュータの工場のほかに,綜合研究所を併設している.研究開発要員にはこの綜合研究所の400名を始めとして、ほかの3カ所の工場に併設された各研究所で計2700名を擁する。
 1986年のこと,三星電子から4mm幅の磁気テープを用いたビデオカメラが発表された。4mmといえば通常はオーディオカセットテープのことなので,マニアの間で半信半疑ながら話題になったものだ。実はこのビデオカメラは水原の研究所で開発された商品で、今回見学した水原のショールームに実物が展示されている。
 4mm幅の磁気テープの正体は、1981年に発表されたDAT(デジタルオーディオテープ),その記録ヘッドや記録方式はビデオ技術を応用したものだ。日本では欧州の企業からDATプレーヤ発売延期の圧力がかかっていた時期だけに,あっさりと正攻法で商品化する手腕は脱帽ものだ綜合研究所はこのような商品化を前提とした応用研究が主体としている。
 ショールームにはこのほかヘッドフォシステレオからプリント基板実装ロボットまで200種以上にものぼる各種製品が展示されている。パーソナルコンピュー夕関係もラップトップを含めてゲーム機から386AT互換機まで10機種を超える。変わったところではイーサネットインターフェイスを備えたディスクレスのネットワーク専用機PCterminal/286G2がある。企業向けの大量導入をねらったもので、三星電子の国内市場への戦略をうかがわせる。




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天下の英才を集めて教育する KIT
 韓国の教育制度は日本と似ているが,高校への進学率が約90%,大学(短大を含む)へは40%にも達し,高等教育にか.ける情熱は日本以上だ。大学受験は国公立、私立も含めて1大学1学部しか出願できないため、受験戦争は熾烈を極め、「4当5落」どころか「3当4落」といわれている。
 彼らの目指す大学の頂点は,国立のソウル大私立の延世大,高麗大などである。また女子大では,梨花女子大が有名だ。これらの大学の学生は政治に対する関心が高く、学生運動が盛んだ。いずれの大学もソウル市内に位置し、時折日本でも報道されるように,市内でデモを行なっている.
 このような騒々しい大学とは対称的に、世俗を離れて高度技術の研究者を純粋培養する仙人のような大学がある。ソウル市から南へ160kmほど、地理的には韓国この中央に位置する太田(デジョン)市郊外に多数の国公立の研究機関が集まった大徳(デートク)研究団地がある。この研究団地の一角にその仙人の大学,韓国科学技術大学,KITがある。33万平方米の敷地内に6棟の学生寮を持ち,学生数はたったの2100人、前記のソウル市内の大学の学生数がどこも1万人を超えることを考えると,まさに別天地だ。
 ソウル市から太田市までは高速バスで約2時間バスターミナルからはタクシ-でKITを目指す研究団地に入り建設中の研究機関をいくつか通り過ぎると、30分ほどでKITにたどり着く。
 夏休みのためか,学内は閑散としている。案内していいただいた広報課の崔泰雄(チョイ・テウン)課長の話では、夏期講習を行なっているので、これでもほとこんどの学生が大学に残っているそうだ。KITは,1986年に大学院を持たない全寮制の自然科学系大学として開校した。韓国の科学技術の総本山KAIST(韓国科学技術院)ば研究機関であると同時に高度な科学技術の研究者を養成する教育機関でもある。韓国内の自然科学系大学を卒業した学生の内でも特に優秀な者がKAISTの大学院に進学し、修士博士号を取得する。そして、より効率よく一貫した研究者教育を行なうために,KITが創られたのだ。
 KITは自然科学(基礎科学)部機械材料工学部、電子電算学部,応用工学部の4学部からなるが,学科はなく大学院と同じく各学部に4つの専攻がある。定員は50名だが,実際に入学を許可されるのは毎年510~520名,合計で約2100名が在学している。入学者のほとんどは大学院への進学を希望しており,一部は海外留学を望んでいる。そしてそのほとんどが実現するに足る能力を有しているのだ。韓国の自然科学系大学では大学院への進学率が平均1割程度だから、まさにライブトスタッフである。
 この大学ではさまざまな教育実験が行なわれている。通常,韓国の大学は4年間の就学期間を経て卒業するが,KITでは140学点(単位)を取得した段階で卒業できる。特に優秀な学生ならば、2年半から3年で卒業することも可能だ。この夏季講習も,学点を稼ぐために役立っている.開校から3年半経過した今年の夏最初の卒業生が100名ほど出る。ほと・んどはKAISTの大学院に進学するとい現在ソウルにあるKAISTの大学院も来年KITのとなりに移転する計画で、取材時には建物が姿を見せ始めていた。
 韓国では、青年男子には2年半の兵役が義務付けられており、KITの学生も例外ではない。しかし、特例として防衛産業や公的機関に従事する場合,期間短縮等の措置がある。KAIST進学者もこの対象になるという。

伝統が無いだけ合理的なKITという大学、研究機関が作れたと思う。日本ではなかなかできない。各企業がそれぞれ独立して研究するから合理的とは言えない。しかし、ASCII EXPRESSのスクラップでは世界初の技術の記事があったので日本的研究も悪くなかったはずだ。いつから、どうして日本はダメになったのか。

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少数精鋭・英才教育
 KITでは設立から2年間,試験的に入学生に対する創意テストとIQテストを行なった。大学付属の英才教育研究所が,このテストの結果と学業成績との相関関係を資料として,入学後の追跡調査を行なっている。結果はあと2年後に報告され、大学入試や研究者養成に応用する計画だ。ちなみに初年度の入学者の平均IQは140~150で140付近が最も多いという。教員数は教授が約150名に助教授が約60名、学生10名に対して教授1名の割合を目標に補充を行なっている。
 学生にとってこの大学は非常に恵まれた環境といえるだろう。学費は年間54万ウォンで,学生には奨学金として月額平均6万ウォンが支給される.

豊富なコンピュータパワー
 自然科学系の大学では,研究を支援すコンピュータは不可欠の存在だ。コンピュータの支援があるのとないのでは、業績に大きく差が出る」(崔課長)ということで、全学生に研究支援のためのコンピュータ教育(UNIXとC言語)を行なっている。また,計算センターか図書館や学生寮に端末が引かれ,24時間自由に使用できる体制になっている。コンピュータ専攻の学生には,計算機センターのほかにSUN3が4台割り当てられている.後期からは12台に増強されるが,それだけで驚いてはいけない。現在ソウルのKAISTにあるスーパーコ「シピュータCray2を,専用回線で利用できるのだ。さらに,となりにKAISTが移転してきてKITと合流するときにはCray2も移設し,ソウルに残ったKAISTの研究部門には新たにCray3が導入される.KITのコンピュータ専攻の学生は,これらすべてを使用できるのだ。湯水のようにコンピュータパワーを使えるとは何ともうらやましい。
 個人でパーソナルコンピュータを所有する学生はいないのかと質問すると,遊びで使うのならともかくと前置きし、「これだけのコンピュータを24時間利用できるのに、わざわざ自分で大金を払ってまで性能の低いコンピュータを買う必要もないだろう」(Shin,Sung-Youg電子電算学部助教授)とのお答えだった。ごもっとも.
 韓国コンピュータ産業の展望などをインタビューするため,Shin助教授とコンピュータ専攻の4年生3名に集まってもらった。我々の質問に、難しい質問だと困惑しつつも応じてくれた。
 「ある産業が発展するには、いかに優秀な人材をその産業界に数多く引き込むかにかかっている。韓国では今まで造船や自動車などの)機械産業に人気があり、多くの人材を獲れたので成功を収めた。コンピュータ産業も人材の育成が鍵を握っているが,政府がコンピュータの振興政策を打ち出しており、今後加速度的に技術が促進されていくだろう」(4年:朴世衡)とのことだ。
 さらに突っ込んでEWSの将来性についたずねると,面白い話を教えてくれまた.最近,大字がコンピュータに興味を持つ学生を集めて,EWSに対する討論会を開いたそうだ。討論の結果,市場に、EWSが出たとしても,SUN並の応用ソフトが揃わなければビジネスにはならないという結論が出たという.SUNがほかのEWSを引き離してあれほどの成功を収めたのは、質の高い応用ソフトが多数用意されていたことに尽きるからだ。
 いったい誰が応用ソフトを用意するのだろう?EWSビジネスという卵を産む鶏が応用ソフトならば,その鶏はどこからやってくるのだろう、鶏と卵の問題の正解は爬虫類というより原始的な生物からの進化だ。現在の韓国は、あまりに技術成長が速すぎたため、爬虫類に相当する技術を跳び越しているように感じられた。それともこれは私だけの思い過ごしなのだろうか?




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ソウル電気街巡り
世運商街
 ソウル市内には,世運商街(セウンサンガ)と竜山電気商街(ヨンサンチョンジャサンガ)の2つの電気街がある.
 世運商街は比較的古く,ソウルに住んでいれば誰でも一度はお世話になるという。最寄りの交通機関は,地下鉄1号線の鍾路3街(チョングロ・サムガ)駅だ。観光名所の一つ宗廟(ジョンショ)が駅の近くにあり,世運商街は宗廟と鍾路通りを挟んだ反対側にある。
 駅からは200mの距離にあるが,鍾路に面して宗廟市民広場があるので目標にすると分かりやすい.広場の近くまで来ると,反対側に魚の壁画のあるビルが見える.この奇妙なビルが世運商街だ。
 ビルは幅約30m,長さ約200mの6階建てで,1,2階には家電商が入っている。コンピュータショップは4階に集中しているが,最近は電卓等の小物電気製品を扱う3階にまで進出しているそうだ。ビル内は10坪から15坪の区画に仕切られ,フロア当たり100軒以上の小売店が入っている。東京のほうならば、秋葉原のラジオデパートを巨大にしたものといえば、雰囲気が想像できるだろう。
 ショップの大半はIBMPC互換機を扱っており,価格はXT互換機で100万ウォン(日本円換算で約20万円)あたりが多い。大学卒の初任給が約50万ウォン(約10万円)だから月収の2倍。日本での初任給を約16万円とすれば,PC-9801RX程度の感覚かお客のほとんどは大学生が技術者だという話だ。
 一方ソフトについては,なぜか店頭にはパッケージの類が並んでいない。ほかに専門の店があるのかもしれないが,どのようなものが流通していあるのかを知ることはできなかった。
 2間ほどの間口の本屋を見つけたので、中に入ってみる。奥行き2m程の広さで,壁一面に雑誌や単行本が並び、所々に米国や日本のものも見えある。日本で捜して見つからなかったAddison Wesley Programmers Guide to the EGA and VGA Cardsを見つけたので、早速購入する。26.95米ドルの本だが1万1000ウォン(約2200円)だという。日本だと6000円は下らないはずだが,円ドル換算レートよりも安いという不思議。逆に日本の雑誌は単純換算の約4割増しと高めだ。
 続いてMacintoshを置いている店があったので,価格を聞いてみる。MacintoshSEが約240万ウォン(約48万円)というのは日本よりも安いが,韓国では個人購入できる価格ではない。その点をたずねすると,店の主人は「NECがパソコン市場を独占すある日本でもMacintoshはその優秀さで売れているそうじゃないか。韓国でもいいものを欲しがる人はたくさんいるからね」と,どこかの国の輸入代理店と同じような答えを返してきた.ひょっとしたらこのような回答は,ディーラーのマニュアルに書いてあるのだろうか。

竜山電子商街
 竜山電子商街の存在は、三星電子ソウルオフィスの金さんに教えていただいた。こちらは最近できたばかりの電気街で,世運商街を少し小さくしたようなビルに入っている政府が膨らみすぎた世運商街からの移転を奨励して生まれたそうだ。場所は米軍の基地に近く,有名なショッピング街の梨泰院(イテウォン)と,ソウル市内を流れる漢江(ハンガン)に挟まれた地区金さんの話で梨泰院と同じく米軍関係の外国人客をあてこんで梨泰院の近くの竜山に電子商街を誘致したという。ここは地下鉄等の交通機関から離れているので、タクシーで行ってみよう。
 韓国語は日本語と文法が似ているので、行き先をハングルで伝える「竜山電子商街に行ってくだ「さい」は「ヨンサン チョンジャサンガ カジュセヨ」となる.なお,助詞の「に」は省略した。「カジュセヨ」が「行ってください」なので,「セウンサンガ(世運商街)カジュセヨ」などと応用できる。
 さて、タクシーから電子商街の赤いビルが見えてきた,3階建てビルの2階は世運商街同様に家電商が軒を連ね,3階に150軒近いコンピュータショップが入っている.
 こちらも世運商街同様IBMPC互換機が中心だが,コモドールのAmiga2000を置いている店もあある。気になる価格は300万ウォン(約60万円),AmigaCOLTというXT互換機も展示されており,こちらは90万ウォン(約18万円).
 また値段は不明だが,インテルの箱に入った数値演算チップ80287なども置いてある.
 またこちらでもソフトの類は少なく,ハングルDOS(MS-DOSのハングル版)を捜している旨を店員に伝えると,となり近所の店にも声をかけてくれたが,筆者所有のCGAで動くバージョンはついに見つからなかった(コラム参照)。



コラム
番外:ロッテデパート電気製品売場
 ロッテデパートは,観光ガイドには必ず載っているショッピングのメッカ電気製品のフロアにコンピュータがあると聞いたので,寄ってみた。並んでいたのはMSXとXT互換機だ.MSXは大宇のCPC-400で92万ウォン(約18万円),XT互換機は金星のGMC-6510で約110万ウォン(約22万円)。ここではSEK'89で紹介したDECOMのデータベースサービスKETELの株式市況を実演している.韓国では最近株式投資に人気があり,韓国経済新聞の提供する株式市況は一般家庭にデータ通信を売り込む格好の材料となっているようだ。

結局このスクラップでは韓国の躍進について明確な理由は分からなかった。今後のスクラップで分かるかもしれない。
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ジョブスのNeXT Computer(月刊ASCII 1989年9月号5) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ジョブスのNeXT Computer Systemの徹底レポートがあった。
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ジョブスの作るコンピュータは皆オシャレだった。しかし、Apple IIは売れたが、Lisaは売れなかった。Macは売れたがこのNeXTは売れなかった。売れなかったマシンは両方とも性能が良すぎて価格が高かった。安物を作らねば大衆には支持されないということだ。

売れなかったがために知らないことが多いのでNeXTはスクラップする価値があると思う。
発表から1年、日本でもついに販売開始

 9月から,キヤノン(株)がいよいよNeXT Computer System(以下,NeXTマシンと略)の販売を開始する.アジア地域での販売に関してNeXT社と提携してから2ヵ月,米国での発表から実に1年近くが経過して,やっと実機が入手できるようになった。出荷は英語バージョンからだが、来年第3四半期には日本語のβバージョンを発表する予定だ。キヤノンはオペレーティングシステムなどのローカライズをすでに始めている.
 米国では,Businessland社が一般市場向けに販売を開始しており、売れ行きは好調だという.約20分で1台が完成するというフリーモントの製造ラインでは,生産が急ピッチで行なわれている。昼夜24時間体制で稼働したとしても,1日にわずか数百台しか生産できないNeXTマシンは,現時点で3000台程度が市場に出回っているにすぎない。一時は,注文してから最低で6週間以上も待たなければ入手できない状況が続いた。現在でも「待ち行列」は長くなる一方だという。編集部に到着したマシンのシリアル番号は2384.660MbytesのHDDユニットを内蔵している.
 本稿では,ハードウェアとソフトウェアの両面を,今月から2回にわたって徹底レポートする.Steven JobsがWozniakとともにApple社を設立して13年.我々にパーソナルコンピュータの素晴らしさを教えてくれた彼は,ワークステーションにどのような夢を託したのだろうか.

生産台数が「1日にわずか数百台」は逆に凄い。希少価値があるのでプレミアムが付くのではないかと思うほどだ。
本体

マグネシウム合金の匡体は頑丈そのもの

Jobsが乗っても壊れない?
 白地にNeXT社のロゴマークをあしらった梱包パッケージからNeXTマシン,17インチモノクロモニタ,レーザービームプリンタを取り出す(写真1).

