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TRON坂村健氏インタビュー(月刊ASCII 1987年6月号6) [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

この号ではTRON開発者の坂村健氏へのインタビュー記事があった。
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目次には坂村健氏の写真があった。
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結局TRONは私たち一般ユーザーの下には降りてこなかった。知人の中に使用した人はいなかった。私たちの中では米国に潰された。マイクロソフトが世界を制覇するために米国政府を使って潰しにかかったと言っていた。今でいう陰謀論をまことしやかに語り合っていた。

このインタビューは貴重な記録なのでスクラップしておく。
急上昇してきたTRONの認知度
――岩波書店からお出しになった「TRONからの発想」という本を,このあいだ書店で見かけてびっくりしたんですが,コンピュータにはあまり縁がありそうにも思えない若いお嬢さんが買っている.朝日新聞の一面にTRONの記事がデカデカと載ったり......
坂村 あの本は,初版が1万部.発行日は2月27日になっているんですが,発売3日目で売り切れました.さっそく再版がかかって,それが3月18日にできましたが,その前にもう3刷目の予定が決まってしまった.岩波の編集者も,最初は「1万部売れないと困るんですよ」と泣きごとをこぼしていたのが,すっかり強気になって,「どんどん行きます」なんて言っていますよ。
――ここにきて,TRONを巡る状況が大きく変わってきた.認知度もたいへん上がってきているわけですが,我々ユーザーとしては,TRONマシン,特に次世代パソコンとして登場するだろうBTRONのイメージを何とか早くつかみたいというわけで,まずBTRONに関してうかがっていきます.
私は「TRONからの発想」を読んでいなかった。そういえば、この当時社会現象と言っては大げさだが、パソコンマニア以外にもTRONは関心を持たれていた。
ピュアBTRONとμBTRON
――-BTRONがパーソナルコンピュータ,あるいはワークステーションのイメージ.それに対して,今の小型専用ワープロに対応するSUBTRONが提唱されている.UBTRONは,3つの対象,ユーザー本人,他人,そして他の機械とのコミュニケーションを実現する道具として規定される.自分自身との対話の道具は、ワープロとお絵書きソフト,他人との対話は通信,そして他の機械との対話のためにμTRONバスと名付けられたインターフェイスを持っている.
 こうした性格をBTRONは与えられているわけですが,坂村 さんとしては,μBTRONには,BTRONよりも先に出て欲しいんですか.
坂村 そう.普通の人はプログラミングなんてしないから,これでいい.これはパソコン通信の端末になるから,アスキーのACSの端末としても使ってください.しかも,これはファクシミリにもつながる.全世界とコミュニケートするために,通信のプロトコルはできる限りほとんどのものをサポートするようにしていますから,かなりいいマシンですよ.
――-BTRONのワードプロセッシングのソフトは作り付けですね.
坂村 ええ,作り付け.
――-このワードプロセッサの機能を,TRONは規定しているんですか.
坂村 いや.機能は規定しないから,各社によって違う.たとえば,ある会社は「文字が無制限に拡大,縮小できますよ」なんてことをいうし,あるところは「大・中・小」の3つしかない.一括変換ができるのもあれば,そうじゃないのもある.そこは、ばらつく.競争がある.けれど、だからこそ面白いんじゃないですか.しかも操作法はみんな同じだから,1つをマスターすればしめたもの.後はいろいろな製品の中から,最も気に入ったものを選んで使えばいい.
 今,そうしたBTRONの操作に関する,機能辞書を作っているんですよ.それも本にして出す.ただ,その機械で実現されていない機能を指示すると,「この機械にはこの機能はありません」と出てきちゃう.ただしこれも,単純にたくさん載せればいいというもんじゃないと思う.たとえば100個機能があったとする.この中からあるメーカーはあるものを20個選びました。他のメーカーは別のものを30一個.もちろん共通のものはあるだろうけれど,その選び方の妙味もあるんじゃないかこれは値段に直結してくるでしょう.100個選べばどうしても100万円になる.それに対し,20個で行けば10万です,ということになれば,10万の方がいいという人は必ずいる.だからフル・パワーで全部入れ込めばいい,というものじゃない.
