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プラズマディスプレイ,CPU判別,韓国(月刊ASCII 1989年9月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

TBNのプラズマディスプレイの解説をスクラップする。
プラズマディスプレイの正体は
Q:プラズマディスプレイはどのようにして階調表示をしているのですか。またカラー化が進んでいるそうですが市販化されるめどはたっているのでしょうか.
A:プラズマディスプレイの階調表示を説明する前に、まずプラズマディスプレイの原理を簡単に説明しましょう.
 プラズマディスプレイは不活性ガスを電極間に閉じ込め,高い電圧をかけて放電させることによって発光させています.発光原理そのものは街中にあるネオンサインとほぼ同じです.このようなガス放電は,封入するガスの種類によって発光色が変化します(表1)。実際にはこれらのガスの中で,安全でかつコントラストの高いネオンガスを主にした混合ガスが使われています。


ASCII1989(09)g01プラズマディスプレイ表1_W466.jpg
 ここで放電の原理を簡単に説明しましょう.放電は,絶縁物に強力な電圧をかけることによって絶縁性がなくなり電気が流れる現象です.放電が行なわれているときに電極から直接またはガスの原子がイオン化することによって電子が放出されます。その放出された電子がガスの原子にぶつかるときに発生するエネルギーが,発光となるわけです(図1).

ASCII1989(09)g01プラズマディスプレイ図1_W343.jpg
 ディスプレイの構造としては,細長い電極を格子状に配列することによって1つ1つの画素(ピクセル)を作り出しています(図2)このようなマトリクス構造は液晶ディスプレイにも使われています。

ASCII1989(09)g01プラズマディスプレイ図2_W520.jpg
 表示の際には,CRTや液晶ディスプレイと同じく走査線方式を用います。ただしプラズマディスプレイの場合は1ラインずつ表示する方法です(図3).ちなみにCRTの場合は1ピクセルずつ,液晶ディスプレイはプラズマディスプレイと同様に1ラインずつ表示します.

ASCII1989(09)g02プラズマディスプレイ図3_W520.jpg
 なお1つのラインを表示している時間を1水平走査期間(1H期間),ラインが集まって1画面分を構成する時間を1垂直期間(1V期間)と言います。
 プラズマディスプレイの駆動方式はディスプレイの放電/発光に交流電源を使うAC方式と,直流電源を使うDC方式の2種類に分かれます。両者は基本的な構造に関しては大きな違いはありませんが,電極や駆動回路等の細部はかなり異なります.また,実際の放電現象にもかなりの違いがあります。
 AC型ディスプレイは電極が一種のコンデンサになっています。そのため,放電開始電圧よりわずかに低いパルス波を常時電極にかけておけば,一瞬でも電圧を上げれば放電,以後は発光を維持するという特徴を持っています。これをメモリ機能と言います。放電を止めるときは,電圧を最小放電維持電圧以下に落とすことによって行ないます。このメモリ機能によりAC型ディスプレイは1V期間中,つまり次に同じラインが書き換えられるときまで発光を続けます.
 AC型ディスプレイの発光の仕組みをもうすこし見てみましょう.まず常時電極に流す維持用の電圧(維持パルス)を,最小放電維持電圧よりわずかに低く設定します。点灯をするときは放電開始電圧を超える電圧(書き込みパルス)を流します.すると電極の構造上,電極に電荷(壁電圧)がたまります.次に維持パルスの極性が逆転します。これによって壁電圧の分が維持パルスにプラスされるため、実質上の電位差は放電開始電圧を超えることになります。そして放電を起こし壁電圧がゼロに戻ります。その後また壁電圧がたまり……,の繰り返しで発光が維持されます。消灯するときは、壁電圧がたまらないように電圧(消去パルス)をかけます(図4).


ASCII1989(09)g02プラズマディスプレイ図4_W520.jpg
 このためAC型ディスプレイの発光は点滅することになりますが,そのサイクルが非常に速いため(1秒間に10000回以上)人間の眼には持続した発光に見えます。
 DC型ディスプレイはAC型とは違い,電圧をかけている間だけ持続した発光を行ないます。ただし電圧が十分に上がり実際の放電が起きるまでにはタイムラグがあり,またその間は放電が安定しないため画面にちらつきが起こるなど,なかなか安定した表示が得られません。そのため応答速度を上げ画面を安定させるために,1H期間ごとにパルス波を流すなどをして発光しない程度の放電を常に起こさせています。これを種火放電と言います.種火放電によってガスの絶縁性がほとんどなくなり,電圧をかけるとすぐに安定した放電が起きるのです(図5).


ASCII1989(09)g03プラズマディスプレイ図5_W520.jpg
 さて,ご質問のプラズマディスプレイの階調表示ですが,これは発光を行なう時間を変化させることによって行なっています。この考え方はAC型もDC型も同じです.DC型では1日期間あたり,AC型では1V期間あたりの発光時間を80%,60%と短くしていくことによって,1ピクセルあたりの輝度を変化させて階調表示を行なっています.たとえば4階調表示の場合は,1回の期間を3等分して発光する回数を調整しています(図6)。この方法では原理的には無制限に階調表示が可能で、今までのところ最大16階調まで表現できるディスプレイが製品化されています。

ASCII1989(09)g03プラズマディスプレイ図6_W378.jpg
 現在プラズマディスプレイでは,カラー化の研究が進められています。カラー版のディスプレイはネオンガスの代わりにヘリウムガスなどを使い,放電によって発生する紫外線を用いてRGBの蛍光体を発光させる方式をとっています.この方式では緑の輝度はよいのですが赤と青の輝度がまだ弱く,研究者の頭を悩ませています。最近は各メーカーからカラー版のディスプレイの発表が相ついでいますが,それらの大半はまだ試作品の粋を出ていません。しかし階調表示には優れ,色の再現性そのものもいいため,輝度が向上すれば液晶ディスプレイ,ことによればCRT以上の高画質が期待できます.
(加藤)

協力:松下電子(株),富士通(株)
プラズマディスプレイは液晶ディスプレイに駆逐されてしまったが、スピードが速いということで健闘していた。

「困ったときのプログラミング・トラシュー 第2回 CPUの判別」をスクラップする。
Q:8086とV30をソフトウェア的に識別する方法はありませんか?これができると「8086では走りません」などと表示してプログラムを止めることができるようになるのですが.
システム定義域や8086の未定義命令を使う方法もあるようですが,機種などに依存したくないのです.