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オシャレだ。それしか言葉が思い浮かばない。日本のパソコンのダサいこと(X68000を除く)。
 立方体の匡体は,マグネシウム合金のオールダイキャスト製。つや消しのブラックカラーは精悍な印象を与える(写真2).表面をコツコツとたたくと,がっしりとした金属製の音がする.プラスチック製の匡体に慣れたパーソナルコンピュータのユーザーには,威圧的ともいえるマスクだ。側面を一回りするように張り出した7枚の羽が,威圧感を助長している(写真3)。この羽は,CRTの側面やスタンドの背面にも配されている.

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 デザインは,JobsがMacintoshで初めて採用した西ドイツのフロッグデザイン社の手によるもの。同社の基本コンセプトである流麗なスリットが,フロントパネルのドライブ収納部分を覆っている.プラスチック製のロゴマークはレリーフ状に微妙な3次元処理が施され,引き締まった雰囲気の中に派手な演出を醸し出している.
 305mm角のキューブ形状は,人によって大きく見えたり,小さく見えたりとさまざま。事前に見ていると小さく感じ,初見では大きく感じる.どちらにしても,この中には,5.25インチフルハイトの大容量外部記憶装置2台,最大240Vを受けられる電源部,NuBus規格に準拠の4枚の大型基板がスッポリと収まる.
 重量は,光ディスクドライブ1台内蔵の最小構成で約13.1kg.それに660MbytesHDD1台を内蔵したフル装備で約16.8kg.数値上は重そうだが,持ち上げてみると意外にも軽く感じる。やはり,外観に威圧されているようだ。
 Steven Jobsは,NeXTマシンの第一の特徴に“頑丈”という点をあげている.その証明のために,マシンの上に乗ってピョンピョンと飛び跳ねながら「頑丈でしょう?」と語ったというエピソードもある。頑丈という点は,製品のすみずみに行き届いており、部品を吟味して使っていることがうかがわれる.匡体に合金を使用している効果は絶大で、その安定感は無言のうちに伝わってくるから不思議だ。オーナーは,最初にこの手触りと安定感を楽しむことになるだろう.ちなみに,熱による膨張/収縮で匡体が異音を発するようなことは一度もなかった。製品寿命が短いコンピュータ市場にあって,こうした頑丈さはマシン寿命の長さとオーバーラップする錯覚さえ与える.壊れやすいというイメージがつきまとうコンピュータの中では,傑出した作り方だ。
 オーナーが最初に悩むのは,多分,本体の設置場所だろう.フロアに置くには小さすぎるし,デスクトップでは威圧されて作業もままならない(慣れれば別だが).底面積はPC-9801クラスのマシンに比べて約30%も小さいから,デスクトップに置くのが最良かもしれない.ただし,一般的な弁当箱マシンのように,本体の上にCRTを置くという省スペース設置は不可能に近い。実際に置いてみるとニタ表示部はデスクトップから70cm近く上にきてしまう。目線のはるか上方だ。いくら座高がある諸氏でも,この高さは苦痛だろう.したがって,本体とモニタをピッタリと付けて設置した場合,約71cmの横幅スペースが必要になる。同様に奥行きは,約40cmほど必要だ。不細工なデザインなら話しは別だが,設置場所で悩むようなマシンはそう多くない。これもうれしい悩みといえるだろうか.

読んでいてワクワクするレビューだ。日電ほかのパソコンではこんな気持ちは味わえない(X68000を除く)。
ビス2本で主要ユニット は分解できる

付属の6角ドライバーで約5分
 何はさておき,本体を分解してみる.まず,梱包パッケージに付属の6角ドライバーを使って,本体背面の4隅にあるビスを回す。ビスは背面パネルに作り付けられており,これを緩めるだけでパネルは取り外せる。6角ドライバーは,光磁気(以後,MOと略)ドライブ用のディスクを緊急イジェクトするためにも用いる.
 背面パネルを取り外すと,中央に外部記憶部と電源部を収納したユニットが見える。その右側には,メイン基板が縦に差さり,さらにその右に1個と中央向かって左側に2個の合計3個の拡張スロットが口を開けている。つまり,メイン基板も拡張スロットに対応する基板の1枚ということになる.NeXTマシンは,オペレーティングシステムにMach(“マーク”と発音)を採用しているため,メイン基板を3枚追加してマルチCPUマシンとして動作させることも将来的には可能だ(詳細はJobsインタビューを参照)。もちろん,他の対応基板を差すこともできる。拡張スロットのバス規格は,当初,NuBusと伝えられていたが,バス形状がNuBusに準拠しているだけで,信号は独自規格になっている。このバスはNextBusと呼ぶ.
 メイン基板を抜いた後,先述の6角ドライバーを使って,本体と中央のユニット部を留めている2本のビスを外せば,各ユニットの基本的な分解は完了する。昨今のワークステーションは,SunMicrosystem社のSPARC Stationられるように,非常に効率的なユニット構成を採用している.NeXTマシンは,その最右翼にある1台だ。
 驚くべきことは,偉容を誇る匡体が3分割の構造になっている点だ(写真4).匡体内部の4隅には,奥行きの長さを持つ金属棒が渡されており、前面と背面の内側から匡体を締め上げている。この4本の金属棒の先端を6角ドライバーで緩めてビスを外すと,匡体は3個に分かれてしまう。もちろん,オーナーが3分割にできるメリットなど皆無に等しいわけで,これは単に製造上の構造として採用しているだけだ。マグネシウム合金ダイキャストの一体型ボディを作る製造方法やコストを考えれば,こちらのほうが理にかなっている.メーカーからすれば,驚くには値しないというよりも,やむを得ない解決法と見るのが妥当だろう.ただ,ドライブが発生する微振動に対しては,一体型よりも分割型のほうが共振に強い。オーナーにとっては,いろいろと驚くことが多いマシンだ。


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「何はさておき,本体を分解してみる.」そうだよね。パソコンを買ってまず内部のメインボードを見るのが楽しみだ。使う前に中のハードを見る楽しみはパソコンマニアならあるあるだ。
この記事は本当に読んでいて楽しい。同じ種類の人間として筆者に感情移入できるからだ。
 ちなみに,330/660MbytesのHDDは米国Maxtor社製,MOドライブはキヤノン製,電源部はソニー製である.Maxtor社製の大容量HDDは信頼性が高く,平均シーク時間も14.8msと高速だ.
 また、多少とも期待していた開発者たちのサインは,裏側のどこを探しても見あたらない.Macintoshの二番煎じはしないということか.

そういえばMacにはサインがあった。
FM-11,MSX,Mac(月刊ASCII 1984年4月号5)ASCII EXPRESS
でスクラップした。
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45個のチップで構成するメイン基板

目玉はICPと56001

 本誌昨年12月号の速報でレポートしたように,メイン基板は非常にシンプルなレイアウトになっている(基本スペックは表1を参照 略).JobsはAppleIIの開発時から,基板は美しいと感じるようなレイアウトであるべきだという独特の美意識を持っている.“The State of The Art"という彼の言葉は,匡体デザインではなく,実は基板デザインを指していることは意外に知られていない.Macintoshも美しい基板を与えられたマシンだが,NeXTマシンはそれ以上に整然とした美しさを持っている(写真5).

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この基板の美しさにこだわるのはマニア受けするところだ。
 メイン基板を構成するチップ数はわずかに45個(メインメモリを除く)。その多くはカスタムチップだ。主要なチップは5個.68030CPU(クロック周波数25MHz),68882コプロセッサ(同),56001DSP(Digital Signal Processor:クロック周波数25MHz),そして富士通製のカスタムチップであるICP(Integrated Channel Processor)とOSP(Optical Storage Processor)というプロセッサ群である。これらのうちハイライトは,56001DSPとICPの2個だ。
 56001DSPは,米国Motorola社が開発した88ピンCMOSタイプのプロセッサ.処理速度は10MIPS.高速モデムやイメ-ジ処理,音声認識/合成,高速ファクス/モデムなど,大量のマトリックス計算を高速処理するプログラマブルチップだ。その内部は,3つの実行ユニット(データ演算ロジック,アドレス生成,プログラム制御)から構成される.これらのユニットは平行処理が可能で、演算命令を含むすべての命令を2クロックサイクルで実行する.NeXTマシンでは,このスペックをもとにして,音声を8kHzのデジタルサンプリングでメール化できるNeXTメールなどを標準アプリケーションとしてバンドルしている.
 56001DSPは,他機種用にも拡張ボード製品として販売されている.しかし,価格は,Mac用で1500ドル以上と高く,対応する開発環境もまだ整備されていない.標準で搭載しているワークステーションは,もちろんNeXTマシンが初めてである.
 Mainframe on a chip(1個のチップに載ったメインフレーム)というニックネームが与えられたICPとOSPは,メインメモリにアクセスするI/Oチャネルのスループットを向上させるチャネル専用プロセッサである。各I/Oチャネルに対してI/Oプロセッサをレイアウトする手法は,メインフレームでは常識になっているし,パーソナルコンピュータでもDMA(Direct Memory Access)は珍しくない.しかし,ワークステーションでこれほど徹底してチップ化したのは,NeXTマシンが初めてだ。
 ICPは,12個のDMAチャネルを持っている.OSPは,このうちの2チャネルを使って外部記憶装置のデータ転送などを分担している(各チャネルの割り当ては表2を参照 略).ICPのスループットは32Mbytes/秒と高速.対象になるI/O機器はICPを介してメインメモリにアクセスすることで,処理能力を大幅に向上させている(図1 略).
 NeXTマシンの処理速度は5MIPS(1秒間に500万回の演算能力)と発表されている。この数値は,25MHzの68030を搭載した他のワークステーションと比べると同等のスピードだ。しかし、スループットは,他のワークステーションの平均値である20Mbytes/秒と比べると格段に速い。メインフレームが40Mbytes/秒程度とすると,ICPの威力も納得できる.ICPとOSPが要請される背景には,ソフトウェアの中核NextStepの処理が影響している.NextStepは,Mach上でほぼ完全なオブジェクト指向環境を提供するソフトウェア群だが,良好な動作速度はRISCチップでなければ得られないともいわれる.特に,画面処理を担当するウィンドウサーバや,I/Oチャネルのソフトウェア環境を設定するアプリケーションキットなどは,DisplayPostScriptを採用したことも手伝って、非常に高速な処理能力を要求される。こうしたソフトウェア側の事情が,ICPを必要としているわけだ。
 最新の汎用プロセッサと徹底したカスタムチップ化の組み合わせによって,NeXTマシンは高速処理を義務付けられたといっても過言ではない.しかし,Ver.0.9のオペレーティングシステムであるNeXTOS上でウィンドウサーバを動作させた印象は,68030ベースの他のワークステーション上のX-Windowに比べて速度が若干遅いという感じを否めない。Ver.0.8と比べても格段に速くなっているという印象はない.Ver.1.0の出荷に向けた最終のチューンナップがどの程度のスピードアップにつながるか,興味は尽きない。
 メイン基板に装備された外部I/Oは,全部で7個(写真6).上から,DSPポート(シリアルD-15ピン),RS-422ポート× 2(MacintoshコンパチのシリアルDIN8外部拡張用SCSIポート(D-25ピピン),LBP用ポート(D-9ピン),Thinwire Ethernetポート(IEEE802.3aコンパチ),モニタポート(D-19ピン)と並んでいる.このうち,DSPポートには56001DSP対応の各種計測機器やファクスなどが接続できる.


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ブートドライブとして見たMOドライブ

330/660MbytesHDDは不可欠か?

 ハードウェアで最も注目されるMOドライブは,NeXTマシンが標準装備している唯一の外部記憶装置(基本スペックとバンドルソフトは表3を参照 略),背面パネルを取り外すと,MOドライブがもう1台内蔵できるように接続用ケーブルが延長されており、その先端にはコネクタが宙に浮いている.ディジーチェーンで2台目のMOドライブが装着できるのは,フロントパネルのメディア挿入口が2個あることからも想像がつく。しかし,正式発表には盛り込まれていない。読み取り/書き込み/消去できるMOドライブだけを外部記憶として標準装備したワークステーションはNeXTが初めてだ。
 カタログスペックによると,平均シーク時間は,MOドライブの92msに比べて330/660MbytesHDDが14.8msと格段に速い。転送レートは,MOドライブの4.6Mbytes/秒に対して,両HDDは4.8Mbytes/秒とほぼ同じ数値。また,MOドライブ対応のブランクディスクを初期化してビルドするためには約3時間かかるのに対して,HDDは約1時間で終わる.
 次に,システムの起動時間を計測したところ,MOドライブの約2分30秒に対して,660MbytesHDDは約1分45秒だった。また,ログアウトしてから電源オフまでの時間は,MOドライブの約20秒に対して,660MbytesHDDは約12秒かかった.ちなみに,せいぜい20秒ほどで電源オフできるUNIXマシンは,そうざらにはない.驚異的な速度といってもいいだろう.さらに,標準バンドルのプログラミング環境であるInterface Builderの起動時間を計測した。結果は,MOドライブの約20秒に対して,660MbytesHDDは約10秒という数値を得た.シーク時間の差が歴然と表われた数値だが、実際に使用してみるとHDDは確実に速い。信頼性という点では文句なしにMOドライブだが,良好な使用環境という点ではHDDに軍配が上がる.資金に余裕があれば,HDD内蔵タイプの購入をすすめたい.NeXTマシンは,MOドライブとHDDの併用が可能だから,MOディスクのデータをHDDにそのままコピーして、通常はHDDから起動したほうがいいだろう.MOディスク(写真7)はあくまでバックアップ用途とメディア流通に限定するのが得策だ。ちょっと気になるのは,MOドライブの読み取り/書き込み/消去時に発生する音.耳に慣れていないせいだが,ガリガリ,ゴリゴリという音は,HDDが静かなだけに耳に残る.ちなみに,モーターや冷却ファンの回転音は非常に静かだ。


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MOドライブはPC-486GRで使っていたが、もちろんデータのコピーだった。ハードディスクに入りきらないデータをMOにコピーしていた。MOからブートするなんて使ってられないだろう。
17インチモノクロモニタはソニー製

6個の外部I/Oを装備

 MegaPixelと名付けられた17インチモノクロモニタは,ソニー製で,ブラウン管は東芝製を採用している(写真8).解像度は1120×832ドット(92dpi)で,1ドットあたり2bitの4階調表示(黒,白,グレイ2種類)を実現している.リフレッシュレートは68Hz(ノンインターレース)。サイズは408(W)×440(H)×354(D)mmで,重量は約23kg.

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 モニタ本体はプラスチック製だが,スタンド部分はマグネシウム合金を使っており,頑丈の一語に尽きる.スタンドの前面横に突き出た2本の足にはゴム製のキャップが付いており,モニタを前後左右に回すと,戦車のキャタピラのようにキャップが回転して移動性を高めている.また,モニタの上下角は,約±15度の幅で微調節が可能だ。
 背面には外部I/Oを6個装備している(写真9).右側から,モノラルマイク,キーボード,本体接続用,ラインアウト(左右),ミニヘッドホンの各端子が並んでいる.このうち,本体接続用コネクタは、電源ラインを始め各種の信号がまとめられており、本体とモニタは3mケーブル1本で接続される.また,金メッキを施されたラインアウト端子はステレオ出力に対応しており,16bit/44.1kHzのサンプリングレートを実現。このスペックは、CDのクオリティに相当するもの.もちろん56001DSPの使用を前提にしている.また,モノラルマイクはボイスメールなどに対応する入力用ライン.8bit/8kHzのサンプリングレートで音声入力ができる。この他に,モノラルスピーカも内蔵されている.


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 画面表示は4階調とは思えない美しさを実現している(写真10)すべてが立体的に見えるアイコンのデザインは秀逸で,視認性にも優れている.Macintoshの平面的なアイコンを見慣れた目には新鮮だ。このあたりのデザインは、追従する余地がない.

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Lisa,MacとともにNeXTもディスプレイはカラーではなかった。日本のパソコンのような色が付いたアニメ風のゲームはできないのがジョブスの作るパソコンだった。カラー化は必要だったと思うが、ジョブスはそう思わなかった。
2ボタンマウスとMacライクなキーボードは日本製

 キーボードは,ファンクションキーを装備しない85キー(写真11).サイズは,452(W)×33(H)×143(D)mmで,重量は1.25kg.一見するとMacintoshのキーボードに似ている。スペースキーの両横にあるCommandキーと,Z/X/C/Vの各キーの組み合わせは,それぞれUndo,Cut,Copy,Pasteという機能を実現する.また,Command+Wキーはウィンドウのクローズ,Command+QキーはQuit,Command+Pキーはプリントといった具合にMacintoshユーザーなら簡単にオペレーションできる.ただし,Commandキーが薬指の根本あたりに位置するため,ホームポジションでこれらの機能を実行するにはちょっと無理がある.また,キーボードの角度調節ができないため、机にベッタリと置いたままでキー入力をすることになる.