その当時までOSはマシンをつかうために設計開発されたものだけれどもTRONは先にこんなOSが欲しい。それを使えるマシンを作って欲し。という逆転の発想だった。マシンがあれば後発のOSでも既存のOSではできなかったことができますよ。とかのキャッチフレーズで販売することを考えソフトを開発することができるが、OSが先でマシンが後となると商業的には厳しいものがあるので米国の陰謀とかを持ち出さなくても一般ユーザーのパソコン環境で成功しなかったのも当然だったろう。
BTRONマシンはTRONチップを使うのか?
――現在,日立と富士通が32ビットのTRONチップの共同開発を進めている.さらに,三菱,東芝,松下も開発中ですね.それで最初に出てくるBTRONの場合,TRONチップを使わなくちゃいけないんですか.
坂村 最初は別に,TRONチップである必要はない. ――とすると、最初に出てくるBTRONは,既存の汎用16ビットプロセッサを使う?
坂村 BTRONというより,μBTRONね.
――今,BTRONではなくて,μBTRONと断られたのは,ピュアなBTRONに求められる機能は、16ビットのプロセッサではこなせないという意味ですか?
坂村 おそらくね.ただ,どうやって機能を実現するか,その方法は規定していないと言っている以上,何でなきゃいけないとは言えない.もっとも,パフォーマンスは出てくれないと困るから,そこを言っているわけです.
――とすると,マシン間でのソフトウェアの互換性の問題はどうなるんですか.
坂村 μBTRON,BTRON,ITRONみんなそうなんですけれど,まずデータ互換性に関しては完全にあります.それからソフトに関しては,システムコールの互換性がありますから,高級言語で書いたソフトウェアは完全互換,ただ,機械語で書いたものはだめ,チップが同じじゃないんだから、当たり前の話です。
――μBTRON,BTRONともにフロッピーディスクドライブは3.5インチ2HDで,どこに持って行ってどの機械にさしても,読めるわけですね。
坂村 読めます。
80386や68020とかが出始めたときに32bitといってもそんなに性能は凄くないのにどうなのかなと思えるのは34年後の未来から眺めているからで、これだけでもスクラップしたかいがある。
実身/仮身モデルとは何か
――BTRONでは,実身/仮身モデルというファイル構造を提起されていますね。たとえば実身/仮身モデルを説明している文章を読むとき,仮身とはなんぞや,実身とはなんぞやがそもそも分からないとする.ただし「仮身」と「実身」という言葉には,何本かの短冊を四角でかこったマークのようなものがついている.そして,このマークを選んで「開けごま」とやると,その言葉に関する注釈文がワーッと開いてくる.これ1つの仮身から実身を開いて,その実身の中にもまた仮身をしこめるんですか?
坂村 そう,ピュアBTRONではそうなっている.だけどμBTRONではそうなっていなくて,一重のレベルまで.これを実行するためには,インプリメンテーションがたいへんになって,メモリも食うんですよ.ただピュアBTRONの方は多段に開きますから,非常に面白い.たとえば「注」にしても,注の中にさらに分からない言葉があればつぎつぎと無限に開いていくこともできる.無限のヘルプ機能も可能.実身/仮身モデルにぶち込めば,アドベンチャーゲームがそのままできてしまう.
――なるほど、ある状況があって,次にどう進むかがいくつかの選択肢として示されている.これが仮身で,どれかを選択してそれを開くと次のシチュエーションを示す実身が開き,その中にまた次を選択する仮身が,選択肢として入っているわけですか.
坂村 このファイルの構造はネットワークで,ツリーじゃない.だから複雑なヘルプ機能を実現するときにも,アドベンチャーゲームでも,1つの答えにたどり着くのに,いろいろなパターンがサポートできる.ただしツリー構造ではそうは行かない.いったん階層の下まで開いた後,隣の枝別れした先に行きたいとなったら,根っこまで戻って,もう一度開いていかなくちゃいけない.ネットワーク構造はそうではなく,あるものとあるものが関係あれば,それをダイレクトに結んでおける.
――BTRONで実身/仮身モデルをユーザーに提供するとして,どういう使い方を想定されているんですか.
坂村 いろいろあります。ワープロを使ったときでいえば,今米国で非常に有用視されているアイデア・プロセッサが,これでそのまま実現できる.まず文章の骨組みを作る.第1章はこう,2章はこう,結論はこう.さらにその章の第1節はこう,2節はこう.そういうやりかたで文章を書く.1章を書きながら4章を思い付いたら,途中でそれを書く.そして最後に全部の仮身を開けば,1つの文章になる.