 A:8086に対して,80286やV30などのCPUでは,いくつかの命令が強化されています。プログラムの実行効率を上げるために,これらを使用したくなるというのも当然でしょう.特に,ある種のbit操作においては,V30や80386などのCPUのbit操作命令が使用できれば,実行速度を向上させることができます。
 たとえば,パソコン通信で非常によく使用されているishというプログラム(注1)では,その性質上bit操作が大量に必要になります。ですから,ishはCPUがV30の場合には,その拡張命令を使用してより実行効率を上げ,そうでない場合でも,正常に動作するように記述されているそうです.

 注1 バイナリファイルをネットワークに転送可能なテキストファイルに変換したり,変換されたテキストファイルからもとのバイナリファイルを復元するためのコンバータ.回線の雑音などによる伝送エラーに対処するため,エラー復元機能も備えている.
 そのような処理をするには,使われているCPUが何なのか,判別しなくてはなりません.そして,そのCPUに応じて最も高速な命令シーケンスを選択するのです.
 ところで,Intel系のCPUを判別する方法には、かなり標準的なものが存在しています.これは,SYMDEBやCodeViewなどのプログラムも採用しているもので,そういう意味からは信頼性が高いといえます.
 ただし,この判別方法は通常の命令の実行処理結果の差異を利用しているものですから,逆にいえば通常のプログラムでも,これらの判別命令と同様の処理を行なっていると,プログラム自体がCPUによって誤動作する可能性があるといえます。これらの命令はその面でも注意をする必要があるでしょう.
 その判別方法ですが、まず判別の第1段階として,32bit以上のシフト動作が使用されます.80x86CPUでは,CLレジスタに設定した回数だけレジスタまたはメモリ上の値をシフトまたはローテートさせることができます。
 ただし,レジスタをそのbit幅以上シフトさせると,その値は常に0になってしまうので,プログラム上で意識的に使用される可能性はかなり低いといえます。しかも,この値が大きくなると,1命令の実行処理時間がかかることになるので,割り込みなどに対するCPUのレスポンスが悪くなります。
 そこで,8086以外のCPUでは,まずシフトする回数と1FH(31)とのANDをとった回数だけシフトを実行することにしています.
ですから,たとえば,
MOV AX,OFFFFH
MOV CL,32
SHL AX,CL

という一連の命令を実行すると,8086CPUでは,AXレジスタは実際に32回シフトされて0になりますが,それ以外のCPUではまったくシフトされず,OFFFFHのままです。この違いを利用して,まず8086を判別することができます。
 次に,80186の判別ですが,これはPUSH/POP命令の動作の相違によって判別できます.具体的にいうと,80286/80386では,指定されたレジスタ/メモリの値をスタック領域に書き込んでからスタックポインタの値を減算します(ポストデクリメント).しかし,8086/80186ではまず減算を行なってから,指定された値をメモリ領域に書き込むのです(プリデクリメント).そのため,スタックポインタの値をスタックにPUSHした時の値が8086/80186と80286/80386とで異なることになります(図1).


ASCII1989(09)h02CPUの判別図1_W520.jpg
 実際には,
PUSH SP
POP AX

 という命令を実行した後で,AXとSPの値を比較し,同一であれば80286/80386,異なっていれば8086/80186ということになります.
 80286と80386の判別には,GDTRレジスタ(注2)

注2 GDTRレジスタというのは,プロテクトモードでシステムが使用するレジスタ詳しい説明は,80286/80386の解説書などを参照のこと。
 のbit幅が異なることを利用します。80286ではGDTRレジスタは40bit(5bytes),80386では48bit(6bytes)なのです.そこで,特定のアドレスにGDTRレジスタの値を書き込むと(SGDTという専用命令を使います),80286では6byte目の値は変化しませんが,80386では6byte目にも値が書き込まれます.したがって,
GDTW DB 6DUP (OFFH)
  ……
SGDT GDTW

というように,6bytesの領域を確保してあらかじめOFFHで埋めておき,このアドレスに対してSGDT命令を実行し,6byte目の値を調べれば80286と80386を判別できます.GDTRレジスタの上位8bitがOFFHになっていて,6byte目の値が変わらないことは,現在のシステムではほとんど考えられませんが,より慎重を期すには,さらに0で6bytesの領域を埋めて,同じ操作を繰り返せば確実でしょう.
 まとめると,表1のようになります。