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 NeXTマシンは,電源のオン/オフをキーボードから実行する.本体,モニタ,LBPには電源スイッチがない。すべては,カーソルキーの上に位置するPowerキーで行なう.また,音量とモニタの明度も両隣の4個のキーで微調節するという,徹底した集中コントールを実現している.さらに,キーリピートの間隔もユーティリティプログラムのPreferencesで4段階に調節できる.
 2ボタンの光学式メカニカルマウスは,約170gという適度な重量(写真12)ユーティリティプログラムのPreferencesによって,左右どちらかのボタンをポップアップメニューの表示用ボタンとして使うことができる.キーボードと同様にマウスの移動スピードやクリックの応答速度は4段階に調節可能だ。マウスを使ったソフトウェアの起動は,基本的にダブルクリック方式を採用しているため,事実上はワンボタンマウスといえる.キーボードとマウスは,側面にゴム製のグリップがぐるりと張り巡らされており,保護対策と持ちやすさを考慮している。こまかい配慮だ。


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 キーボードはケーブルを介じてモニタの背面に接続し,マウスはキーボードの上側面に接続する.ちなみに,どちらも日本製である.

キヤノン製のエンジンを使ったLBP

解像度は400/300dpiが選択可能

 LBPは,キヤノン製のエンジンを搭載しており,300/400dpiの解像度をソフトウェアで切り替えられる.印刷速度は毎分8枚.対応する用紙はA4,レター,封筒の3種類。用紙カセットには150枚が収納できる.このクラスのLBPでは一般的なスペックだが,匡体サイズは363(W)×180(H)×423(D)mmと小さく,重量も17kgと軽い(写真13).

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 NeXTマシンは,システム全体にPostScriptを採用している.しかし,LBPにはPostScriptインタープリタを搭載していない.PostScriptが展開するページイメージは,すべて本体側で処理されてLBPに送られる。同様の方式は,IBM社がPS/2用のLBPに採用している.CPUやイメージ展開用メモリを搭載した処理ユニットを装備していないために,これだけの省スペース設計が可能になったわけだ.5年前3000ドルのMacintoshに7000ドルのLBPをサポートするという一大決心をしたJobsは,贅肉をそぎ落としたスリムなLBPを約3分の1の価格で製品化したことになる.

Jobsが考えたハードウェアは5年後に生き残っているか?

 米国の消息筋によると,NeXT社は上位機種として68040バージョンを計画しているが,将来的にはMotorola社のRISCチップ88000を4個使ったマシンを開発中だという.Ethernetチップも現行機種のカスタムゲートアレイから,AMDの32bitチップに差し替え,オプションのカラーボードにはTexas Instruments社の34020グラフィックプロセッサを検討している.VRAMは4Mbytesを実装して,1670万色同時表示を実現するらしい.そして,オペレーティングシステムはMach2.0を採用してマルチプロセッサをサポートするという.
 Jobsは,編集部のインタビューに応えて,「ソフトウェアは,15年間は使用に耐える」と断言している.また,「ユーザーにとっては,高速なハードウェアより充実したソフトウェアを提供するほうが大切だ」ともいう。彼は,AppleII,Macintoshの開発を通して,ハードウェアのスペック寿命がいかに短いか知った。それに対して,ソフトウェアは環境として整備されるに従い,寿命がどんどん伸びることも分かった.NeXTマシンは,NextStepというソフトウェア環境のプラットフォームでしかない,というのが彼の持論だ.NextStepの高い完成度は,それを納得させてしまう力がある.
 そうした持論があるにもかかわらず,しっかりしたハードウェア環境を構築したところに,Jobsのハードウェアメーカーとしての自負心がありそうだ。匡体をマグネシウム合金製にしたのは,このフォルムが同社の基底デザインになることを示唆している.そういう意味では,このデザインもソフト的発想に支えられている.ハードウェアは,前述のようにエポックとなるチップや技術を取り入れながら成長していくことだろう。その中核に位置するのが,ソフトウェア環境のNextStepであることは疑う余地がない.彼が,IBM社にNextStepをライセンス供与したことは,コア部分を一般市場に幅広く普及させたいという気持ちを如実に表わしている.
 ハードウェアを見る限り,NeXTマシンは,現在入手できる最もぜいたくな部品を取り入れているCISCマシンといって差し支えないだろう.オーナーは,ぜいたくな気分でプログラミングや文書作成などができるわけで,ステータスマシンとしての位置付けは完璧に近い.しかし,実作業で本当に使えるのか、そうした判断は別のレベルで語られるものだ.UNIXやMachという言葉さえ知らない人でも、十分に使えるマシンであることは確かだ。ところが,そうした人々のために環境を整備するプログラマにとっては,まだ画面の処理速度などチューンナップの余地は残されている.Jobsの“贈り物”は,これから正当な評価を受けることになる.文字通りの高性能ワークステーションなのだろうか.高等教育の現場で使えるマシンなのだろうか。種々の不安と期待が交錯する。来月号では,マシンの中核であるソフトウェア環境を中心に徹底リポートしよう.


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ジョブスのインタビュー記事をスクラップする。
 NeXTマシンの国内発表のために来日したSteven Jobsは,2500人の聴衆を前に1時間半にわたって熱弁を交えながらデモを繰り広げた.彼のカリスマ性は少しも衰えるところはなく、来場者の中には「Jobsが動いている」と興奮する声も翌日に行なったインタビューでは,NeXTマシンの展望を中心に話を聞いた.
編集部:NeXTマシンが発表されたばかりですが,次機種にはどのようなスペックを盛り込むのでしょうか?
Jobs:NeXTマシンにバンドルしたソフトウェアは,15年くらいの寿命がありますから,それに大きな変更を加える考えはありません.ハードウェアは、徐々に変わっていくでしょうね。私は,ハードウェアのスペックはあまり問題ではないと思っています。重要なのはソフトウェアの環境です。ハードウェアは少しずつ高速処理ができるよう手を加えていく計画ですが,バンドルしたソフトウェアには,生まれたばかりの技術が数多く盛り込まれています.デジタルライブラリやDisplayPostScriptなどがその例ですが,これらは少しずつ改善していくのに10年はかかるでしょう。まずは,ソフトウェア環境の整備が重要だと思います。
編集部:ソフトウェアを重視するきっかけになったのは,Macintoshの開発を通してですか?
Jobs:基本的には昔からソフトウェアを重視してきました。他のワークステーションメーカーは,多分,ハードウェア指向だと思いますが,NeXTはソフトウェア指向のメーカーです。デモンストレデーションでもお見せしたように,デジタルライブラリやサウンド,美しいグラフィックスなどが,マシンを購入してすぐに動作するようなワークステーションは他にありません。私がソフトウェアを重視している結果が,NeXTマシンという形になっているわけです.
編集部:NeXTマシンは'90年代のコンピュータという位地付けですが,今後のスケジュールは?
Jobs:カラーモニタなどを来年に発表します。続いて,サウンド関係も充実する予定ですし,もちろん高速マシンの研究もしています。ハード,ソフトの両面の開発で,私たちの'90年代は多忙を極めるでしょうね(笑い)。
編集部:PostScriptは,今後も業界標準として発展するでしょうか?
Jobs:Adobe社のJon Wornock博士に初めて会った日は,ちょうど彼がPostScriptを使って初めてプリントアウトに成功した日でした。それを見て非常に美しいと感じたことを覚えています。当時は,Apple社内でも同じような言語の開発を考えていましたが,PostScriptのほうが洗練されていたので,すぐに採用しました.DisplayPostScriptは,NeXT社が中心になって開発を進め,プリンタ関連はAdobe社が中心になって開発しています.PostScriptは,すでに世界的な標準規格になっています.IBM社や日本電気が採用しているし,Sun社も正式採用するようになるでしょう.
 PostScriptのような言語を作るのは大変な作業です.コンパチ言語メーカーのように全体の90%までは何とか作れますが、残りの10%がなかなか作れません。実際に製品として比較した場合,PostScriptと同等の機能を実現する言語は,一つも発表されていないのが現状です.今後は,他のメーカーもPostScriptを採使用していくことでしょう.
編集部:オペレーティングシステムにMachを採用したのはなぜですか?
Jobs:UNIXは,もともと,とてもパワフルでコンパクトなオペレーティングシステムだったのです.しかし,各種の機能を盛り込もうとして,カーネル部分はどんどん大きくなってしまいました。そのため,新しい機能を追加しようとすると,経験を積んだプログラマでなければカーネル部分は触れなくなってしまいました.これは危険なことです.'90年代に向けて、今後も新しい機能を追加し続けていくと,システムはどんどん大きく,複雑になっていくばかりです。それに比べて,Machは「デスクトップUNIX」と表現できるような,コンパクトで美しいカーネルを持っているし,高速のインタープロセスコミュニケーションを実現しています。通常のUNIXに比べて10倍という速さです.それに,マルチプロセッサ対応としては,最も完成されたデザインになっています.Machを選択したのは当然です.
編集部:Machはマルチプロセッサ環境をサポートしていますが,NeXTマシンにメイン基板を3枚追加して,マルチプロセッサマシンにする計画はありますか?
Jobs:もちろん.現在でも、3枚のメイン基板を追加してマルチプロセッサマシンとして使えるようになっていますが、ソフトウェアがまだ完成していません。多分、来年には発表できるでしょう.
編集部:MO(光磁気)ドライブは,ISO規格と互換性がないといわれていますが?
Jobs:互換性があるかどうかは分かりませんが,標準装備で製品化しているのはNeXTマシンしかないわけです.私たちが業界標準を作っているようなものですよ.Macintoshも最初に規格があって作ったわけではないし,IBMPCだってそうでしょう?製品が市場に出回ってから標準ができるんですよ.すでに販売しているという実績は,何よりも強い規格だと思います。
編集部MOドライブの未来はどうでしょうか。シーク時間が遅いようですが?
Jobs:われわれもまだ遅いと思います。少しずつでもいいから高速化していくつもりです。
編集部:同じようなメディアとして,CD-ROMの将来性はどうでしょうか?
Jobs:CD-ROMは死んでいると思いますよ。アメリカでは成功していません。Microsoft社がメディアを製品化していますが、誰も買っていませんよ.機構的にも遅いし,データ転送速度も遅いし、使いものにならないでしょうね。
編集部:最後に,AppleIIで育った読者に一言お願いします.
Jobs:昨今の業界内では,コンピュータの成長は足踏みしているといわれますが,コンピュータの歴史はまだまだ短いのです。始まったばかりだといっても過言ではないでしょう。美しいカラーグラフィックスやサウンドのハンドリングがやっとできるようになってきたのです。技術的な成長は,今後も著しいものがあるでしょう.だから,もうこれで終わりだ,などという技術は1つもありません。これから5年間で,コンピュータ業界はすばらしい進歩を遂げるでしょう。特に,パワフルなソフトウェアが続々と登場します.私たちは,パイオニアなのだという意識を持って進みます。あなたたちもそういう意識を持ち続けてください.


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ジョブスの考えの一端が見て取れた。NeXTがMOを採用したことに影響され、私もMOが出たらMOを使うようになった。
ただ、「CD-ROMは死んでいると思いますよ」はジョブスでも間違うことがあるのかと、いやジョブスはLisaをはじめ何回も間違えてきた。

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MacIIcx,リムーバブルHDD,AtariSTACY他(月刊ASCII 1989年9月号4) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

PRODUCT SHOWCASE 他の記事をスクラップする。

Macintosh II cxの写真をスクラップする。Appleはスタイリッシュで写真を見ているだけで楽しい。
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ASCII1989(09)e02MacIIcx写真1_W520.jpg
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分解写真があるのが面白い。
モニタが高い。21インチが39万9000円。

リムーバブルHDD
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CADDIEはカートリッジが透明なのが珍しい。

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POKEDYは裸族のお立ち台に似ている。クレードルスタイルの元祖とあるが、元祖じゃないから。元祖は34年前に存在している。

私はリムーバブルHDDケースとしてOwltechのガチャポンダイレクトを愛用している。
過去の記事を再掲する。


MARSHAL MAL352U3RS3 で飛んだHDDのデータ再構築(2)
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左から
Owltechのガチャポンダイレクト。これは何個も買ってそれぞれの機体に装着している。ガチャポンダイレクトはキーを回すとロックされ、給電される。キーを解除すると電源が入らないためHDDを装着したまま運用できる。1機体に何個もガチャポンダイレクトを装着して、必要なHDDだけを給電して使うという技が使える。

GroovyのHDD DOOR。ガチャポンダイレクトが無くなったのでこれを買った。ガチャポンダイレクトと違って、装着すると電源が入ってしまう。ロックを外すと扉が飛び出てHDDが外れてしまうのでガチャポンダイレクトのような運用はできない。

GroovyのHDD USBは裸のHDDを外付けUSBのHDDとして使える。SATAケーブル、電源ケーブルとACアダプタが付いている。電源ケーブルとACアダプタのみを使い、SATAケーブルを機体から引き回すと内蔵HDDと同様に使える。ガチャポンダイレクトが足りないときにSATAのHDDとして利用できて有用だった。

AV WORKSHOPにAtariのSTACYという面白いマシンがあったのでこれも写真をスクラップする。
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MS-DOSユーザーズ・ワークベンチからすらそうじ氏の漫画をスクラップする。
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ラップトップ,PC-9801lX5C,DynaBook他(月刊ASCII 1989年9月号3) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

この号の「特集 生まれ変わるラップトップコンピュータ」をスクラップする。
生まれ変わるとはカラー化と超軽量化だ。34年前のことだからこんなものだ。
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最初は概説的な記事だった。当時の状況が良く分かる。
ACT.1
小さくなければラップトップではない

昨年10月にアメリカで発表された日電のUltraLiteは,本体重量を2kgに抑えた本格的なブックサイズの携帯型16bitコンピュータである(写真1).

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 UltraLiteは,発表とほぼ同時に「フォーチュン」誌の“年間ベストヒット商品”に選ばれている。過去この栄誉に輝いたパーソナルコンピュータには,'83年のIBM PC jr,Lisa,'84年にはIBM PC/ATとMacintoshがそろって,そして,'86年のCOMPAQのDeskPro386がある.いずれも,市場を騒がせ,影響を与えた商品が名を連ねる.それほどに,このUltraLiteに寄せるユーザーの期待が大きかったということだ.
 UltraLiteの特徴は,名前が示すとおりのギリギリまで肉を落とした軽さとコンパクトさである.
 本体サイズは,298.5(W)×210.8(D)×35.6(H)mm,重量2kgと本当のA4判プックサイズのマシンといえる.また,フロッピーディスクドライブを持たず,ICカードによる外部メモリROMカードによってLotus1-2-3,Wordperfect,XywriteIII,Microsoft Worksなどが提供されるという点も注目された.
 ラップトップコンピュータの意味は、ご存じのように「膝の上に乗せて使える」コンピュータということである.しかし,実のところ、従来のマシンには6kgを超えるものも少なくなかった.というよりも,それがほとんどだったのだ。
 PC-98シリーズでいえば,軽いマシンの1つとしてPC-98LTがあるが,それでも3.9kgである.日電によれば,人間が持って歩ける重量は「1貫目」であろうという設定で作られたとのことだが,実際にPC-98LTを手で持って歩くのには骨が折れる.
 持って歩けるマシンといえば,かつてTandyから発売されていたTRS-80Model 100(PC-8201と同等のハードウェア)が重宝されていた.携帯して使えるサイズと重量の目安として引き合いに出されることもあるのだが,重量は1.8kgである.PC-98LTとTRS-80の間には,かなりの隔たりがあるといわざるをえない.
 TRS-80は,ワープロ,通信ソフト,BASICなどを内蔵した8bitマシンである。これでも実用的には,ある程度の仕事ができるはずだが,オフィスや自宅でIBM PCなどのデスクトップマシンを使っているのなら,同じ環境を持って出たいというのが人情だろう.
 UltraLiteは,このTRS-80に迫る重量を実現した,はじめての16bitマシンである.携帯して歩ける,あの快適な日々よもう1度というわけだ.