 それと,さらにいいことは,ウィンドウの中に文章の骨組みを示す仮身がずらりと並んでいる場合,たとえば構成上,2章として考えていたものを4章の後にしたほうがよい,と思ったとする.その時は,電子ペンで2章としていた仮身を4章の仮身の後に持っていく。すると中身の実身も,それだけで全部4章の後に動く.ワープロでいう,全移動になる.このBTRONの実身/仮身モデルというのは,この機械を清書機として用いるのではなく,考えるためのマシンとして使って欲しいための構造なんですよ.

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実身/仮身モデルについては色々解説を読んだがいまいち必要性が理解できなかった。
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2バイトコードを実現するTRONの国際性
――TRONの持つ世界性の問題についてうかがいます.アルファベットと数字だけを扱うのなら,1バイトコードで大丈夫、ところが仮名に加えて膨大な数の漢字を持つ日本語を取り扱うには,2バイトコードが必要というわけで,このBTRONは、初めて2バイトコードの使用を前提としたマシンになる.
坂村 今まで2バイトコード系のものはない.TRONが初めてです.
――世界的な展開として,こうした2バイトコードのマシンが受け入れられる先として,一番期待されるのはどこですか?中国かな?
坂村 いや.アメリカでも,そうしたマシンに対する期待が高まっていますよ、アメリカの文化の中には世界各国の言葉が入り込んでいるし、自然言語翻訳なんて課題に取り組んでいると,翻訳する対象としてアメリカ人が日本語を取り扱う機会も多くなってくる.
――世界全体がますます「国際化」していくとすれば,コンピュータもそれにつれて国際化する.そのためには、2バイトコードが不可欠ということかな.
坂村 そういうことです.特に数値データではなく、文字データを扱うマシンでは,絶対そうなると思いますね.
34年後の今はUnicodeが使われており2バイトどころか4バイトのUTF-32まで規定されている。UTF-8は変態的で1バイトから4バイトまで使える。まあ顔図形まで使えるUTF-32はやりすぎではないかと思っているけど。
TRONキーボードへの期待と不安
――坂村さんはよく,TRONの説明に車を引合に出される.車種が変わっても、車ではアクセルやブレーキの基本的な位置関係が変わることはないのに,コンピュータではそうは行かない.まったく操作の基本が決まっていない.確かにそうした傾向はあると思うけれど、なかで唯一,かなりがっしりと固まっているのが,現在のキーボードじゃないでしょうか.ユーザーとして私自身,TRONを使いたいと思うけれど、1つだけ抵抗があるのはTRONキーボードです.
坂村 確かにTRONのアルファベットの標準配列は,ドヴォラクだけれどクワーティにしたければ,ソフトウェアでなりますよ.
――ああ,TRONの英語の配列はドヴォラクなんですか.JISキーボードでも採用しているアルファベットの配列,いわゆるクワーティは、タイプライター時代の機械的な制約で決まった.それに対し,人間工学的な配慮に基づいて並べ変えたのが,ドヴォラク.
坂村 そう,ドヴォラク.英語に関してはTRONはかなりフリーだから「初めてやるんだったらドヴォラクの方がいいですよ」と言っている.どうせ始めるんなら,ドヴォラクを標準サポートしていますよ,とねだからもうクワーティを覚えちゃってクワーティでなきゃいやだって言うんだったら,クワーティだっていい.そうするのは非常に簡単だから,やりたいんならそうすればいいでしょう.
――ユーザー自身が?それともユーザーからの声がメーカーに届いて? 坂村 メーカーもクワーティくらいはオプションに入れておくでしょう.スイッチをオンにするとクワーティになります,というくらいのことはやってくれるんじゃないのかな.
 そういうことをやるために、ICカードを差し込むようにしているんですよ.最終的に仕様を詰めている段階で,まだ決まっていないんだけれど、そこにパーソナル情報を入れておくだからよそに行って,人の家のBTRONにこれを差し込めば、自分がイニシャライズしといたマシンになります。標準品としてのTRONが満たす要素は規定するけれど,それをパーソナル化することには、一切文句は言っていませんから.