ASCII1989(09)h02CPUの判別表1_W520.jpg
 さて,問題のV30の判別ですが,まずV30はシフトに関して8086と同等ですので,8086以外のCPUとの判別は,容易に行なえます.つまり,8086と区別できればいいのですが,残念ながら,明確な形で判別する方法はないようです.
 1つは,やはり未定義の命令を使用する方法です.たとえば,コード0D6Hで表わされる命令は,Intelのマジックコードと呼ばれることもある命令で,V30の著作権争いの時に,V30が8086と異なる動作をすることを示す材料として提出されていたものです.Intel系のCPUでは,これはCYフラグが立っている時にALにOFFHを,立っていない時に0をロードする命令と解釈されるようです.この命令は80386に至っても同様な動作をし,Intelの開発システムで使用されているという話ですから、この範囲なら安定に動作すると考えていいようです。
 V30でどのような動作をするか,ということについては確実なことは分からないのですが,XLAT(コードは0D7H)と同じ動作をするようです.ですから,適当なアドレスをBXとALにセットした上で,CYフラグを立てて0D6Hを実行した後のALの値がOFFHであれば8086,そうでなければV30と見ることができます.
 動作についてより信頼性のおける未定義命令を使用する方法としては,POP CSを使うことができます.POP CS(0FH)は,8086では文字どおりCSレジスタの値が操作されてしまいますが(80286以上では,未定義命令のトラップ),V30では拡張命令の第1byteとして使用されます.ですから,たとえばOFH/10H/OCOHというシーケンスを実行すると, 8086ではCSがPOPされた後,ADC AL,ALが実行され,V30ではTEST1 AL,CLが実行されます。あらかじめALに非0の値を入れ,CSレジスタの値をスタックにPUSHしておけば,ALレジスタの値を調べることで8086/V30の判別ができます。
 既存の命令だけを使って調べる方法としては,命令実行速度の差をもって調べる,という方法が考えられます.8086では,複雑なアドレッシングモードの時に実効アドレス(EA:Effective Address)を計算する時間が随分かかります。
MOV  CS:[BP+SI+1],AL
というような命令を実行するためには,V30の場合に比べて14クロック程度もの余計なクロックが要求されます.その間に続く命令が先読みされるため,同様な命令を連続して実行した場合に,8086の場合は命令キューが満たされた状態になり,V30では満たされていない状態になります。ここで,この境目にある部分の命令を書き換えた場合,8086ではそのアドレスの命令はすでに先読みされているため,書き換える前の命令が実行されますが,V30ではこのアドレスの命令がまだ先読みされていないため,書き換えた後の命令が実行されることになります.ただし,この方法ではキューの大きさが違うV20/8088が使われているシステムでは,正常に判別ができない可能性があります。国内の機械では,これらを使用しているものはまずありませんが,古いIBMPCのコンパチ機の場合は,8bitバスのCPUを使用している場合があります.これらも考慮に入れる場合は,同様な方法でキューの大きさ自体もあらかじめ判別する必要があるでしょう.なお,古いV30チップのマニュアルでは,PUSH時のスタックの処理がポストデクリメントと80286などと同様な記述になっているものがあります。実際には8086と同様なプレデクリメント動作をしていて,マニュアルの誤りだと思われます.マニュアルも,最近のものでは修正されているようです。マニュアル通りの動作をしてくれるなら,はるかに簡単に判別を行なうことができたのですが.以上のような手続きをまとめて,アセンブラのプログラムにしたものをリストページ(略)に示します.

PC-9801VX2とPC-9801VM2かの比較にはEGCのあるなしで判別した記憶がある。コードはどうだった分からない。このCPU判別も使ったはずだが忘れた。

日本の半導体産業は韓国に対して周回遅れと言われるまで落ちぶれたが、一体いつの何が原因だったのか。韓国はいつから躍進したのか34年前の記事をスクラップして手掛かりを探す。
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躍進著しいNIESパソコン事情を探る
松岡 洋

 6月4日に中華人民共和国北京市で起きた民主化要求運動に対する武力鎮圧は,近隣諸国に大きな衝撃を与えた。台湾,韓国、香港そしてシンガポールとNIES諸国はいずれも人,文化,経済のさまざまな面で中国と関係が深い。武力鎮圧のニュースが入ると、香港,韓国の株式は大暴落するなど中国のNIES経済に対する影響は無視できないものがある.そのような状況のなか、本誌は昨年12月号の「台湾・香港編」に続いて古くから日本との関係が深い韓国へ、と取材に赴いた。
 韓国は1950年から3年間の朝鮮戦争で,国土の大部分が戦場となった。朝鮮半島を数度にわたって縦断した戦闘は「破壊のローラー」と呼ばれ、主要工業地帯の生産設備はほとんど破壊された.ゼロからの出発を余儀なくされた韓国経済は,乏しい物資を最大限有効に利用するために特権的大企業に集中させ,経済の立て直しを図った。これらの企業が現在の財閥の核となり,高度経済成長期にも主導的な役割を果たしてきたのだ。
 昨年のソウルオリンピックで近代国家としての自信をつけた韓国は,オリンピックに付随したさまざまな整備事業で一段と近代化している。
 韓国の経済は輸出依存型で、電気製品も輸出が中心だ。パーソナルコンピュータの輸出も好調で、米国のコンピュータ雑誌の広告のあちこちに韓国メーカーの製品が登場している。日本でも時折電子業界誌に広告が掲載されているが,まだその企業規模に比べると知名度は低い。
 パーソナルコンピュータ専業メーカー主体の台湾では核となる半導体素子その「ものも輸入に頼る状況だが、韓国では太型コンピュータこそ生産していないものの、家電製品から半導体素子まで生産すある垂直型の総合電気メーカーが市場を制している。
 毎年世界の大企業売り上げ高500社ランキングが米国の経済誌「フォーチュン」から発表されているが,韓国の財閥系企業も多数ランク入りしている.今年発表された。米国企業をのぞいた500社ランキングでは15位に三星がランクされており,以下韓国企業は大宇,鮮京,双竜,現代自動車,金星と続く。ちなみに日本企業はトヨタ,日立,松下,日産の4社が三星よりも上位にランクされ,東芝ホンダ,NECが下に続いている.
 韓国では日米に対抗するため,これらの大企業間で先端技術の共同研究を行なっている。最近では,三星,金星,大宇が4MDRAMの共同開発に成功しておりサンプルチップの出荷を始めている。
 今回は,ソフトウェア見本市のSEK'89と電子機器関係のトップメーカー三星電子,ハイテク研究者養成機関の韓国科学技術大学,そしてソウル市内の電気街を紹介しよう.