NECはなぜ日本版のUltraLiteを出さなかったのか。PC-98LTは除くのマシンでかつ重かった。これでは魅力がなかった。PC-9801との互換性を捨てたのならUltraLite並みのマシンを出さねばならなかった。
ACT.2
軽量ラップトップの2つの顔

 UltraLite以前にも,アメリカ市場では軽いマシンはあった.東芝のT1000(写真2)である.このマシンは,同社のTシリーズ(国内のJ-3100シリーズ)の末っ子的存在であり,フロッピーディスクドライブを1台内蔵しながらも,重量は2.9kgだ.TRS-80の1.5倍強の重量だが,それでも、従来のラップトップのことを考えれば画期的だった。

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 編集部を訪れた1人のアメリカ人が,鞄からT1000を取り出して見せてくれたことがある。彼は,「キャンディキャンディ」がフランスで作られていると信じて疑わないフランスの子供たちのように,得意気にT1000のことを我々に説明してくれるのだった。東芝が日本のメーカーであることを知らないはずはないのだが,なるほど魅力的なマシンである。
 しかし,UltraLiteの登場が持つ意味は,これとは別のものと見たほうがよいだろう.
 UltraLiteは,T1000よりも軽く,CPUパワーもあるが,それよりもむしろ,フロッピーディスクを本体に持たない,内部,外部メモリともにシリコンで固めた,フルシリコンのコンピュータであるという点だ.
 ICカードは,フロッピーとは比較にならないほど高価である.おまけに,この種のマシンでは,ハードRAMのバックアップ時間を長くすることやモデムを必須としているなどの点もあり,本体価格も高くなっているようだ(もちろん,それを抜きにしても価格の高い安いはある).しかし,それは現在のラップトップ環境にヒットした,新しいマシンの分野を切り開くものとして評価されたのではなかろうか。つまり,ラップトップコンピュータのユーザーが,この数年間に蓄積したノウハウや考え方の1つのスタイルを反映したものといえる。具体的にいえば,などである(図1略).
 もともと,携帯型,可搬型のコンピュータは,ポータブルターミナルの進化したものとして捉えることもできる。ネットワークへのアクセスもあるが,オフィスや自宅のデスクトップと何らかのデータの交換をする形になる.
 もちろん、出先で複数のフロッピーを入れ替えたいようなユーザーには,T1000のほうが好ましい。おまけに,T1000の場合,約800ドルという低価格で入手可能であり、その意味でも気軽に持ち歩ける.UltraLiteのほうは、使い慣れた3~4本のアプリケーションだけを出歩いて使うユーザーに向いていることになる.すでにデスクトップがあって,パーソナルコンピュータを使った自分の仕事のスタイルができあがっている人のためのものだ。
 ところで,ご存じのように日本でも,ちょうどT1000,UltraLiteに相当するマシンが発売された.東芝のJ-3100SSとセイコーエプソンのPC-286NOTEexecutiveである。前者は,T1000と同様の低価格,軽量マシン(ただし,内容は大幅にスープアップされており,エントリマシンとしても勧められる内容となっている)であり,後者は,9月中旬の発売予定だが,UltraLiteの98互換版をねらたマシンに仕上がるようだ.この2機種については,この後のページで詳しく紹介する.

T1000の日本版ともいえるJ-3100SSのユーザだった私は、アメリカ人の気持ちがよく分かる。DynaBookは鞄に入れて常に持ち歩きたくなるマシンだった。
ACT.3
デスクトップ環境をラップトップ型で

 小さくなければラップトップではないとはいうものの、現状では6kg~9kgという重量級のラップトップも,依然として人気がある.これらは,ラップトップというよりも,ラップトップとデスクトップの中間のトランスポータブル(可搬型)マシンとして受け入れられているわけだ。携帯して歩くというほどではないが,会社の中で自分の机から会議室へ,書斎から居間へ運ぶという程度の可搬性だ.
 このクラスのマシンになると,デスクトップマシンにできるだけ近い機能を期待したくなる。たとえば,
・ハードディスクの内蔵
・操作性(テンキーの装備など)
・拡張性(拡張スロットなど)
・カラー表示
などだ.
 このうち,ハードディスクは重量6kgを超えるマシンでは,ほとんどが内蔵可能か内蔵モデルを有するようになってきた(PC-9801LVは例外である)。また,操作性の点でもテンキーパッドがオプションで装着できるなどの配慮がなされている.
 拡張性については,デスクトップ用の拡張ボードを使用できるラップトップが登場してきており,人気を集めている現在、この種のマシンとしては,セイコーエプソンのPC-286/386LS,東芝のJ-3100GX,三洋のMBC-17LTJなどがある.サードパーティのものも含めた豊富なボード類がそのまま利用できるのは大きなメリットだ。
 これらは,いずれもラップトップとしては,超重量級である.普段は,デスクトップのつもりで使っていて,いざとなったら折り畳んだり,移動したりできるといったところだ。その意味では,省スペース,低消費電力の新しいスタイルのデスクトップと呼ぶこともできるものだ.
 これらのラップトップなら、普通の事務机で十分だが,デスクトップでは机の上をパソコンに占領されてしまう。また,視覚的な圧迫感もかなり違う。キーボード部分も含めた占有面積でいうと,ラップトップはデスクトップの約75%(PC-9801RXが2052cm,PC-286VFが2095cmに対して,PC-286LSは1529cm),消費電力は,ディスプレイも含めたデスクトップに対して約30%(PC-9801RX2が60W,PC-286VF-STDが35W,ディスプレイが約60Wに対して,PC-286LS-STDは30W)ほどだ.
 拡張性については,マイクロシステムズ(株)のTheBookが,重量2.5kgとブックサイズながらアプリケーションユニットに各種オプションを装着できる(写真3).100%ではないがJ-3100シリーズ互換機能を有する点でも面白い設定となっている.


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 UltraLiteと同じ時期にアメリカ市場で話題となったCOMPAQ SLT/286(写真4)も,なかなか興味深い内容のマシンである.

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 名前のとおり80C286(12MHz)を搭載し,20,または40Mbytes(平均アクセス時間29ms)のハードディスクを内蔵しながら3時間のバッテリ駆動が可能だ。しかも,折り畳めば34.3(W)×21.6(D)x10.5(H)mmとランチボックスサイズ,重量6.3kgとなっている。国産の80286搭載のラップトップが,いずれもバッテリ駆動ができず,しかも大きいことを考えるとなかなか魅力的なマシンといえる.
 そして,このマシンにはデスクトップ拡張ベースと呼ばれるオプションが用意されているのだ。これは、名前のとおりラップトップの基地ともいえる設定のもので,SLT/286をデスクトップ拡張べースに乗せることで,拡張スロットを備えた通常のデスクトップとして機能するようになる.
 さて,デスクトップに近い環境を実現するという意味では,カラー表示が期待されている.そして,カラー液晶ディスプレイを搭載したラップトップがいよいよ登場してきた.これは,現在のラップトップや可搬型マシンのみならず,デスクトップの領域をも含めたコンピュータやターミナルの形を一変させるものとなるだろう.カラー液晶ディスプレイについては,この後のPC-9801LX5Cの項にゆずるとしよう.

自分の事務机の上にパソコンを置けるようになるまではまだまだ先のことだった。職場にはパソコンラック又はデスクがありパソコンを使うときは事務机を離れて作業していた。また、電話が来ると机に戻らなければならず、電話が長くなる時はパソコンの使用待ちをしている人にパソコンを譲るために、ファイルを保存してから電話に戻るということもあった。今のようにパソコンがペンと紙のようになったのはいつからだったか。
ACT.4
ポケットに入る超軽量超小型マシン

 ラットップコンピュータは,ハイグレードなトランスポータブルから,現在のラップトップの後継ともいえるミッドレンジのマシン,そして,携帯できるものにもいくつかのタイプが出てくるようだ(図2略)。普及型のマシンは,ノート型ワープロに近い設定のものも登場してくるかもしれない.実際のところ,割り切った使い方をするならば、通信機能付きやMS-DOSへのファイル出力機能を持ったノート型ワープロは,パーソナルコンピュータユーザーのサブマシンとしても使えるものとなっている.
 さて,そのように多極化してきたラップトップコンピュータだが,「膝の上」のコンピュータから,「掌」のコンピュータが見え隠れし始めているようだ。この春から夏にかけて話題にのぼってきたもの,に,ラップトップよりもさらに小さいポケットコンピュータがある.
 それは,ポケットコンピュータといっても従来からあるいわゆるポケコンとは一線を画するものだ。後で紹介するAtario PortfolioやPoqet Computer社のTHE POQET PCといったポケットサイズのIBM PC互換マシンである.文字どおり大きめのポケットに入るサイズで,重量は500g前後とブックサイズのラップトップの比ではないコンパクトさなのである.
 これらは,集積化技術や実装技術,低消費電力関係の技術によるものだが,UltraLiteなどのラップトップマシンとの差異は,外部インターフェイスをさらに絞ってある点だろう.Portfolioを例にあげれば,オプションのハードと組み合わせることで,初めて通信が使用可能になる.プリント出力もオプションのハードと組み合わせて,はじめて行なえるというものだ。つまり、パーソナルコンピュータの心臓部と表示まわりだけを持ったマシンである.
 アメリカでは,シャープの電子手帳WizardやWordFinder Software社のPocket WordFinder(三洋の電辞林のようにパーソナルコンピュータ上のソフトウェアを専用ハードにした)が登場しているほか,Appleが,近く独仏語辞書付きの電子手帳を扱うとの説もある。Portfolioなども,電子手帳的な色合いが濃く、標準で簡単なエディタや表計算ソフトのほかに,住所録やスケジューラをROMで搭載している。これらデスクアクセサリ(?)ソフトと,IBMPC用の好みのソフトをインストールして使おうという環境だ。
 Poqet PCは,一説にはTexas Instru-mentsの単語学習機「Speak&Spell」の開発スタッフによるものといわれ,なんと乾電池で100時間の動作が可能であるという.Portfolioが40桁×8行しか表示できないのに対して,標準的な80桁×25行表示するスクリーンを持つ。なお、このPoqet Computer社には,富士通が46%を出資しているという.


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 電子手帳のようなものには興味がなかった。あくまでもパソコン並みの端末が欲しかった。それにつけても今のスマホは凄いというか凄すぎる端末だとこの記事をスクラップして再認識した。

日電のPC-9801LX5C
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大きいし、74万8000円は高い。
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日本電気パーソナルコンピュータ販売推進本部長の高山 由 氏のインタビュー記事をスクラップする。日電が考えていたことが分かるかもしれない。
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98シリーズ販売の陣頭指揮にあたる高山氏に,ラップトップの今後についてうかがった.
高山 現在,LT,LV,LX,LSの4つのモデルがありますが,合計で98シリーズ全体の13%弱といったところです。今までの経過を見ると,最初に出したLTが一番出てまして、現在の主力はLXですね.特にLX5,ハードディスク付きが多い.
 据え置き型というのは,人間が動いてパソコンの前に来て使うものですが,ふつう人は,日常的に動きながらも情報を処理する。活動の中でパソコンが使える環境というのが重要になる.そういう路線で軽量化を考えたのが,LTでした.当時の技術レベルだったら、あのへんが一番の軽量化だったわけです。
 その後、東芝さんがアメリカで,据え置きでの利用を主体とするラップトップという形で製品を出された.持ち歩くというより、むしろ省スペース,省エネマシンですね。アメリカでそれなりの位置を取り、日本でも話題になり、ああいうものがラップトップの主流みたいになった.
 しかし,私は,LTを最初に出したときから,LTの比率はパソコン全体のせいぜい10%から15%ぐらい、業界全体でも20%はいかないと言っていたんですよ.なぜかというと,98の世界で一番大事だったのは、「日本語」と「カラー」「フロッピ-」です.この3つの機能性をソフトメーカーさんが,うまく盛り込んでくれたんです.ところが,これまでのラップトップには「カラー」という要素が抜けているんです。 ―― それでは,これからはどういう方向に進むのですか
高山 1つは「カラー化」で,もう1つは手帳サイズも含めた「超軽量化」です. 最終的には,カラーで軽量化できればいいんですけどまだ技術的な問題があります。
 液晶がCRTの価格帯と同じになれば,現在のデスクトップの領域を凌駕するぐらいに普及すると思います.カラー液晶の美しさや鮮明度は,CRTと同等かそれ以上のものが出ています.あとは表示スピードですね.CRTと同等の性能になれば,省スペースと省エネの面でデスクトップよりも優れたものになります。
―― 現行の形のラップトップは無くなると?
高山 今のモノクロのラップトップは,先ほども言ったように,われわれが築いてきたデスクトップ環境の「カラー」の部分が欠けているわけですから,マイナス方向なんですよね。
 だから,当面は「カラー化」と「軽量化」の2方向に加えて,0.5だけ現在のラップトップが残るでしょう.そして,0.5の部分は,0.4,0.3と,だんだん小さくなります。カラーラップトップを安い値段で出せるのは数年先でしょうし,超軽量といっても,それなりの機能制限が出るでしょうから、従来型のラップトップも当分残ると思います。
 それぞれの方向性,すなわち今のラップトップを継承したものもやりますし、カラー化ももちろんやるし,超軽量化もやります.ただ,今の形態のラップトップは,われわれが築いたパソコンの利用環境から見ると、我慢して使っていただいていると思うんです。だから,カラー化への期待,超軽量化の期待が大きい.じゃあ待とうかという人が多いのではないでしょうか.
―― 手帳サイズの98もありうるのですか?
高山 今の、いわゆる電子手帳は,シャープさんやカシオさんが頑張っていらして売れていますが,電子手帳に直接データを入力するのは、手で書くよりも大変ですよ。紙の手帳を電子化するより、むしろ98と融合させる方向のほうがおもしろいですね。
 もちろん、電子手帳の研究はしております.うちがやるとしたら,98との連動が重要だと思っています.デスクトップ,携帯用ラップトップ,電子手帳タイプをれぞれどういう役割を持たせるか.そのへんを勉強しながら,パソコンビジネスのプラットホームの一つの展開として研究しています。
 たとえば,パーソナルデータベース。機動性を持ったデータベースですね.いうのは,情報があり余っていますから,デスクトップやラップトップで収集・整理して,電子手帳で持ち歩くとかね。入力機能としての電子手帳は難しいと思います。
―― カラーは近いのでしょうか
高山 ええ.ただ,あくまでも1番バッターっていう意味での出し方ですから,据え置き型と完全に代わるような機能までは持っていません。いずれはそうなっていくだろうと思いますが.
 でも,省スペース,低消費電力というのは大きな魅力だと思います.インテリジェントビルなんかができますと,今のデスクトップ型というのは大変なんですよ.たとえば,このビル,ワンフロアにパソコン何台置けます?30台置いたら電源がパンクですよ.
 低消費電力というのは重要なことだと思うんですよ.じゃあ,モノクロだけでいいかというと,それでは利用環境の後退です.だから,カラー化と低消費電力は重要だと思うんです.
―― 超軽量マシンはいつごろでしょう
高山 ブックサイズは,これは東芝さんも出したし,エプソンさんも出したのでうちも早く出さなきゃいけないでしょう。しかし、重要なのは価格です。
 ブックサイズのパソコンはワープロ感覚ですから,単にハードを出せばいいというものではない.私どもは、いつもソフトメーカーさんとの関係を考えています。
 ハードとソフトの価格バランス,全体としての値頃感なども、実際にマーケットを開拓していく上では非常に重要だと思っています。98の世界はソフトメーカーさんと一緒に築いてきたものですから,そのあたりを十分に考えて,製品を出していこうと思っています。

あまり有用なことは話してなかった。職場環境の未来のことについても普通の発言だった。

DynaBookは私が発売日に購入して使いこんだマシンだった。私の使用体験による考えとどう違うのか記事をスクラップする。
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 ラップトップユーザが思わず「待ってました」と声を出しそうなニューマシンが登場した。ラップトップで独自の地位を築く東芝のブック型コンピュータ,J-3100SSである。J-3100シリーズは,80386,80286CPUを搭載したハイグレードなマシンを中心に,企業ユーザーに人気が高いが,今回のSSは,16bitとしては破格の19万8000円という低価格であり,個人ユーザーをも狙った戦略的なマシンだ。
ラップトップユーザーではない私たちが「待ってました」というマシンだった。私は、Vzエディタを入れパソコン通信とjgawkを入れて使っていた。データを整形し、文字修飾して印字するときはMAXLINKを使ってPC-9801を使いDynabookを外部記憶装置として使っていた。知人は、一太郎を入れてスタンドアローンとして使っていた。
A4ファイルサイズ約2.7kg
 J-3100SSは,フロッピーディスクドライブを内蔵するものとしては,国内では,最初のブック型コンピュータである(写真1).
 本体サイズは,「A4ファイルサイズ」と表現されており,310(W)×254(D)×44(H)mm,A4判よりも奥行きが40mm程度長い.普通の靴なら,たいていスッポ入ってしまう大きさだ。厚さは,本号の厚さが約16mmであるから,これを2.75冊分の厚さということになる.これで,おおよその大きさがイメージできるだろう.従来のJ-3100シリーズ中の最下位モデルであるJ-3100SLよりも,2まわり以上小さく,まさにブック型コンピュータといった印象だ.
 ラップトップマシンとして気になる重量は,約2.7kgである.いわゆるノートワープロのカテゴリに入れてもよい範囲ではなかろうか。同社のノートワープロJW90Bは,313(W)×225(D)×40(H)mm,2.3kgだ。これでフロッピードライブが1台内蔵されており,エントリマシンとしても使える内容となっているというのだから、画期的といって差し支えないだろう.
 画期的といえば,20万円を切る低価格を実現している点も,まさに画期的というべきである.価格でもノートワープロの仲間入りをしそうだが,中身は,J-3100シリーズそのものである.J-3100シリーズは、もともと,同社が海外で発売しているIBM PC互換マシン(Tシリーズ)をベースに、独自に日本語モードを追加したものであるため,IBM PC用の豊富なソフトウェアも使える(別売の英語版MS-DOSが必要)
 日本語モード用のソフトウェアは,16/32bitでトップシェアのPC-9801シリーズほどの豊富さはないものの,一太郎,Lotus1-2-3,TheCARD,MIFESなどがインプリメントされている。ソフトウェア,ハードウェアに何があるかは,ショップで配布されている小冊子「ソフトウェア/ハードウェアダイジェスト」を見てみるのもよいだろう.また,J-3100SSの発売とほぼ同時に(株)クレオから、ワープロ,表計算,カード型データベース,通信,そしてスケジューラなどのデスクアクセサリを統合化したBUSICOMPOが発売された.4万円という低価格ながら,機能は充実しており,まさにJ-3100SSのためのソフトウェアといった感じだ(写真2).