 それとTRONのキーボードは,人間の手の大きさを実際に測ってそれに合わせて作ってあるから,触ってみると気持ちいいですよ.さらにもう1ついいところは,英語にした時も,仮名モードにした時も,記号のキーはすべて同じ位置だということ.普通のキーボードはそうなっていないでしょう。だからこキーボードで困ることは,たぶんないと思う.特にローマ字で打ちたいなんて人はね.
――抵抗あるのは,富士通の親指シフトをやっている人だけかな.
坂村 ううーん.富士通の親指シフトは、同時シフトにこだわっていて,シフトキーを押しながらキーを打つ,一般的なシフト操作では受けつけられない.TRONでは,同時シフトでも普通のシフト操作でも受けつけるようにして,打ちやすくしている.
 こういう話をコンピュータを知らない人にすると,「これまでそういうふうにはなっていなかったんですか」と言う.「当たり前のことのように思うけれど」と言ってね.そのコンピュータを知らない人にとっての当たり前,「常識」にTRONはチャレンジしている.みんながそうなっていればいいな,と思うようなことが実現されている.どんな操作に関しても,アン・ドゥがきくとかね.
――アン・ドゥ,言ってみれば将棋の「待った」.何か操作して,それが間違いだった場合,取り消して操作前の状態に戻る機能ですね.これが,どういうところでもきくんですか.すべてのオペレーションに対して......
坂村 全部アン・ドゥをきかせろと言っているんです.そういうことをやると,やっぱり作るのに時間がかかる.シーケンスも複雑になって面倒になる.けれど,使いやすさからいえばよくなる。もう1つ,富士通の親指シフトは同じ手の親指シフトが多いが,その操作は手首を水平よりも内側にひねる内転運動が多いことを意味している.ところが,このような内転運動は、筋肉に負担をかけていて,労働医学上好ましくない.TRONキーボードでは,同じ手の親指シフトが少なくなるように配列を工夫している.さらに,キーボードを左右に傾斜させることにより内転の角度が大きくならないようにし,疲労が起こりにくいように改善しているんです.
キーボードについては坂村健氏は見込み違いをしていました。人間をなめるなということ。というのも不便なものでも人はそれを使いこなすということ。ポケベルの数字送信が始まったとき簡単なものでは「194」が「いくよ」とか数字で連絡を取っていた。文字が送れるようになってとき数字二桁を日本語に変換して送っていた。ガラケーになってトグル入力、スマホになってフリック入力。キーボードが無くても使いこなすのが人というか若者。いやジジババでもトグル入力は使っている。結局入力を仕事とする人以外には人間工学的にデザインされた優れたキーボード、一般ユーザーからみると奇妙なキーボードは要らないのだ。
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BTRONはいついくらで手に入るのか
――さてそうした性格を持ったμBTRON,ピュアBTRONがいくらくらいの価格で,いつごろの時期に出てくるのか。どうしても興味はそこに行く.
坂村 メーカーがいつ出すなんてことは,私と関係ないところでビジネスとして進んでいる.メーカーはもし売り出しで失敗すれば損をするわけだし,慎重にならざるを得ない。そうしたデリケートな問題に関し,僕は喋れない
――坂村さんとしては,プロジェクト全体がうまく運ぶことが最終的な目的でしょうしね.
坂村 そう.そのためには,どこにも迷惑をかけるようなことは言いたくない.ただユーザーにとっていつごろ,いくらくらいで手に入るかというのが,最大の関心事であるというのは,よく分かります。けれどしょうがない.まぁ,もう少し待っていれば,出してきますよ,いろいろと.シンポジウムを見てもらえば分かるけど,皆さん累積で言えばずいぶん多額の研究費をかけてやっているのに,商品化しないなんてことはない.BTRONは1つも出ませんでした,なんて馬鹿なことには絶対になりませんから,安心して......
――安心して,今はコンピュータを買うな?
坂村 そうじゃない,そうじゃない.今のものを買うななんて僕は言ってない.ただ,BTRONを買いたいと思っている人の期待には,いずれこたえられると言っているだけ。
――メーカーがどう商品化するかは分からないでしょうから,坂村さんの期待を聞きますが,BTRONの価格帯はどのくらいを期待されているんですか.
坂村 安いものから高いものまで.ファミコンくらいのものから......そう,1万円くらいのものから,1億円の機械まで.それが僕の期待.
―1億円のBTRON?