天安門事件はこの年だったのか。


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韓国
 韓国のコンピュータソフトウェアの総合展示会SEK'89(主催・電子時報社)が6月23日から5日間にわたり,ソウル市内の韓国総合展示場KOEXで開催されまた、今年で3年目を迎えたSEK'89は,海外からの参加約20社も含めた約150社が出展した。
 6月26日午後ソウル金浦空港に着いた我々は、オリンピックスタジアムに隣接するKOEXに直行した。空港からソウル市街地までタクシーで約30分、さらにオリンピック大路に入って10分ほど走るとKOEXが見えてくる。すぐとなりには55階建ての貿易タワービルをはじめ国際会議場,ホテル,ショッピングセンタ一等が並び,KOEXも含めた韓国総合貿易センターを形成している。この貿易センターは昨年のソウルオリンピック開催の付帯事業として建設されたもので、SEK'89も今年からKOEXに会場を移し大規模な展示会となった。
 真新しい会場には、夏休みと物珍しさも手伝ってか、学生や会社員が多数詰めかけていた。あちこちのブースでパンフレットを集めて回る様は,どこの国でも同じだ。
 KOEXではホールの展示のほかに,セミナールームで各種の技術セミナーが開かれている。
 ホールには,パーソナルコンピュータやEWS(エンジニアリングワークステーション)が並び,OA,FAおよび通信関係のシステムが展示されている。
 韓国の主要なコンピュータメーカーは,いずれも大財閥に属している.SEK'89の会場にも、三星,現代,ラッキー・金星,大宇,双竜の大財閥系の各コンピュータメーカーが出展している。
 これらの一般展示のほかに、ホールの中央では特別展示としてSEK'89の主催者が募集したソフトウェアコンペティションの入賞作が実演されている.入賞作内訳は,大賞,金賞が各1点,銀賞2点,銅賞3点および奨励賞5点の計12点このうち大賞と奨励賞に入賞した双竜(サンヨン)のブースをのぞいてみた。

フトウェアコンペティション
 大賞に選ばれたのは,パーソナルコンピュータに接続したフライス盤(切削加工機械)をCADで作成したデータに従って制御するシステム奨励賞には、パーソナルコンピュータ上で稼働するオブジェクト指向エキスパートシステムのMORUSが選ばれた。
 主催者側の電子時報社事業部の閔丙縞(ミン・ビュンホ)次長の話では、韓国はコンピュータでどのようなことができるのか,どのような応用分野があるのかを模索する段階にあるという。これらの入賞展示も,それを如実に表わしているといえるだろう.
 MORUSはソウル大自然大学(ソウル大学の自然科学系分校)で研究していたエキスパートシステムをベースに、双竜自然大学産学共同で開発されたものだ。1987年に3人で開発を開始,当初はLispで記述していたが,機能が固まった段階でC言語への書き換えを行なったというGUIやオブジェクト指向プログ・ラミング特有のインヘリタンス(機能継承)機構は,Smalltalkを参考にしたそうだ。
 MORUSの大学側の開発者は卒業後その開発成果と共に双竜に移り、来年の市販を目指していると語った。

ソウルオリンピックが1988年。やはり初めてのオリンピックを開催すると経済が発展するのだろう。


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韓国ワークステーション事情
 一般展示の主力はいずれもIBM PC互換機とそのアプリケーションソフトである。三星などのメーカーのブースを取り巻くように、中小のソフトハウスがCAD,科学計算などのパッケージを展示していた。とはいえ大メーカーや外国系企業のブースでは,EWSも数機種展示されている。
 Sun Microsystems韓国総代理店の現代電子は,SUN3と米国のCADシステムを展示していた。一方金星のブースでは、自社開発のGS8000/32を展示していた.WE(ウェスタンエレクトロニクス)の32ビットCPUのWE32100を使用し、クロック周波数18MHzで処理速度4MIPS.OSにはUNIX System Ver.2.1をハングル(韓国語)化している。1988年6月に発表され、現在はモデル110と130の2機種を販売している。両機種共にキャッシュ32Kバイト,主記憶2Mバイト,ハードディスク86Mバイトを装備。違いは匡体と拡張性,ユーザー数などだ。価格はモデル110が1700万ウォン(日本円換算で約360万円),130が3500万ウォン(同約740万円)同程度の性能のSUN3やNEWSなどと比較すると,ま割高である.
 データゼネラル・コリアはAViiONを参考出品していた.AViiONはCPUにMotorolaのRISCチップ88000を使用処理速度17MIPSを誇る。会場ではXヴィンドウのデモを行なっていたが,まだハングルは扱えないようだ.どうも韓国内でのハングル文字コードが統一されていないため、様子をみているところらしい(コラム参照)。