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重量2.7kgだが予約購入特典のショルダーバッグにもなるズック製(?)の鞄に入れて移動する分には全く不満はなかった。また、定価が19万8000円はモニタ付きパソコンとしてはとにかく安かった。
モデム内蔵可能バッテリで2.5時間駆動
 J-3100SSは,CPUに80C86(9.57MHz),メインメモリは1.5Mbytesを標準装備する.このうち,MS-DOSのシステム領域となる640Kbytesを除いた空間は,ハードRAMと呼ばれる領域になり,ハードディスク的な使い方が可能になっている.
 表示部は,バックライトつきのSTN液晶で,青地に白文字の表示となる(反転も可能)薄暗い電車の中や、深夜のバス停など,ところかまわず引っ張り出せるはずだ。当然のことながらバッテリ駆動が可能で,バックライトにもかかわらず,動作時間は2.5時間(FDD10%使用時)となっている.
 キーレイアウトはほかのJ-3100シリーズとまったく同じで,ファンクションキーがスペースの都合で小さくなっている.薄い割にキータッチは配慮されている.
 背面には,RS-232C,外部FDD/プリンタ共用端子,拡張コネクタがある。拡張コネクタの形状や規格はほかのJ-3100シリーズと同等だが,本体内にカードを装着するスペースがないため,本体背面に端子が出ている(写真3).J-3100用の拡張カードなどを接続する場合は,本体から飛び出した形になるようだ。また,モデムを内蔵した場合のためのモジュラジャック用の穴がある。2400bpsのモデムが10月に発売予定とされている.モデム組み込み時のバッテリ駆動時間も気になるところだが,現在のところ明らかになっていない.


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私はバッテリの持ちを長くするためモデムは内蔵させなかった。乾電池で動くモバイルモデムを使っていた。バッテリは予備を買って2個持ちで使っていた。
知人は外付けの5インチFDDを買ってPC-9801へデータを持って行った。
 レジューム機能は素晴らしかった。それがなければ捨てていた。FDDからDOSを起動するともう起動ディスクは要らない、データ保存用のFDに入れ替えて使っていた。ハードRAMにはよく使うユーティリティソフトを置いていた。そうするとスィッチオンですぐに使える状態になり便利だった。
「バッテリがフル充電の状態で約1週間,ローバッテリの状態からは約12時間で消えてしまう。これは、いささか短いのではなかろうか。」とあるが何を言っているのか。ローバッテリになったら充電しろ。ああ、もしかするとニッカド電池のメモリ効果を心配しているのか?それならそう書けよと思う。
1週間実際に使ってみた
 システムには,日本語MS-DOS Ver.3.1,および日本語入力フロントプロセッサのATOKが標準で添付される.ATOK7の辞書はROM化されており,単独でDドライブを構成している.変換速度は,フロッピーディスクに辞書がある場合とは比べものにならないほど速い。なお,学習結果やユーザー登録語は,ファイルに記録される.
 J-3100用に現在販売されている一太郎は,Ver.3であるため,ATOK7では動作しない.そのため,J-3100SSのシステムディスクには,標準で“7TO5","5TO7"というコマンドが用意されており,これによってATOK7の辞書を使いながら一太郎を利用することもできるようになる.また,一太郎Ver.4の発売も予定されている.
 辞書がATOK7用であるのは,ほかの日本語入力フロントプロセッサを利用しているユーザーには,少々残念である。ROM辞書をVJE-βなどで利用できるようにするコマンドなども用意してほしいところだ。
 さて,約1週間にわたって,実際に触り,家と会社の間を往復してみた.使い心地は,J-3100SLに近いが,やはりサイズが小さく,軽い点が大きく印象を変える.約2.7kgという重量は,普段から携帯して歩くというほどの軽さではないが、必要だというときに,とくに意気込むことなく持って出かけられる.ちょっと分厚い資料でも持ったといった感じだ。 プログラムの実行速度は,V30(10MHz)よりも多少遅い程度の数値となるはずである.J-3100用の一太郎は,80286のJ-3100GTでもけっしてビキビ動くとはいえなかった.それが,80C86のSSになって,さぞのんびりしたスピードになるだろうと思って使ってみると,意外やあまり変わらない感触で使うことができた.これは,J-3100の日本語BIOSの特性によるものだろうか.
 MIFES Ver.4.0も使ってみた.カーソルの移動や画面スクロールは,PC-9801シリーズよりもかなり遅い。キーリピートなどの問題もあるが,標準の状態では3倍ほど遅い.ただし,これはクリティカルなホワイトスクロールや稲妻のようなカーソルのフットワークを期待するからであって,むしろPC-9801だけが特殊な文化を持っているというべきなのである.
 普段,80286や80386のマシンを使っているユーザーには、もたつく感触はあるが,ハードRAMを有効に使えば,そのもたつき感はかなり解消されるだろう.何といっても,パーソナルコンピュータならではのデータ処理機能や日本語環境を気軽に持って歩けるということを考えれば,スピードはそれほど気にならないはずだ。バランスの取れた,大きさと重さ,性能,価格.従来のパーソナルコンピュータのイメージを大きく変える1台であることは間違いない.

書いてある通り、遅くて使えないという感想にはならなかった。不思議な感覚だった。まあ、カラーじゃないしな当然かということもあったと思う。大体職場ではまだPC-9801VMが現役だった。
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コンピュータ営業推進部部長の伊藤 修 氏のインタビュー記事をスクラップする。
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31階にJ-3100関連のチームが集結するという,浜松町駅前にそびえる東芝ビルを訪ねた.
伊藤 J-3100を発売したのは1986年の10月ですが,この前年の暮れに,ヨーロッパでT1100というのを出したのが,その原型です.ラップトップという言葉は,翌年に出したT3100がイギリスなどで,そういう呼ばれ方をしたのが最初ではないでしょうか.Lotus1-2-3が動いて,ハードディスクも内蔵できるクラスのポータブルマシンを指したようです.
―― 現在の出荷台数はどれくらいですか.
伊藤 国内、国外合わせて,9月で100万台を超えます.
―― 今回のSSは,Jシリーズの中ではどのような位置付けで,また,どういう市場を狙って設計されたのでしょうか.
伊藤 この製品はラップトップの一部ではありますけれどもラップトップのコンセプトを拡張することで,新しいマーケットを同じくらいの規模で作れると思っています。台数ベースでいえば,単価が安いですからけた違いに伸びるのではないでしょうか.我々は,市場を作ることを常に心がけて今までやってきまして,この新しいブックコンピュータというマーケットも,自社製品がどうというより,どう大きくするかということを相当程度意識してやってきています.SSはまったく新しい,つまりポータビリティを最優先に,同時に個人ユースを狙って作っています。ユーザー層でいうと,ビジネスマンだけではなくて,ビジネスマンでもまだパソコンをあまり使えない人、あるいはたまに触っている人、会社にはあるけど自分では持っていない人.自分で買うほどそんなに必要ではないけれど本当はあったら便利だなと思っているような、そういう個人ですね.
 でも,小さかろう,安かろう.機能が低かろうというのでは,これは絶対受け入れられないということで,J-3100シリーズ互換にして,ソフトも使えるし、ビジネスユースに実用になる.PC/XTなど海外のソフトもちゃんと使えるとい うものにしました。

―― 値段もかなり衝撃的ではないでしょうか.
伊藤 ポータビリティと機能が揃っても.個人で買えるプライスでないとやっぱりだめだという認識がありました。これはいろいろな調査をしましてやっぱり20万を切るというのがマジックナンバーであるという結論になります。この機能なら25万30万で十分であるという意見も当然ありましたが.そうではなくて,つまり、価格もマシンのコンセプトの一部分なんです.
―― SSが狙っている市場というのは,いわゆるパーソナルワープロを使っていて、物足りなくなってきたユーザーを吸い上げようというのでは.
伊藤 それはあまり意識していません。パソコンユーザーはワープロユーザーとは違うと思いますし、パソコンユーザーのニーズを追究した結果がこれであると考えて作りました。
―― ラップトップでは、現在日本電気のUltraLiteのような,小型化をつきつめる方向と、カラー化という流れがあると思うのですが,これらについての東芝のラップトップの方向はどうでしょうか.
伊藤 世界的な視点から見て、事実上の標準というのは3.5インチFDD内蔵のIBM PCだと思います。我々は市場が望むものを提供するというのが基本的な立場ですから、別のメディアを使えばもっと小さくできるからといって,それを今すぐ作ろうとは考えません.カラー化については,すでに3種類試作機を出しています。製品化については価格と品質の釣り合いもありますし、もう少し市場の動向を見ながら考えたいと思っています。
―― どうも有難うございました.
インタビュアーがちょっとピンボケしている。一般ユーザのことを知らない。ワープロユーザのことを知らない。デスクトップを置換するラップトップが欲しいのではなく、一部機能が低くても持ち運べるパソコン、移動先で使える端末が欲しかった。だからDynabookを望んでいた。インタビューを読んで19万8000円という価格はチャレンジングな価格だったんだということを思い出した。25万円ならダイナブックは買わなかった。

単語テーブルにダイナブックのことが書かれていたのでここにスクラップする。
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【ダイナブック】

 東芝から発売されたJ-3100SSには,「Dynabook」という愛称が付けられています.このDynabookという言葉,もとはといえば,現在AppleにいるAlan Kayという人が,10年以上前の論文で用いたものです。こういうふうにいうと,何やらとても難しいもののように思われるかもしれませんが,少しだけ詳しく,その由来を見てみることにしましょう。というのは,このDynabookという言葉には,「理想のパーソナルコンピュータはどうあるべきか」という意味が込められているからです.
 Alan Kayは,1966年,ユタ大学の大学院でFLEXというシステムのプロジェクトに参加しました.FLEXは,米国国防総省のARPA(Advanced Research Projects Agency)の資金援助を受けて開発が進められていたシステムで,視覚や聴覚で得ることができるもの,文章化された記録,絵やアニメーション,音楽などを自由に操作できることを目的としたものでした.
 当時のコンピュータの利用環境は,大型のコンピュータを何人もの人でタイムシェアリング(時間を細かく割って,見かけ上,複数の人がそれぞれコンピュータを占有する方式)して使うことが主流となっていましたが,このシステムは,各人が個人用の強力なコンピュータを持つことを目的としていました。これを説明するのに,「パーソナルコンピュータ」という言葉が初めて使われたのだといわれています.
 その後,彼は,XeroxのPalo Alto研究所というところに移り,FLEXの思想をさらに進めたシステムの開発に携わりました.それは,子供から大人まで誰もが使える,人間が知的な活動を行なうための器ともいうべきもの(Personal Dynamic Media)としてデザインされたものです.やがて,それをノート程度の大きさで実現することが,これに携わる人達の夢となりました。これを,Alan Kayは,「Dyanbook」と名付けたのです.
 Altoというコンピュータがこのプロジェクトで開発されました。彼らは,Altoを,「interim Dyanbook」(暫定的 なDynabook)と呼んでいます。
 この間の経緯は,彼の論文「Personal Dynamic Media」(Alan Kay and Adele Goldberg,IEEE Computer,March 1977)で詳しく紹介されています.
 XeroxのAltoは,高解像度のグラフィックスやポインティングデバイス,音楽の演奏機能などを備えていましたが,当時の価格で3万2000ドルと高価であったこともあり,2000台あまりしか出荷されませんでした.しかし,その後,Xeroxは,Altoの流れを汲む商用機Starを開発しました。この思想は,Appleに移り、Lisaを経て現在のMacintoshに受け継がれています。
 Macintoshに限らず,Altoのシステム環境は,現在のパーソナルコンピュータに多くのものを示しています。オブジェクト指向のプログラミング環境として注目されているSmalltalkも,Dynabookと人間の間の溝を埋めるツールとして開発されたものです.
 このように見てくると,「Dynabook」という言葉の前提として「Personal Dynamic Media」という考え方があり,それは,単に小さいノート程度のサイズのコンピュータを指すのではなく,記号や文字,あるいは絵や音などの情報を自由に扱う,ひいては人間の知識や情緒的な活動を増幅するソフトウェアをも含めたシステム全体を指すものであることが分かると思います.
 暫定的なDynabookから10年以上たち、WIMP(ウィンドウ,アイコン,マウス,ポインタ)を使ったGUI(グラフィックユーザーインターフェイス)や,アニメーションや音楽を扱うことも一般的になってきました.しかし,Dynabookが目指すところのPersonal Dynamic Mediaにまでは,少し距離があるといわざるをえないでしょう.
 ところで,東芝のJ-3100SS以外にもDynabookという名前を冠せたマシンが,アメリカで発表されました。会社名もズバリ「Dynabook Technologies社」から発売された「Dynabook286」です.名前のとおり80286(16MHz)を搭載しており,本体がいくつものユニットに分かれるというユニークな構成を持ったマシンです。本体にバッテリユニットと液晶ディスプレイを装着した標準的な構成で,重量約6.3kg,本体だけなら2.9kgになるとのことです。
 「Dynabook」は,パーソナルコンピュータの理想的を描いた1つの姿であり,今後ますます話題にのぼることが多くなるかもしれませんね。


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ダイナブックを使っているというのが嬉しかった。J-3100SSじゃ嬉しくない。この記事を読んでマシン名の由来がアラン・ケイのダイナブックだというのが分かりウキウキした。