坂村 だって,3000ドット×3000ドットの解像度を持つ超高性能カラーディスプレイを付けたら1億円くらいになるよ.4000ドットでもいいですよ,とにかく手に入る最高のディスプレイを付けたら,1億円だと思う.だけど家庭のテレビに付けるBTRONだって,作ろうと思えば作れる.TRONで統一を目指しているのは,「作法」なんだから、だから1万円から,1億円と言っている.ただし,操作方法はみんな同じ家庭では安いのを使って,会社に行けば素晴らしい解像力のディスプレイを持ったやつがある.そのすべてに関して,データの互換性がある.こういう楽しい世界になるんじゃないですか.けれどそうは言っても,現実的に一番焦点化してくるのは,今のパソコンと呼ばれているマシンの価格帯でしょうね.専用ワープロの10万円くらいあたりから,いわゆるパソコンと呼ばれている商品の価格帯. ――次に,いつまで待てばいいか.
坂村 TRONというのは,普通の人が思っているよりは進んでいますよ. ――ちょっと念仏を唱えますから,聞いていてください.今年の秋くらいには,最初のBTRONマシンが出るんじゃないか。おそらくμBTRONになるんじゃないか.
坂村 うん,μTRONじゃないですかね.
――ただピュアBTRONに関して先行しているメーカーもその直後には出してくるんじゃないでしょうか。
坂村 出せるとは思う.ただ出せると思うのと,出すというのは別.たとえばDATだってそうでしょう。技術的には出せたって,いろいろな問題があって,なかなか出せなかったでしょう.だから今のメーカーの行き方がいいと思うの.今,練りに練っている.そうやって後になって出てきたものほど,いいものになると思いますよ.そんなに焦って,試作品みたいなものをぽんぽん出されちゃ,たまんないでしょう.そういう意味で言えば,きわめて良心的な製品がたくさん出てくると思っているわけです。
店頭でTRONを見た記憶がないのだが、発売されていたのだろうか?スクラップしていけば分かるだろうが、記憶とはこんなもの。未来から来た人のことを連想した。未来人が現在に来てもすべてが分かるわけではないので例えば私が34年前にタイムトラベルして「TRONはいつ頃売っていましたか?」と尋ねられても「分かりません」としか答えようがなく、それを聞いた34年前の人が「未来から来たなんて嘘だ。お前は嘘つきだ。」と言われるのだろうなと思った。
BTRONISMS-DOS,UNIXを喰うか?
――研究室に,Macがおいてありましたね?あれは何に使っているんですか.MacにTRONのキーボードをくっつけて,TRON作法でマックを使おうということですか?
坂村 そういうことも,やろうと思っています.MS-DOSの周りにTRON作法を入れてみようとか.UNIXの上にTRONをかぶせるとかね.というのは,TRONというのはかなり上位で,UNIXもMS-DOSも決めていないようなものを規定している.だから試しに、コアのところはUNIXとかMS-DOSにしておいて,周りのマンマシンインターフェイスはTRONにしてみよう,なんてことができる.それだけの話ですよ.
――それだけって言っても,研究というのは普通,目的意識を持ってやりますね.UNIX,MS-DOSあるいは,MacDOS.こうしたものを核で使いながら,マンマシンインターフェイスをTRONに合わせる.この狙いはなんですか.
坂村 まあそれは,TRONが階層構造をもって定義されていることを実証するためですよ.
――もしそれが実証されれば,いろいろなOS上で開発されているソフトウェア資産が,TRON作法を通じて活かせますね.
坂村 うまく行けば,MS-DOSの資産が活かせるかもしれない。ただこれは,研究段階の話ですから、それに,TRONプロジェクトの大きな流れの中では,ピュアBTRONが伸びていくことを期待していますよ。だけど,今まであるものとどう関係するか,といった研究も,十分やっている.無理に肩肘張って,「関係ない」なんていう必要はないんじゃないですか。
――なるほど.では商品化されたBTRONと出会える日を,首を長くして待っております.
34年後に残っているのはMacOS,Windows,UNIXなので最古参のUNIXというのはやはり強いのだと思った。Windowsでcmdを呼び出せるけどUNIXのコンソールとは触り心地が違う。MS-DOSを使っていたのだがWindowsのcmdよりUNIXのコンソールの方が似ている気がする。
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