コラム
ハングル文字とコンピュータコード
 韓国では,ハングル文字と呼ばれる独特の表音文字を国字として用いている。ハングル文字は子音と母音を表わす表音記号で構成され,子音+母音,または子音+母音+子音の組み合わせを取る。母音は複合母音も含めて21種類,子音は双子音を含めて19種類あり,一般的には約4000の組み合わせ(=文字)が使われている.
 ハングル文字をコンピュータで扱えるようにコード化するにはいくつかの方法がある.簡単なのは,子音,母音に各々1バイトを割り当て,2バイトまたは3バイトのバイト列で扱う方法だ。もちろん,英字と区別するため16進数で80以降に子音と母音のコードを配置する。これをかりに1バイトコード体系と呼ぶ.
 一方,子音,母音が各々5ビット(=32種)で表わせることを利用し,子音+母音+子音を5+5+5ビットにパックして2バイトで文字を表わす方法も考えられる.英字との区別は,2バイト=16ビットの残りビットを最上位ビットに配置して英字とハングル文字の区別を行なう.この方式を2バイトコード体系と呼ぶことにする.
 韓国のコンピュータ業界は,2つのコード体系をばらばらに内部コードとして採用してしまった(通信に使使用する外部コードは統一されている).これは非常に大きな問題である.
 もたもたしているうちに、業界が三星,現代をそれぞれ中心にした2グループに分裂してしまった。両グループには主要メーカーがほぼ同数に分かれ、勢力が均衡しているために問題を長期化している.
 昨年公的機関が標準化を諮ったが,両陣営が互いに譲らず失敗に終わった。今後の発展を考えると,早期解決が望ましいが,勢力が均衡しているだけに見通しは立っていない。
 ソフトハウスや一部のメーカーは、仕方なく2つのコード体系をサポートしているというのが現状である.

表示と入力
 ハングル文字の表示には縦14画素を必要とするため,IBM PCで25行を表示するには14×25=350ライン表示可能なEGAビデオカードが必要になる。IBM PC互換機環境でハングルの使用を可能にする通称「ハングルDOS」は,約4000種のハングル文字フォントを内蔵してEGAのグラフィック画面に文字を展開している.この方法では文字の表示速度が遅いため,文字フォントをROM化したKEGAビデオカードも最近開発された.
 文字の入力には子音と母音を逐次入力する方法がとられており,各キーに各々の音を割り当てている。キー配列については早期に業界で統一されたという.

なんとハングル文字のコンピュータ内部表現が統一されず2つの体系があるとは。解決すべき大問題だと思うけど何年に解決したのだろうか。
普及が始まったデータ通信
 韓国でデータ通信を独占するDACOMのブースでは,コンピュータ,テレックス,ファクシミリ間で通信を行なうMHS(メッセージハンドリングシステム)を展示していた。日本から取材に来た旨を告げると、係員がMHSを実演してくれるという。公衆回線に接続した端末から入力した電子メールがDACOMのコンピュータセンターでファクシミリのデータに変換され,約30秒後にとなりに設置されたファクシミリから歓迎のメッセージが出力されてきた。
 DACOMは経済情報のKETELを始め、種々のデータベースサービスも運営している。昨年のオリンピックでは市内の所々に設置された端末で,競技結果速報などを行なった.
 データ通信関係では,韓国富士通がNIFTY-Serveのデモを行なっていた。日本語ワープロの通信機能を使って日本のアクセスポイントに接続し読み出すメッセージも日本語表示のままだが,来場者の興味はちょうど我々が米国のCompuServeやGEnieに抱くものに近いようだ。
 韓国のパーソナルコンピュータ産業は年間約240万台を生産しているが,これまでは輸出が主体。国内ではまだ学生や技術者といった目的のはっきりした層にしか浸透していない。特にビジネス・家庭などはまだ未開の分野だけに,これからの普及が期待されている。




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電子機器のトップメーカー 三星電子
 電子機器最大手の三星電子は、三星物産と共に三星財閥の中核を形成している。昨年三星電子と三星半導体通信が合併し結果、現在の従業員数は3万8000人,1988年の総売り上げは3兆ウォン(約6300億円)を突破した。売り上げの3分の2を輸出に依存する,典型的な輸出型企業である.
 三星電子の営業および企画部門はソウル市内にオフィスを構えているが,会社の本拠地はソウル市から西に約60kmの水原(スウォン)市郊外にある工場群だ。水原では主に電気部品と家電製品、そしIBMPC互換のコンピュータを生産している.水原のほかにも国内に3カ所の工場があり、各々メモリチップ,半導体素子,通信機器を生産している。
 まずはソウル市内の情報機器部門を訪問し、企画課の金炳起(キム・ビュンキ)課長代理に三星電子と韓国コンピュータ産業の現状を説明していただいた。
 韓国のパーソナルコンピュータ市場は、80%以上がSamsung(三星),Hyundai(現代),Deawoo(大字),Goldstar(金星),Trigem(三宝)の財閥系5大メーカーで占められている。また市場の70%はCPUに8088を用いたIBM PC/XT互換機が占めており,AT互換機(CPU80286)が25%,386AT(同80386)が5%程度の比率という。また最近はゲームマシンも普及しているが、やはり韓国でも任天堂に人気が集中し、セガとMSXが後を追っているそうだ。
 三星電子のコンピュータ部門はIBM PC/XT互換機のOEM供給から始まったが,現在ば大部分をオリジナルのSamsungブランドで出荷している。出荷先は今のところ輸出6に対して国内4の割合で,これから企業向けを中心に国内の割合を上げていく方針だ。
 「輸出だと(価格競争で)利益率がとても小さいが,国内企業相手ならばそれほど苦しい商売ではない」(金氏)という。輸出分についても現在は米国と欧州が半々だが,米国が保護貿易の様相を呈してきたので今後は欧州市場に力を注いで「いかなければと力説する。
 日本への進出の予定はないかとたずねてみたが,日本の市場は三星の主力のIBMPC互換機とは市場傾向が異なる。ため、残念ながら考慮していないという.日本ではエプソンがPC-9801の互換機で成功しているという話を持ちかけたが,「開発期間と資金を考えるとあまりおいしい商売とは思えない」(金氏)そうだ。ただし,JEGAボードを組み込んだAX規格機を1990年に発表する計画があるそうなので、それに期待したい。
 日本法人の三星電子ジャパンも情報収集と資材調達の性格が強い.ちなみにコンピュータ部品の自給率はメモリチップを中心に20%,残り80%のほとんどが日本製という.日本企業との競争力を高めるためにも1990年前半までに自給率を50%に引き上げる方針だ。