エプソンのPC286NOTEexective
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スペック的には妥当なんだろうが458,000円は高すぎる。この性能でデスクトップより高いのはないわ。
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セイコーエプソン電子機器事業部副事業本部長の内藤 興人 氏のインタビュー記事をスクラップする。
PC-286シリーズを技術面で育ててきた氏にNOTEを含めた今後をうかがった.
―― PC-286L以降,発表会などではっきりとラップトップを中心にした軽薄短小路線を追求していきたいということをおっしゃってますが.
内藤 いまラップトップとしてLEとLSを出していますけど,LSが予想以上に大きいウエイトを占めています。デスクトップと同じように使えるというラインナップですね.デスクトップの場合ですと,私どもはプロユースのPC-386,PC-286Xといった機種,それからVシリーズ,あるいは3.5インチのUシリーズといった形でラインナップを作っています。それで,ラップトップの場合には,まずポータブルとしてLSを強化しようというイメージがありました。これが,予想どおり,あるいは予想以上に反響が大きい.LSは,ポータブルといっても拡張ボードを2枚まで使用できますから,デスクトップの代替として使うことができるわけです。
―― LEとLS,それにNOTEが加わったことになりますが.
内藤 ラップトップでは、先行して出したという経緯もありますから、そのラインナップを強化することが,われわれの重要な戦略の1つになっています。LSの中でもバリエーションを増やすということが,すでに進行中といった段階です.デスクトップと同じように使えるマシンというのはとくに日本のようにオフィスのスペースが狭いところでは,今後もさらに強化していくことになるでしょうね。そういった中には,カラー化も当然入ってきます。
―― J-3100SSのようなもの,3.5インチFDDがついて,一回り大きいんだけどぐっと安いというようなマンンも欲しいという声も強いと思うのですが.
内藤 当然,私どもにも,東芝さんのような携帯で98のソフトがそのまま走るマシンを作ってくださいという声はすぐあがってくるでしょうね。それに対して私どもは「いやもちろんそういうことは考えています」という話しかいまはできませんけど.
 ただ,J-3100SSの場合は,IBM PC/XT互換ですから,ハードウェア的には98で言えばPC-98LTなんですよ.LTは,23万8000円ですよね.あのクラスのものが,薄型になったということなんです.XTの場合ですとVRAMにしても32Kbytesですから.だからそれができないとかそういうことはないですけれど、要するに事情が異なるわけです。

―― J-3100SSとNOTEでは,目指しているものも違うと思いますが.
内藤 大きさ,重さもありますが、私どものものは本当に使えるソフトをバンドリングしていますからね。普通に使われる用途ならそれで十分,新たな投資をしなくてもできるようになっています。その意味でも.いままでにまったくなかった環境を提供しています。東芝さんの場合は,従来のラップトップにより近いですよね。それと、ワープロユーザーなどのマーケットを喚起するかもしれませんが.
 デスクトップと同じように使えるポータブル,そして,ヘビーユースのACコードのないところでも使える,あるいは停電対策,異常対策になるようなLEの延長のものや、NOTEのようなトゥルーラップトップですね.全体としては3系統に分かれてくるでしょう。ですからLEタイプ,LSタイプ,それからNOTEの範疇に属するもの。そういったものが,それぞれ技術の進化とともに中身も進化していくことになると思います。

とにかく価格が全てだったと思う。

まとめ部分をスクラップする。
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超軽量マシンの技術動向
 パーソナルコンピュータという言葉が初めて使われたのは,1968年のことだという。パーソナルコンピュータは,誰でもが使え、持って歩けるものと考えられ(377ページ「単語テーブル」参照(前記ダイナブックのスクラップ))。その意味で,持って歩くことのできないデスクトップマシンは,まだ未完成品であると見ることもできる.
 ラップトップ,拡張性や表示機能が制限される.それをカバーしようという方向が,PC-9801LX5Cによるカラー化や,PC-286/386LSによる拡張スロットの装備であるわけだ.しかし,別の部分,ポータビリティを高めることで,デスクトップとは違った形で理想のパーソナルコンピュータに近付けることもできるのではなかろうか.
 ラップトップマシン本来の方向である,小型軽量化の技術動向について見ていくことにしよう.
 外部記憶装置の小型化,あるいはICカードの採用などを別にすれば,まずあげられるのは,カスタムゲートアレイなどによる実装デバイス数の低減だ.最近のマシンでは,これは常識化してきているわけだが,ラップトップではさらに集積化をすすめる必要がある。従来のパーソナルコンピュータは,CPUとメモリを中心に,論理素子と周辺I/Oデバイス(プリンタ用の8255,シリアルI/O用の8250や8251など)を組み合わせて基板を構成していた.しかし,最近のラップトップでは,CPUやメモリを見つけることはできても個々のI/Oデバイスを発見することは難しい。1円切手程度の大きさの黒いゲートアレイと,それを4分の1に分割した程度の大きさのメモリがいくつか見られるだけである。これらのデバイスは表面実装パッケージといわれており、従来のDIP(デュアルインラインパッケージ)に対して実装面積と高さの上でかなりの小型化が達成されている.
 さらに,ポケットコンピュータのクラスでは,シリコンチップのまま基板に接着し,その段階でチップ間のボンディング(シリコン上の端子と金属の足の間を金属の線で接続する)を行なうものも出てきている。つまり、通常のICでは個別のチップ単位で,リード(ICの足)とチップ間のボンディグを行ない,その後セラミックやプラスチックで被う(モールドする)。そして、個々のデバイス間の電気的な接続は基板に実装した後にパターンを介して行なわれる.それが,この手法では,チップ間の電気的な接続を基板を介さずに行なうものであり、基板上でパターンの占める面積が不要になる.
 携帯型コンピュータでは,低消費電力も大きなテーマとなる.内部回路の消費電力を抑えるための手段として,Poqet Computer社のTHE POQET PCでは,画期的な技術が採用されているという.それは,BIOS化されているソフトウェアによるダイナミックな電源制御によるものである.THE POQET PCでは周辺装置とのインターフェイス用デバイスはCPUと密に結合したゲートアレイによって実現されている.アプリケーションがキーボードの入力待ちになると,その時点でのCPUのコンテキストが保存される.そして、実際にキーボードとのインターフェイスを制御するゲートアレイは,CPUその他の電源をOFFにしてしまうのである。RAMにはバックアップ用の微小な電流が供給され,液晶に対しても表示保持用のためだけの電流が与えられる.つまり,THE POQET PCがキー入力待ち状態に入っまた段階で,主に電力を消費するデバイスは、キーボード入力などの外部事象を監視するためのゲートアレイだけになるのである.THE POQET PCでは,キーボード以外にもさまざまな要因に対してこの省電力機構が実現されているという.
 パーソナルコンピュータの小型、軽量化は,とくにカスタムゲートアレイによる集積度の向上を中心に急速に進みつつある。外部記憶装置として何を採用するか,外部I/Fをどこまで持つか、あるいはキーボードや表示ディスプレイのサイズなどによって決まるようになりつつあるともいえる。このような背景で,どのようなマシンがデザインされるのか、これからが楽しみなところではなかろうか.


編集室からをスクラップする。
カラー液晶マシンの登場
▲今月号の特集でも詳しくレポートしたが,ここにきてラップトップの新製品発表が相次いでいる。そのポイントの1つは「超軽量」とでも呼ぶべき小型・軽量化への動き,そしてもう1つはカラー液晶の搭載である.
▲「超軽量」タイプのマシンが東芝,セイコーエプソンからそれぞれ発表されたことはすでにお伝えしたが,もう1つのポイントであるカラー液晶ラップトップコンピュータが日本電気から発売になった.8月号のスペシャルレポートで「見えてきたカラー液晶」という記事を作っているときには今年の秋口から暮れにかけての商品化を想定していたのだが,予想に反する速攻といっていいだろう.カラ一液晶ラップトップは春のビジネスショウで各社から参考出品されていたので,今後続々と製品化されることが予想される.
▲実際にカラー液晶搭載のラップトップに触れてみると,初めのうちこそさまざまなソフトを動作させたくなるが,慣れてくると,あたかもそれが当然のように感じられてくる.それもそのはずで,見方を変えればデスクトップでは普通のことがラップトップでも可能になっただけだと考えられるのである.
▲とはいえ,この「ただそれだけ」的なさりげなさがラップトップの普及に対して果たす役割は小さくないだろう.今まで,ラップトップといえばモノクロという印象が強かったが,カラー液晶技術がこのまま進歩すれば,いずれはラップトップもカラーが当たり前の時代がやって来るのではないかPC-9801LX5Cで採用された2層STN液晶も実用には十分であるが,TFT液晶のコストの問題が解決すれば,パソコンのディスプレイは液晶が当然という時代がやって来るかもしれない.
▲パーソナルコンピュータとは,その名が示すように、本来極めて個人的に利用できるコンピュータのことを指す。今月号から始めた「単語テーブル・わからない・わかった」のDynabookの項でも解説したが,それは小さいことが望ましく、また当然,カラー表示であってほしいのである.
(土田米一)

ディスプレイのカラー液晶化は予測というか予想どおりになったのだが何年も時間がかかった。ASCIIをスクラップしていくとカラー液晶生産技術の進歩が分かると思うので楽しみだ。

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業界の動向,パソコン,ワープロ他(月刊ASCII 1989年9月号2) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

ASCII EXPRESSの記事をスクラップする。

米国ハイテク産業の動向
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■Macintoshの新機種,発売間近
 8月のMacWorldExpoを控えて,Apple社の周辺が騒がしくなってきた.
 まずはラップトップMac.ラップトップバージョンのMacは,長い間その発表が期待されてきたが,現在に至るまで正式な発表はなされていない.しかし,最近の同社周辺の動きをまとめてみると,9月20,21日の両日にサンフランシスコ市内のユニバーサルアンフィシアターで予定されている同社のイベントで発表される気配が濃厚だ。つい最近までは,MacWorldExpoで発表されるものと予想されていたが,9月のこのショウまで延期されそうな雲行きである。
 業界では,このラップトップMacの重量は14~19ポンド(6.3~7.7kg)になるものとみており,その重さから,最近ではポータブルMacという呼び方が定着しつつある.価格は,2MbytesRAM,40MbytesHDDの構成で6500ドル程度になるものとみられている。
 もう1つの新機種は,クロック周波数25MHzの68030を搭載したMacIIci.マザーボード上に配置されたグラフィックスコントロール専用チップにより,従来の1/2/4/8bitビデオのすべてのモードでの表示が可能となっている.IIcxの上位機種に相当するこの高速バージョンのMacは,価格的にはIIcxよりも15%ほど高めになる。たとえば4MbytesRAM,80MbytesHDDを搭載したモデルの価格がだいたい8100ドル程度。ちなみに,IIcxは同様の構成で7000ドル程度である.MacIIciも,ポータブルMacと同様9月に発表される予定.
 その他、従来機種のマイナーチェンジとしては,1.44MbytesFDDを搭載したSEがある.価格は据え置かれる予定.これは多分MacWorldExpoで発表されると思われる.
 サードパーティによる高速アクセラレータボードの開発も盛んだ.33MHz/030アクセラレータボードを開発したDayStar社はMacWorldExpoで50MHz/030バージョンの出展を予定している.ボード上には32Kbytesのキャッシュメモリ(25ns)が載っており,IIcxに比べておよそ2~3倍の高速処理を実現する.
 また,同社は25MHz,40MHzの低価格バージョンも同時に開発.価格はII用,IIcx用とも,2395ドル(25MHz),4995ドル(40MHz),5995ドル(50MHz)の予定.

■Apple社,RISC搭載マシンを開発か?
 50MHzの68030が出てくると,CISCチップも来るところまで来た,といった感じがする。事実,50MHz/030が最後のCISCチップともいわれており,世の中の流れはRISCへと傾いている.すでにワークステーションの分野では,RISCチップを搭載したマシンが主流になりつつある.
 Apple社内で,RISCチップを用いたマシンの研究がすでに始まっているとしても不思議なことではない.その動きの1つとして,すでにApple社内ではRISCチップを搭載したQuickDrawアクセラレータの試作が完了したといわれている.Macでは,メインCPUである680X0がQuickDrawの処理を行なうため,CPUパワーのかなりの部分をウィンドウの表示やアイコンの処理などに費やさなければならなかった.QuickDrawが1bitの画面表示,すなわち白黒のみの表示を行なっているときはそれでまだよかったのだが,MacII以降8bitカラー(256色)が表示できるようになり、最近では32bit(24bitをカラー情報として扱う)表示さえできるようになるなど,CPUの負荷はますます大きくなってきている.
 QuickDrawアクセラレータは,この部分をすべて他のハードウェアで置き換えようというものだ。このボードにはAMD社のAMD2900(25MHz)が用いられているといわれている.QuickDrawをRISC搭載ボードで置き換えようとする同様の動きは,サードパーティにも存在する.Mac用カラービデオボードおよびディスプレイを開発/販売するRadius社のQuickColorがそれだ.同社によると,32bitQuickDrawの一部のファンクションをボード自身が行なうことにより,約6倍の高速処理が可能になるとしている.ボード上にあるカスタムRISCチップは,NuBusのブロック転送モードでVRAMへの読み書きを直接行なう.このボードはMacWorldExpoに出展される予定.価格は795ドル。
 2番目の動きは,Motorola社のRISCチップ88000をメインCPUとしてApple社の次世代システムを構築しようというもの。先頃Motorola社は,Apple社に対して20MHzおよび25MHzの88000の供給を開始した,と発表した.Apple社はこれに対し,88000をRISC研究用チップに選んだ点は認めているものの、「RISCマシンの研究は始まったばかりで,(将来的に)RISCベースのパーソナルコンピュータを発表するかどうかは未定」としている。同社でこの手の研究を行なっているATG(AdvancedTechnologyGroup)部門でも製品化にはさらに24ヵ月以上を要するとしており,現時点では研究の域を出ていないことを強調している.
 しかし,こうした一連の動きは,少なくともApple社がRISCチップに非常に興味を持っていることを示すものだ。またそのRISCチップがMotorola社の88000であることも明らかになってきている。RISCを搭載したMac,あるいはまったく新しいアーキテクチャのマシンが発表される日も意外と近いのかもしれない。
(ザイロンコーポレーション代表 脇山 弘敏)

予想が当たったか外れたかを検証したいのでスクラップしている。「50MHzの68030が出てくると,CISCチップも来るところまで来た,といった感じがする。事実,50MHz/030が最後のCISCチップともいわれており,世の中の流れはRISCへと傾いている.」これはこの後Pentiumのクロックがそれを越えていくから外れているはず。100MHz超えはいつだったかスクラップしている現在思い出せない。Pentiumの記事が出てくるのが楽しみ。

ウィンドウソフト裁判でAppleが逆転敗訴
ASCII1989(09)b16Apple逆転敗訴_W504.jpg

Appleがウィンドウ表示タイプのソフトはAppleのものだという争い。ソフトのアイデアに著作権があり他社は同類のソフトを出せないというのは違和感がある。
結局どうだったのか。
関連する過去のスクラップを再掲する。
業界・ソフト関係(月刊ASCII 1988年6月号5) 米国ハイテク産業の動向
■Apple社とMicrosoft社に見る米国著作権事情
 Apple社が,Microsoft社のWindows 2.03とHP社のNewWaveをMacintoshの著作権侵害だとして訴えを起こしたことは先月号で報じた。これに対してMicrosoft社は、Apple社の訴訟申請が同社の利益を損なったとして逆提訴した.Microsoft社によると,1985年の両社間の合意では,Windows1.0に対してApple社はすべての権利を放棄したはずだという.  今回の件に限らず,著作権や特許権をめぐる紛争は米国では日常茶飯事で,「奴らが訴えてきたら,こちらは別件で逆に訴えてやる」という動きが必ず出てくる.こうした訴訟の応酬は,一般ユーザーに対するアピールという側面が強い.したがって,訴訟が起きても法廷で最後まで争われることはごくまれで,途中で示談になるケースが非常に多い.今回のApple社の訴訟は,IBM PC/PS2へのWindows型ユーザーインターフェイスの浸透を少しでも遅らせることが目的であるといわれている.