米国中心の輸出で生き残れたのか。日本は米国への貿易黒字が大きく、日米貿易摩擦でバッシングを受けた。韓国はどうだったか。


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またEWSについても、いくつか計画中という。パーソナルコンピュータからのアプローチとして,クロック周波数20MHzの386ATにハングル版UNIXを搭載したWSを来年発売の予定だ.SunのSPARCstationやMIPSのEWS相当する機種も計画には入っているが,姿を表わすのは少なくとも1991年以降となるだろう。
撮影禁止 禁断の水原工場
 ソウル市のオフィスを後にし、三星電子の水原工場に向かう.ソウル市から水原市まで電車で約80分,さらに駅からタクシーで20分ほど走ると,前方に巨大な工場群が見えてきた。150万平方米の敷地に、三星電子をはじめ三星電管(CRT),三星コーニング(ガラス)等の三星グループの電子機器関連企業が集まっている。
 中央正門前でタクシーを降りると,迎えに出ていた研究所管理部門の李泰藩(イ・テグォン)氏にまず注意を受けた。ここは軍関係の仕事も手がけているので、工場内外は写真撮影禁止なのだ.
 構えていたカメラを慌ててしまい,李さんに従って門をくぐる。案内されたのは正門から一番近いビルで,Samsungのロゴが入った直径数mのパラボラアンテナが3基設置されている。ビル自体は上から見ると曲線を生かした造りになっており、SF映画に出てくる研究所のイメージをそのまま作ってしまったような印象だ。
 入口には海外からの来客を迎える各国の国旗が掲揚されている。今日は,日本,フランス,ベルギー,アメリカの4カ国で,我々と前後してソウル市で開催中の技術交流セミナー「ベルギーハイテク89」来賓のアルバート皇子と,貿易相の一行が到着した。李さんの話では、韓国を訪れる外国元首や閣僚クラス,いわゆあるVIPの公式訪問コースに,三星電子の工場も入っているということだ。
 水原には家電製品とコンピュータの工場のほかに,綜合研究所を併設している.研究開発要員にはこの綜合研究所の400名を始めとして、ほかの3カ所の工場に併設された各研究所で計2700名を擁する。
 1986年のこと,三星電子から4mm幅の磁気テープを用いたビデオカメラが発表された。4mmといえば通常はオーディオカセットテープのことなので,マニアの間で半信半疑ながら話題になったものだ。実はこのビデオカメラは水原の研究所で開発された商品で、今回見学した水原のショールームに実物が展示されている。
 4mm幅の磁気テープの正体は、1981年に発表されたDAT(デジタルオーディオテープ),その記録ヘッドや記録方式はビデオ技術を応用したものだ。日本では欧州の企業からDATプレーヤ発売延期の圧力がかかっていた時期だけに,あっさりと正攻法で商品化する手腕は脱帽ものだ綜合研究所はこのような商品化を前提とした応用研究が主体としている。
 ショールームにはこのほかヘッドフォシステレオからプリント基板実装ロボットまで200種以上にものぼる各種製品が展示されている。パーソナルコンピュー夕関係もラップトップを含めてゲーム機から386AT互換機まで10機種を超える。変わったところではイーサネットインターフェイスを備えたディスクレスのネットワーク専用機PCterminal/286G2がある。企業向けの大量導入をねらったもので、三星電子の国内市場への戦略をうかがわせる。




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天下の英才を集めて教育する KIT
 韓国の教育制度は日本と似ているが,高校への進学率が約90%,大学(短大を含む)へは40%にも達し,高等教育にか.ける情熱は日本以上だ。大学受験は国公立、私立も含めて1大学1学部しか出願できないため、受験戦争は熾烈を極め、「4当5落」どころか「3当4落」といわれている。
 彼らの目指す大学の頂点は,国立のソウル大私立の延世大,高麗大などである。また女子大では,梨花女子大が有名だ。これらの大学の学生は政治に対する関心が高く、学生運動が盛んだ。いずれの大学もソウル市内に位置し、時折日本でも報道されるように,市内でデモを行なっている.
 このような騒々しい大学とは対称的に、世俗を離れて高度技術の研究者を純粋培養する仙人のような大学がある。ソウル市から南へ160kmほど、地理的には韓国この中央に位置する太田(デジョン)市郊外に多数の国公立の研究機関が集まった大徳(デートク)研究団地がある。この研究団地の一角にその仙人の大学,韓国科学技術大学,KITがある。33万平方米の敷地内に6棟の学生寮を持ち,学生数はたったの2100人、前記のソウル市内の大学の学生数がどこも1万人を超えることを考えると,まさに別天地だ。
 ソウル市から太田市までは高速バスで約2時間バスターミナルからはタクシ-でKITを目指す研究団地に入り建設中の研究機関をいくつか通り過ぎると、30分ほどでKITにたどり着く。
 夏休みのためか,学内は閑散としている。案内していいただいた広報課の崔泰雄(チョイ・テウン)課長の話では、夏期講習を行なっているので、これでもほとこんどの学生が大学に残っているそうだ。KITは,1986年に大学院を持たない全寮制の自然科学系大学として開校した。韓国の科学技術の総本山KAIST(韓国科学技術院)ば研究機関であると同時に高度な科学技術の研究者を養成する教育機関でもある。韓国内の自然科学系大学を卒業した学生の内でも特に優秀な者がKAISTの大学院に進学し、修士博士号を取得する。そして、より効率よく一貫した研究者教育を行なうために,KITが創られたのだ。
 KITは自然科学(基礎科学)部機械材料工学部、電子電算学部,応用工学部の4学部からなるが,学科はなく大学院と同じく各学部に4つの専攻がある。定員は50名だが,実際に入学を許可されるのは毎年510~520名,合計で約2100名が在学している。入学者のほとんどは大学院への進学を希望しており,一部は海外留学を望んでいる。そしてそのほとんどが実現するに足る能力を有しているのだ。韓国の自然科学系大学では大学院への進学率が平均1割程度だから、まさにライブトスタッフである。
 この大学ではさまざまな教育実験が行なわれている。通常,韓国の大学は4年間の就学期間を経て卒業するが,KITでは140学点(単位)を取得した段階で卒業できる。特に優秀な学生ならば、2年半から3年で卒業することも可能だ。この夏季講習も,学点を稼ぐために役立っている.開校から3年半経過した今年の夏最初の卒業生が100名ほど出る。ほと・んどはKAISTの大学院に進学するとい現在ソウルにあるKAISTの大学院も来年KITのとなりに移転する計画で、取材時には建物が姿を見せ始めていた。
 韓国では、青年男子には2年半の兵役が義務付けられており、KITの学生も例外ではない。しかし、特例として防衛産業や公的機関に従事する場合,期間短縮等の措置がある。KAIST進学者もこの対象になるという。

伝統が無いだけ合理的なKITという大学、研究機関が作れたと思う。日本ではなかなかできない。各企業がそれぞれ独立して研究するから合理的とは言えない。しかし、ASCII EXPRESSのスクラップでは世界初の技術の記事があったので日本的研究も悪くなかったはずだ。いつから、どうして日本はダメになったのか。

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少数精鋭・英才教育
 KITでは設立から2年間,試験的に入学生に対する創意テストとIQテストを行なった。大学付属の英才教育研究所が,このテストの結果と学業成績との相関関係を資料として,入学後の追跡調査を行なっている。結果はあと2年後に報告され、大学入試や研究者養成に応用する計画だ。ちなみに初年度の入学者の平均IQは140~150で140付近が最も多いという。教員数は教授が約150名に助教授が約60名、学生10名に対して教授1名の割合を目標に補充を行なっている。
 学生にとってこの大学は非常に恵まれた環境といえるだろう。学費は年間54万ウォンで,学生には奨学金として月額平均6万ウォンが支給される.

豊富なコンピュータパワー
 自然科学系の大学では,研究を支援すコンピュータは不可欠の存在だ。コンピュータの支援があるのとないのでは、業績に大きく差が出る」(崔課長)ということで、全学生に研究支援のためのコンピュータ教育(UNIXとC言語)を行なっている。また,計算センターか図書館や学生寮に端末が引かれ,24時間自由に使用できる体制になっている。コンピュータ専攻の学生には,計算機センターのほかにSUN3が4台割り当てられている.後期からは12台に増強されるが,それだけで驚いてはいけない。現在ソウルのKAISTにあるスーパーコ「シピュータCray2を,専用回線で利用できるのだ。さらに,となりにKAISTが移転してきてKITと合流するときにはCray2も移設し,ソウルに残ったKAISTの研究部門には新たにCray3が導入される.KITのコンピュータ専攻の学生は,これらすべてを使用できるのだ。湯水のようにコンピュータパワーを使えるとは何ともうらやましい。
 個人でパーソナルコンピュータを所有する学生はいないのかと質問すると,遊びで使うのならともかくと前置きし、「これだけのコンピュータを24時間利用できるのに、わざわざ自分で大金を払ってまで性能の低いコンピュータを買う必要もないだろう」(Shin,Sung-Youg電子電算学部助教授)とのお答えだった。ごもっとも.
 韓国コンピュータ産業の展望などをインタビューするため,Shin助教授とコンピュータ専攻の4年生3名に集まってもらった。我々の質問に、難しい質問だと困惑しつつも応じてくれた。
 「ある産業が発展するには、いかに優秀な人材をその産業界に数多く引き込むかにかかっている。韓国では今まで造船や自動車などの)機械産業に人気があり、多くの人材を獲れたので成功を収めた。コンピュータ産業も人材の育成が鍵を握っているが,政府がコンピュータの振興政策を打ち出しており、今後加速度的に技術が促進されていくだろう」(4年:朴世衡)とのことだ。
 さらに突っ込んでEWSの将来性についたずねると,面白い話を教えてくれまた.最近,大字がコンピュータに興味を持つ学生を集めて,EWSに対する討論会を開いたそうだ。討論の結果,市場に、EWSが出たとしても,SUN並の応用ソフトが揃わなければビジネスにはならないという結論が出たという.SUNがほかのEWSを引き離してあれほどの成功を収めたのは、質の高い応用ソフトが多数用意されていたことに尽きるからだ。
 いったい誰が応用ソフトを用意するのだろう?EWSビジネスという卵を産む鶏が応用ソフトならば,その鶏はどこからやってくるのだろう、鶏と卵の問題の正解は爬虫類というより原始的な生物からの進化だ。現在の韓国は、あまりに技術成長が速すぎたため、爬虫類に相当する技術を跳び越しているように感じられた。それともこれは私だけの思い過ごしなのだろうか?