米Apple社と米Adobe社の関係が決裂か?
ASCII1989(09)b16AppleとAdobe決裂_W501.jpg
AppleがPhotoshopとかのソフトではなくPostScriptへの依存度を減らそうとしていたのか。ただ、Appleのページ記述言語は結局どうなったのか。

横河HPと日本アポロコンピュータが11月に合併へ
ASCII1989(09)b02横河HPとアポロ合併_W520.jpg
アポロコンピュータはなじみがない。
合併で日本国内のワークステーションは35%(13万350台)となる。日本国内のワークステーションはこんなに少なかったのか。

米シリコンバレーの売り上げトップ企業は米HP社
ASCII1989(09)b16シリコンバレー売上トップ企業_W501.jpg
メモしておく。Apple Computerが40億7100万ドル。

AJが日本語版Macintosh II cxなどを発表
ASCII1989(09)b02AJがMacIIcx発表_W520.jpg
アップルジャパンをAJと略した記事をここで初めて見た。

カテナがCompaq社製80386AT互換機を販売
ASCII1989(09)b09カテナcompaq80386互換機販売_W520.jpg
カテナという会社の記事をここで初めて見た。

マイタックジャパンがPS/2互換機などを発売
ASCII1989(09)b09マイタックジャパンPS/2互換機_W520.jpg
マイタックジャパンという会社の記事をここで初めて見た。

日電,オフィスプロセッサに32bitラップトップを投入
ASCII1989(09)b10日電オフィス32bitラップトップ_W505.jpg
オフィスパソコンとかワークステーションではなくオフィスプロセッサというのをここで初めて見た。

理経,米E&S社のスーパーコンピュータを販売
ASCII1989(09)b06理経スパコン販売_W509.jpg
理経という会社の記事をここで初めて見た。

三菱,英文字認識できる光ニューロコンピュータを試作
ASCII1989(09)b12三菱光ニューロコンピュータ_W507.jpg
どこがどう凄いのか分からない。文字認識つまりOCRソフトに光ニューロコンピュータが必要だと思い開発したのかが分からない。
英文字のOCRの実現に「実用化には4,5年かかる」には少しびっくりした。OCRそれも日本語ではなく英文字についてもそんなに難しいことだったのか。スーパーコンピュータが出てくるというのもびっくり。34年前のスーパーコンピュータがそんなに能力が低かったのか。今のパソコン以下だったのか。

以下ワープロの記事を5件続ける。

ASCII1989(09)b07シャープワープロ_W520.jpg
書院WD-A330の価格は18万5000円。

シャープ,ワープロ書院シリーズに新機種を投入
ASCII1989(09)b14シャープワープロ_W507.jpg
書院WD-HL30の価格は19万8000円

リコーがプリンタを共有できる日本語ワープロを発売
ASCII1989(09)b07リコーワープロ_W520.jpg
L100の価格は23万8000円

松下が9インチCRT搭載の日本語ワープロを発売
ASCII1989(09)b07松下ワープロ_W520.jpg
FW-U1PRO151AIの価格は11万円

東芝が12インチCRT搭載の日本語ワープロを発売
ASCII1989(09)b07東芝ワープロ_W520.jpg
JW-230の価格は19万8000円
34年前日本語ワープロの新発売が続いていた。終わるのはいつかスクラップを続ける。

以下CPU,RAM等の記事をスクラップする。
日本電気が16bitMPU2種をサンプル出荷
ASCII1989(09)b05日電16bitMPU_W500.jpg
V40/50をベースにしたμPD70250,μPD70260。Vシリーズは好きだったが、パソコンにはV30しか主流になれなかった。

日本電気が16bitワンチップマイコン2種を開発
ASCII1989(09)b05日電16bitワンチップマイコン_W520.jpg
78K/IVファミリー。これは知らない。

米Motorola社,33MHzの88000RISCチップを発売
ASCII1989(09)b16米Motorola88000RISC_W511.jpg

三菱が4MbitSRAMモジュールを発売
ASCII1989(09)b05三菱4MbitSRAM_W520.jpg
MH51208TNA

富士通が256KbitECL RAMを発売
ASCII1989(09)b05富士通256KbitECLRAM_W520.jpg
MBM10C504

米IBM,4MbitDRAM採用のメモリカードを発売
ASCII1989(09)b16米IBM4MbitDRAMカード_W503.jpg

ハードディスク関係の記事をスクラップする。
アイテム,PC-9801EX2/ES2専用内蔵HDDを発売
ASCII1989(09)b06アイテム内蔵HDD発売_W507.jpg
40MbytesのHyperDisk E40Eが13万8000円。

アイテム,PC-9801R/VM用内蔵HDDを発売
ASCII1989(09)b08アイテック内蔵HDD_W506.jpg
PC-9801VXシリーズが無くPC-9801RA2/RX2/RL2/VM11用だった。
40MbytesのIT RH-40が14万8000円。

ロジテックが9800用のHDDとストリーマを発売
ASCII1989(09)b11ロジックHDDストリーマ_W520.jpg
80MbytesのHDDであるLHD-38VSが24万8000円

ランドコンピュータ,データ共有可能なHDDを発売
ASCII1989(09)b08ランドコンピュータデータ共有HDD_W505.jpg
LANが普及していなかった時代複数のパソコンで同時に使えるHDDの需要があった。

理経がMacintosh用リムーバブルHDDなどを発売
ASCII1989(09)b11理経Mac用リムーバブルHDD_W520.jpg
知らない会社の理経が発売。

ヤマハ,HDD用の高性能薄膜ヘッドを開発
ASCII1989(09)b06ヤマハHDD薄膜ヘッド_W503.jpg
HDDの大容量化はこういった技術の発達による。

キヤノンが光カードシステムを開発
ASCII1989(09)b11キヤノン光カードシステム_W520.jpg
目にしたことのない知らない製品だ。

トーキン,PC-9800/286用FDコンバータを発売
ASCII1989(09)b08トーキンFDコンバータ_W512.jpg
トーキンも知らない会社だ。このコンバータの意義が分からない。私達の間では外付け3.5インチドライブを買うのが普通だった。

シミュレーター画面を使ったコントローラシステムが発売
ASCII1989(09)b06シミュレーター画面VRゴーグル_W504.jpg
34年前すでにVR技術開発は始まっていた。

三洋電機,手書き漢字入力が可能な電子手帳を発売
ASCII1989(09)b10三洋電機手書電子手帳_W509.jpg
EN-1は128×64ドットのSTN液晶で価格は2万2800円。

米Motorola社,腕時計型ポケットベルを開発
ASCII1989(09)b12Motorola腕時計ポケベル_W502.jpg
後のApple Watchである。

米ウイルス事件容疑の学生ハッカーを起訴
ASCII1989(09)b16米ウイルス起訴_W503.jpg
国防総省のコンピュータをハックしたという大事件。今こんな事件が起きたらどうなるのだろうか。

ボイジャーによる海王星観測を日米共同で
ASCII1989(09)b14ボイジャー海王星日米共同_W501.jpg
このときまだボイジャーは海王星へ向けて飛行?中だった。

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パソコン広告(月刊ASCII 1989年9月号1) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

もう一度読み返し、スクラップする。

ASCII1989(09)表裏_W520.jpg
裏表紙はFM TOWNSだった。前号と同じだった。

表紙見返しの広告はこの年もNECが独占した。
ASCII1989(09)見開_W520.jpg
ラップトップだけの広告だった。それでも5機種もある。

この号も以下NECのパソコン広告が消え、代わりにプリンタの広告だった。
ASCII1989(09)a01PC-プリンタ_W520.jpg
ASCII1989(09)a02PC-プリンタ_W520.jpg

ASCII1989(09)a03モデム小沢なつき_W520.jpg
NECのモデムの広告。前号で小沢なつきが消えたが、この号で復活した。

ASCII1989(09)a04パーソナルシステム55_W520.jpg
右頁がIBMのパーソナルシステム/55とOS/2の広告。

ASCII1989(09)a05X6800_W520.jpg
X68000は前号の使いまわし。

ASCII1989(09)a06PanacomM_W520.jpg
PanacomMは前号の使いまわし。

ASCII1989(09)a07AMIGA_W520.jpg
左頁がコモドール社Amigaの広告。
AMIGA500 CPU 68000, FDD 1, RAM 512KB, 価格 129,800円
AMIGA2000(TYPE A) CPU 68000, FDD 1, RAM 1MB, 価格 269,800円
AMIGA2000(TYPE B) CPU 68000, FDD 1, HDD 20MB, RAM 1MB, 価格 409,400円
AMIGA2500 CPU 68020, FDD 1, HDD 40MB, RAM 3MB, 価格 699,800円
思いのほか高い。

ASCII1989(09)a08Apple_W520.jpg
左頁がAppleの広告。前号の使いまわし。

ASCII1989(09)a09TOWNS_W520.jpg
ASCII1989(09)a10TOWNS_W520.jpg
TOWNSは前号の使いまわし。

ASCII1989(09)a11TOWNS_W520.jpg
TOWNSのソフト募集広告

ASCII1989(09)a12FM77AV40SX_W520.jpg
南野陽子の富士通FF77AV40SXは前号の使いまわし。

ASCII1989(09)a13FMR_W520.jpg
富士通のFMRは前号の使いまわし。
OS/2の時代は来なかった。

ASCII1989(09)a14エプソン_W520.jpg
エプソンのラップトップは前号の使いまわし。

ASCII1989(09)a15PC-286VF_W520.jpg
PC-286VFは前号の使いまわし。

以下キヤノンの広告が続く。
ASCII1989(09)a15LASERSHOT_W520.jpg
LASER SHOT

ASCII1989(09)a16NAVI_W520.jpg
NAVIは前号の使いまわし

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Macはアップルとキヤノンの共同広告は前号の使いまわし。

ASCII1989(09)a18AXi_W520.jpg
キヤノンのAXマシン。AXiは前号の使いまわし。

ASCII1989(09)a19Bubble-Jet_W520.jpg
キヤノンのバブルジェットプリンタの広告は前号の使いまわし。

ASCII1989(09)a20QuaterL_W520.jpg
SONYのQuaterL「買うたれ」の広告は前号の使いまわし。

ASCII1989(09)a21NEWS_W520.jpg
SONYのNEWS

ASCII1989(09)a22NEWS_W520.jpg
SONYのNEWS

ASCII1989(09)a23LUNA_W520.jpg
OMRONのLUNA

ASCII1989(09)a24DynaBook_W520.jpg
東芝のDynaBook

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日立のB32GX

ASCII1989(09)a26エクセル_W520.jpg
エクセルの広告

ASCII1989(09)a27一太郎_W520.jpg
一太郎の広告

ASCII1989(09)a28花子_W520.jpg
花子の広告

ASCII1989(09)a29ジャストシステム_W520.jpg
ジャストシステムの広告

ASCII1989(09)a30オーシャノグラフィ_W520.jpg
左頁がオーシャノグラフィの広告。以下漫画部分をスクラップする。
ASCII1989(09)a30オーシャノグラフィ漫画1_W492.jpg
ASCII1989(09)a30オーシャノグラフィ漫画2_W520.jpg
ASCII1989(09)a30オーシャノグラフィ漫画3_W520.jpg
ASCII1989(09)a30オーシャノグラフィ漫画4_W511.jpg
ASCII1989(09)a30オーシャノグラフィ漫画5_W284.jpg
ASCII1989(09)a30オーシャノグラフィ漫画6_W339.jpg

ASCII1989(09)a31ツクモ_W520.jpg
ツクモ電機の広告。パソコンショップでASCIIのカラーページに広告を掲載しているのはツクモだけだった。

ASCII1989(09)a50FUJIFILM_W260.jpg
裏表紙裏はFUJI FILMのフロッピーディスクの広告。前号の使いまわし。

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カラー液晶(月刊ASCII 1989年8月号7) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

特別レポート「見えてきたカラー液晶」液晶表示デバイスの歴史とカラー化技術
をスクラップする。
ASCII1989(08)f01特別カラー液晶_W520.jpg
ASCIIはこうした先端技術の特集記事が読み応えあった。

液晶表示デバイスの歴史は1888年にさかのぼる
 液晶が表示デバイスとして我々の身近に登場したのは,1970年代中頃のことだ。当時の液晶表示装置といえば,電卓やデジタル時計に採用された,いわゆる「セグメント方式」と呼ばれるもので,数字しか表現できなかった.
植物学者が液晶を発見
 液晶そのものの発見は,1888年にさかのぼる。オーストリアの植物学者ライニッツァが,液体と固体の中間の性質を示す脂質を植物細胞の中から発見したのが最初である.この物質は,液体のように流動性を持つにもかかわらず,その中で分子が規則正しく並ぶ結晶状態にあるこ「とから,「液晶」と名付けられた。1964年になって,米国のハイルマイヤーらにより,この液晶物質が偏光した光の方向を曲げることが明らかにされ,なおかつ,その特性が電圧をかけることで消滅することも発見された.
 この偏光方向を曲げる性質と,偏光板を組み合わせることで,電圧のオン/オフによって光の透過を制御できることが分かった。電気的な操作で光の通過/不通過を制御する「光スイッチ効果」こそが,液晶を表示デバイスとして実用化せしめた技術なのである.

数字・文字から画像へ
 1974年頃になって,表示デバイスに液晶を使った各種製品が登場する。時計や電卓に使用されたTN(Twisted Nematic)液晶(棒状の液晶分子を90度ねじるように配置し,電圧をかけた時に光を通過させる方式)は,数字しか表示できなかった7セグメント液晶素子から,関数電卓などに使われている,英文字・カタカナ・数記号が表示可能な,5×7ドットマトリクス液晶へと発展していく.
 1980年代に入って、光のオン/オフ反応の高速化や表示画素の小型化,液晶パネルの大型化が促進され,文字・数記号だけでなくグラフィックスが表現できるTN液晶や,STN(Super Twisted Nematic)液晶が開発され,モノクロTV,日本語ワードプロセッサなどの製品が登場するようになる.

アクティブマトリクス方式の誕生
 RGBのカラーフィルタをこのTN/STN液晶に付加して,カラー化を実現した小型カラーテレビが,1980年代半ばに 登場する.
 同時期に,テレビディスプレイ用として,より鮮明でより反応性のよい液晶方式が実用化された。これが,TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)液晶やMIM(Metal Insulator Metal)液晶に代表される「アクティブマトリクス駆動方式」の液晶である。アクティブマトリクス液晶を使った小型カラー液晶テレビは,画質という点では,TN/STN液晶をはるかに凌いでいる.
 一方,OA機器におけるカラー液晶は,昨年秋にセイコーエプソンがカラー液晶を搭載したラップトップコンピュータを発表したのが最初である.これは,PC-286LEの表示部にMIM液晶を搭載したものであった。
 その直後に,日立製作所がPC/AT互換ラップトップに6.3インチのTFTカラ一液晶を搭載し発売する,との発表をした.同ラップトップは,今夏からヨーロッパで販売を開始する.
 ここ数年で,液晶をめぐる技術は格段の進歩をとげた。画像の高品質化,パネルの大型化,反応速度の高速化,これら3つの液晶基本技術に加え,カラーフィルタの蒸着/染色技術の進歩が,カラー液晶を搭載したマシンの基礎となっている.
 次章からは,コンピュータの表示デバイスとしては,最有力候補と考えられている2種類の液晶,「単純マトリクス方式の2層STN液晶」,「アクティブマトリクス方式のTFT液晶」を比較しながら,残る問題点についても見ていくことにする。


ASCII1989(08)f02特別カラー液晶図_W520.jpg
ただただ懐かしい。
そういえば7セグメントで無理やりアルファベットを表していた日立のH68/TRというトレーニングキットのシングルボードマイコンがあった。
H68/TR
どんな表示だったか画像がない。似たものが
黄色 LED デジタル数とアルファベット記号セット グラフィック アイデア デザイン コンセプトの黒い背景に 7 セグメント型の - イラスト素材
にあった。16進文字は同じだと思うが、他は似てるだけで多分違うだろう。

液晶表示の原理は「光のスイッチ」
 カラー液晶について解説する前に,基礎技術である白黒液晶技術についてまず見ることにしよう.
 液晶を使った表示デバイス技術を理解するためには,光の偏光についても知る必要がある.電磁波である光は,波の性質を持つことが知られている.自然界一般にあふれる光(可視光,その他)は,あらゆる振動方向を持つ光で構成されているが,偏光とは,その方向が水平方向や垂直方向など一定の方向に偏った光のことである.電圧をかけない状態のネマティック液晶物質(表1)は,この偏光をねじ曲げる性質を持っている(図1)。この液晶物質に,一定の電圧をかけると分子の方向が電気的にそろえられ,偏光をねじ曲げることなく通過させるようになる(図2)。液晶分子の電気的特性と,光の波長以下の非常に細いスリットを持つ偏光板を組み合わせることで,電気的なオン/オフが,光を通したり通さなかったりする光のスイッチに置き換えられるわけだ.
 この1個1個の光の点滅を,平面上に展開したものが,液晶を使った表示デバイスなのである.