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ソウル電気街巡り
世運商街
 ソウル市内には,世運商街(セウンサンガ)と竜山電気商街(ヨンサンチョンジャサンガ)の2つの電気街がある.
 世運商街は比較的古く,ソウルに住んでいれば誰でも一度はお世話になるという。最寄りの交通機関は,地下鉄1号線の鍾路3街(チョングロ・サムガ)駅だ。観光名所の一つ宗廟(ジョンショ)が駅の近くにあり,世運商街は宗廟と鍾路通りを挟んだ反対側にある。
 駅からは200mの距離にあるが,鍾路に面して宗廟市民広場があるので目標にすると分かりやすい.広場の近くまで来ると,反対側に魚の壁画のあるビルが見える.この奇妙なビルが世運商街だ。
 ビルは幅約30m,長さ約200mの6階建てで,1,2階には家電商が入っている。コンピュータショップは4階に集中しているが,最近は電卓等の小物電気製品を扱う3階にまで進出しているそうだ。ビル内は10坪から15坪の区画に仕切られ,フロア当たり100軒以上の小売店が入っている。東京のほうならば、秋葉原のラジオデパートを巨大にしたものといえば、雰囲気が想像できるだろう。
 ショップの大半はIBMPC互換機を扱っており,価格はXT互換機で100万ウォン(日本円換算で約20万円)あたりが多い。大学卒の初任給が約50万ウォン(約10万円)だから月収の2倍。日本での初任給を約16万円とすれば,PC-9801RX程度の感覚かお客のほとんどは大学生が技術者だという話だ。
 一方ソフトについては,なぜか店頭にはパッケージの類が並んでいない。ほかに専門の店があるのかもしれないが,どのようなものが流通していあるのかを知ることはできなかった。
 2間ほどの間口の本屋を見つけたので、中に入ってみる。奥行き2m程の広さで,壁一面に雑誌や単行本が並び、所々に米国や日本のものも見えある。日本で捜して見つからなかったAddison Wesley Programmers Guide to the EGA and VGA Cardsを見つけたので、早速購入する。26.95米ドルの本だが1万1000ウォン(約2200円)だという。日本だと6000円は下らないはずだが,円ドル換算レートよりも安いという不思議。逆に日本の雑誌は単純換算の約4割増しと高めだ。
 続いてMacintoshを置いている店があったので,価格を聞いてみる。MacintoshSEが約240万ウォン(約48万円)というのは日本よりも安いが,韓国では個人購入できる価格ではない。その点をたずねすると,店の主人は「NECがパソコン市場を独占すある日本でもMacintoshはその優秀さで売れているそうじゃないか。韓国でもいいものを欲しがる人はたくさんいるからね」と,どこかの国の輸入代理店と同じような答えを返してきた.ひょっとしたらこのような回答は,ディーラーのマニュアルに書いてあるのだろうか。

竜山電子商街
 竜山電子商街の存在は、三星電子ソウルオフィスの金さんに教えていただいた。こちらは最近できたばかりの電気街で,世運商街を少し小さくしたようなビルに入っている政府が膨らみすぎた世運商街からの移転を奨励して生まれたそうだ。場所は米軍の基地に近く,有名なショッピング街の梨泰院(イテウォン)と,ソウル市内を流れる漢江(ハンガン)に挟まれた地区金さんの話で梨泰院と同じく米軍関係の外国人客をあてこんで梨泰院の近くの竜山に電子商街を誘致したという。ここは地下鉄等の交通機関から離れているので、タクシーで行ってみよう。
 韓国語は日本語と文法が似ているので、行き先をハングルで伝える「竜山電子商街に行ってくだ「さい」は「ヨンサン チョンジャサンガ カジュセヨ」となる.なお,助詞の「に」は省略した。「カジュセヨ」が「行ってください」なので,「セウンサンガ(世運商街)カジュセヨ」などと応用できる。
 さて、タクシーから電子商街の赤いビルが見えてきた,3階建てビルの2階は世運商街同様に家電商が軒を連ね,3階に150軒近いコンピュータショップが入っている.
 こちらも世運商街同様IBMPC互換機が中心だが,コモドールのAmiga2000を置いている店もあある。気になる価格は300万ウォン(約60万円),AmigaCOLTというXT互換機も展示されており,こちらは90万ウォン(約18万円).
 また値段は不明だが,インテルの箱に入った数値演算チップ80287なども置いてある.
 またこちらでもソフトの類は少なく,ハングルDOS(MS-DOSのハングル版)を捜している旨を店員に伝えると,となり近所の店にも声をかけてくれたが,筆者所有のCGAで動くバージョンはついに見つからなかった(コラム参照)。



コラム
番外:ロッテデパート電気製品売場
 ロッテデパートは,観光ガイドには必ず載っているショッピングのメッカ電気製品のフロアにコンピュータがあると聞いたので,寄ってみた。並んでいたのはMSXとXT互換機だ.MSXは大宇のCPC-400で92万ウォン(約18万円),XT互換機は金星のGMC-6510で約110万ウォン(約22万円)。ここではSEK'89で紹介したDECOMのデータベースサービスKETELの株式市況を実演している.韓国では最近株式投資に人気があり,韓国経済新聞の提供する株式市況は一般家庭にデータ通信を売り込む格好の材料となっているようだ。

結局このスクラップでは韓国の躍進について明確な理由は分からなかった。今後のスクラップで分かるかもしれない。
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