 
表1 液晶物質の種類と特徴
種類 性質 主な用途
ネマティック 分子配列の規則性が最も低く,流動性に富む.
電圧によって分子配列が変化.
各種の電圧制御の表示デバイス
コレステリック ネマティック液晶の分子の長軸方向がラセン状にねじれている。
温度によって分子配列が変化.
液晶温度計,乾電池チェッカ
スメクティック 配列の規則性が最も高い.流動性は低く,グリース状.
強電界,磁界で分子配列が変化。
強誘電性の表示デバイス
液晶の性質を示す物質は約2000種類が知られているが,分子配列により3種類に分類される.表示デバイスに使用される液晶は,現在,国内外を含め4つの原料メーカーが十数種を生産し,デバイスメーカーは,各用途(反応性重視や,コントラスト重視など)に対応した数種類をブレンドして使っている。そのブレンド比はメーカーによって異なる.

ASCII1989(08)f03特別カラー液晶図1_W519.jpg
図1 電圧をかけない状態の液晶.非電圧状態の液晶では,分子の配列方向がねじれているため,偏光が曲げられる.

ASCII1989(08)f03特別カラー液晶図2_W516.jpg
図2 電圧をかけた状態の液晶.電圧をかけると,液晶分子が電流の方向にそろえられ,偏光はそのまま通過する.

大型化への壁

 初期の文字数記号のみが表示可能なマトリクス液晶モジュールでは,1文字のドット数はせいぜい5×7の35個であり液晶セル(白/黒に変化する最小単位)への電圧のかけ方も,個々に直接電極をつなぎ、駆動するだけでこと足りていた.
 しかし,グラフィックスが表示できる大型のマトリクス表示液晶の場合,画面のドット数は桁外れに大きくなる。たとえば,3インチ画面の小型液晶テレビの場合,画面のドット数(解像度)は400(W)×240(H)となり,9万6000個の液晶セルを電気的に制御しなくてはならない。また,パーソナルコンピュータなどOA機器向けの液晶デバイスでは,画面の解像度も640(W)×400(H)ドット(あるいは640×480ドット)となり,液晶セルの総数も30万個を超える.
 さらに,カラー液晶ともなれば,RGB各色に対応した液晶セルが必要になり,白黒液晶の3倍,100万個に近いセルを,正確に,かつ高速に駆動しなければならない.これが,大型カラー液晶デバイスを実現する際に,目の前に立ちはだかる壁になっている.

今でも解説を読むとよくもまあ液晶ディスプレイをここまで進化させたものだと思う。技術者という人たちの努力に尊敬の念を覚える。

2層STN液晶

技術的には確立、コスト面で有利
 縦方向と横方向に並んだ帯状の電極の間に液晶物質をはさみこみ,電圧をかけることで,液晶分子の配列を変化させるのが、「単純マトリクス(デューティ)」駆動方式と呼ばれるものだ.この方式は,縦軸方向と横軸方向に配列された数百本の電極に,電圧パルスの時間差(デューティ)を利用して,1本1本走査するように,各々の交点となるマトリクス部分に順番に電圧をかけていく(図3).
 この方式の欠点は,液晶セルの電極が独立していないため,電圧が干渉して隣の液晶セルまでが反応してしまうことだ。これは,液晶を高解像度にすればするほど起こりやすくなっていく.
 電卓や時計などに使用されているTN液晶は,この方式を採用したものだ。TN液晶よりも,液晶分子の配列ねじれ角をより大きくとって,コントラストを高めたのがSTN液晶である.液晶分子の配列角度を大きくしたことで,電圧を切った瞬間に起こる液晶分子の再配列に,より長い時間が必要となってしまった。これは,明暗反応速度の鈍化を意味する.また,液晶分子のねじれ角を垂直ではなく中途半端(220度または240度)に設定したため,光の干渉作用を招き,パネルの本来黒く表示されなければならない部分が,薄緑色や薄オレンジ色に染まってしまうという現象を引き起こしてしまった.
 このSTN液晶の着色現象を解消する目的で開発されたのが,「2層STN(2層STN方式の液晶については,開発各社によって,DST/DSTN(Doubole-STN),NTN(New-TN)など呼び名が異なる.)「液晶」である.
 2層STN液晶とは,STN液晶での全体着色を防止するため,まったく逆のねじれ角を持った補償用の液晶板と偏光板を,メインの液晶板の真上に重ねて配置したもので,光の干渉を互いに相殺して元に戻すことにより,ベース色の黒色化を実現している.
 しかし,よいところばかりというわけでもない。液晶を2枚重ねたため,デバイス自体が厚くなってしまう.また,1枚でさえ透過性の悪い液晶板をさらにもう1枚重ねるわけだから、全体に暗くなりコントラストが低下する。コントラストの問題については,後ろから光を当てる「バックライト方式」の採用によって解消されるのだが,その分,表示モジュールの薄型化,軽量化,低消費電力化を妨げている.
 つまり,2層STN液晶では,新たに視認性,小型化という問題が発生したのだ。


ASCII1989(08)f04特別カラー液晶図3_W520.jpg
図3 STNカラー液晶
 液晶シャッタの原理で、縦横の電極の交点上の液晶が,偏光に対し透明になったり不透明になったりする.カラー液晶の色付けが行なわれるのは最終的な段階で,RGBのカラーフィルタを通過した結果による.
 図では偏光のねじれ角を90度に表現してあるが,実際のSTN液晶では液晶分子のねじれ角を90度以上(220度もしくは240度)に調整してある.また,この図では,2層STN液晶の補償用液晶板は省略してある.

カラー化に際しての問題点

 さて,バックライト付きの2層STN液晶で,高コントラストの白黒2階調表示ができることは分かった.
 白黒液晶をカラー化するためには,RGBのカラーフィルタを液晶セルにかぶせる必要がある。このカラーフィルタは,染料で色付けされた有機物でできているのだが,カラーフィルタを作るのに最適な有機物は固定化していない.
 そして最大の問題点が,このカラーフィルタをガラス板と電極の間に蒸着するための技術だ。電極間の距離を均一に保たないと,液晶表示の濃度にムラが出てしまう。通常の白黒液晶の場合でも,大型化に伴いガラス表面を平らにするための精密加工などが必要になってきている.カラー液晶の場合は,ガラス板と電極との間に,カラーフィルタがはさまれることになる.カラーフィルタは,前にも述べたように有機物でできており,柔らかい物質である.電極間の距離を一定に保つのは,白黒液晶よりも非常に難しくなるわけだ。
 そのほかにも,液晶表示モジュールを薄くするために,電極間の距離を短くすることなどが必要である.モジュール自体が厚いと、視野角が狭くなってしまうためだ。
 しかし,全体的に見れば,これらの技術はすでに確立されたものが多く,技術の精度を上げるということが今後の課題となっているのである。

階調表示は?

 今のところ,2層STN液晶では8色表示が主流である.8色というのは,RGBのオン/オフによるデジタルRGB表示だ.64色とか256色といった多色表示をするためには,RGBそれぞれを階調表示しなければならない。白黒液晶では,8階調あるいは16階調表示が実用化されているが(図4),カラーの場合、その精度がより厳密に要求される.また,カラーで階調を表現するためには,ドライバLSIやコントローラを新たに設計しなおす必要がある.
従来技術の利点と欠点を合わせ持つ

 STN液晶のカラー化技術は,格子状の電極など,電気的な制御部分が単純な半面,液晶分子のひねりを大きくしたり,カラーフィルタの蒸着技術が高度であったりと,液晶板そのものが複雑であるといえる.
 2層STNカラー液晶は,STN液晶の技術の精度を上げることによって実現したものだ。そのため、生産技術などの面では,技術が確立されており,比較的低コストでの生産が可能となっている.逆に,反応速度や視野角,ドット間の干渉などの欠点を有している.

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図4 2層STN液晶の階調表現
 2層STNの場合、階調表示は各電極の交点にかける電流の時間の長さの差を利用している.STN液晶では分子が電圧をかけられたと同時に反応するのではなく,徐々に反応するため、電流の流れている時間によって濃度に差が生じる.

カラーTFT液晶

画質は文句なし、問題はコスト

 もう1つの液晶駆動方式が,「アクティブマトリクス」駆動方式と呼ばれるものだ.これは,トランジスタまたはダイオードをガラス板上に積層形成し,それらの素子の増幅作用によって,個々の交点の液晶セルに,直接電圧をかけることができるものだ。この方式では,STN方式で起こった電圧の干渉作用が起こることがなく、より発色のよい画像を得ることができる.
 STN液晶とは好対照だが,TFT液晶では液晶板そのものは非常に単純な作りとなっている.その代わり,電気的な回路が非常に複雑になっている。液晶のねじれ角は90度とTN液晶と同一で,これがTFT液晶の大きな特徴の1つである反応速度の速さを実現している.
 アクティブマトリクス駆動方式液晶には、電圧増幅素子の違いにより2つの方式に分かれる.各液晶セルの電極ごとに,トランジスタを積層したものがTFT液晶(図5),その素子をダイオードに置き換えたものがMIM(Metal Insulator Metal)液晶である.
 TFT液晶とMIM液晶を比較すると,MIM液晶のほうが製造工程が少なくてすむため、コスト面では有利だ。ただし,画質という点ではTFT液晶がやや勝っている.小型カラー液晶テレビは,すでにTFT液晶が主流になりつつある.しかし,コンピュータなどのOA表示装置として見た場合,今後数年間のうちにTFT液晶を実用化するのは無理だろうと,各メーカーでは考えている.何が問題になっているのだろうか.


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図5 TFTカラー液晶
 液晶物質の背面に配線された電極が,交点に積層されたトランジスタを直接駆動する.液晶物質の前面には金属薄膜の平面電極があり,電圧をかけられた液晶分子は前後に整列し光を通す.
 カラーフィルタの配置にも種々の方式があり,下図では代表的なものをあげた.実質的には2個以上の電極が色のフィルタに対応しており,電極の1つに欠陥があっても,色を表現できるよう工夫されている.

製造技術はLSIと同一

 問題は,コストが高すぎるのだ.大型(10~14インチ)のカラーTFT液晶も,研究室レベルでは製造できるのだが,量産となると話は別になる.ちなみに,現時点での価格は「値段がつけられない」(メーカー担当者)ほど高価だという.
 TFT液晶の製造プロセスで一番難しいのは、いうまでもなくトランジスタの積層化だ。このトランジスタ積層化技術は,基本的にはLSIの集積技術と同一のもの.大きな違いは,その面積だ.LSIの場合,集積化する面積は5×5mm程度.TFT液晶の場合,200×270mmとLSIの約2000倍の面積となる.そして,1個の素子にでも欠陥があった場合、その液晶は使うことができない。
 テレビのような動画像を扱う場合であれば、少々の素子に欠陥があっても,画像の速い動きが助けとなって、あまり問題にはならなかった.しかし,細かな文字・記号・数字を静止画像で映し出さなくてはならないコンピュータ用表示デバイスとしては,ドット1個分の素子欠陥でも、非常に目立ってしまうのだ。
 この理由から,TFT液晶は非常に歩留りが悪く,コストが高くなってしまう.
 2層STN液晶のカラー化で問題となったカラーフィルタの蒸着技術は,TFT液晶の場合,ガラス板上に直接配置するだけなのでそれほど問題とはならない.

TFT液晶の階調表現は?

 2層STN液晶で,カラー多色化に触れたので,TFT液晶の階調表現についても説明しておこう.
 2層STN液晶では,液晶分子配列のねじれが大きくその反応速度が遅いのが欠点だが,反応時間の差を利用して階調表現が可能となっていた.一方,TFT液晶では,分子配列のねじれもTN液晶と同じ90度で,かつトランジスタの増幅作用で電圧を直接駆動できるため,反応速度が高速となる.電流を切った瞬間の液晶分子の再配列の速度も,2層STN液晶が300ms,TFT液晶では30msと,約1/10にもなっている.これでは,反応時間差を利用した階調表示はできない.TFT液晶の階調は,反応時間の差ではなく,駆動電圧の差を利用して行なうことになる(図6).
 2層STN液晶での電流の時間の差を利用した駆動方法では,パルスのオンとオフとの時間比(デューティ比)を大きくするほど,多くの電極を制御できる.実際に製品化されている駆動用LSIのデューティ比は,1/200~1/400.オンかオフかの2階値の場合なら,1個のLSIが同時に制御可能な電極数は200本~400本となる.しかし,8階調になれば,同時に制御可能な電極数は1/8になってしまう.
 TFT液晶では,駆動電圧の差を利用するため,理論的には無段階の階調表示が可能である。2層STN液晶の階調表示方法はデジタル制御,TFT液晶の階調表示方法はアナログ制御ということができる.しかし,いくらTFT液晶で無段階の階調表示が可能でも,液晶物質の透過率が、目に見えるほどの変化をしないため,実質的には8~16階調が限界らしい。もちろん,OA機器用の大画面駆動用ドライバLSIの開発を待たなければならないのは,2層STN液晶の場合と同じだ.


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図6 TFT液晶の階調表現
 TFT液晶の場合,階調表示は各電極の交点にかける電圧の差を利用している.光の明暗の間が階段状になるよう電圧を調節してやれば,段階的な階調が表現できる.
大面積集積化技術が鍵

 TFT液晶で最も問題となるのは,その製造コストである.大面積にトランジスタを正確に集積できる技術の確立を待たなければならないといえる.
 反面,液晶部の作りは簡単なため、反応速度や発色性,視野角などの点で2層STN液晶を凌いでいる.

コスト=歩留まりの悪さだと思うが、それを解決するためにどれだけ努力したのだろうか。このころの日本の技術は世界最先端だった。何が悪く低落したのか。誰が悪いことをしたのか。

製品化に向けて

 2層STN液晶とTFT液晶には,まだ克服しなければならない問題点が存在している.
 2層STN液晶では,反応速度や視野角などを含めた画質の向上が問題となっており,TFT液晶では,そのコストがネックとなっている(表2)。
 カラー液晶を搭載したラップトップコンピュータが製品として登場するのは,今年末とも来年始めともいわれているが,どちらの液晶が搭載されるのだろうか.各メーカーの話を総合すると,まずは2層STN液晶を使ったものが製品化される.2層STN液晶とTFT液晶を比較した場合,まだ価格にかなり差がでてしまうという.画質がよいということで,それだけの価格差をユーザーが納得するかどうかが問題となる.
 2層STN液晶の場合,反応速度が遅いという欠点もあるが,コンピュータ用表示デバイスの場合,せいぜい画面のスクロールやマウスカーソルの動きが追従できればよいわけで,さほど問題にはならない.
 どちらにしろ,鍵を握っているのはTFT液晶のコストだ。2層STN液晶とTFT液晶のコストが近付いてきた時には,TFT液晶が主流となるのは間違いない。つまり,まずは2層液晶を使った製品が市場に登場し,数年後にTFT液晶の価格が十分下がってきたところで,TFT液晶を使った製品に移行していくだろうという予測が成り立つ。


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液晶ディスプレイが当たり前になるには何年もかかった。初期の頃はドット抜けが問題された。この液晶技術は相当難易度が高かったのだろう。トップランナーだと思っていたシャープがまさかダメになるとは思わなかった。誰が悪かったのか。間違えても技術者が悪いということはなかったはずだ。シャープを外国に身売りさせた犯人はだれだ。

ティントモード液晶を搭載した
 セイコーエプソンが6月に発売した「PC-286LST」に搭載されている「ティントモードNTN(2層STN)液晶」とは,2層STN液晶の着色防止用のための補償用液晶に,電圧をかけられるようにしたもの.
 この方法では,以前はカラー化にとっして障害だったSTN液晶の着色現象を逆手にとって,わざと色を出すようにし,8階調表示の白黒液晶に,疑似的に薄い緑や赤の色を付けることができる.本稿で取り上げているカラー液晶とはまったく違った技術だ。カラー液晶の表示と見比べてしまうと,さすがに見劣りはするものの、グラフ表示画面やゲーム画面などでは、白黒液晶に比べて非常に見やすくなっている(写真1).
 この液晶は,アプリケーションによって,たとえば,表計算ソフトやワープロソフトでは白黒表示で,グラフ表示やゲビームソフトなどではティントモードでと使い分けができるのも特徴だ。
 ティントモード液晶は,搭載したマシンの価格を比較的低く設定していることもあり(ベースマシンのPC-286LSと価格差にして4万円),液晶を使った表示デバイスの,新しい可能性を示唆したものといえる.


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この記事の頃はまだCRTの時代でカラー液晶ディスプレイなんてノートパソコンの一部にしか使われていなかった。
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