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AXパソコン(月刊ASCII 1987年11月号11)緊急レポ [月刊アスキー廃棄(スクラップ)]

EXPRESS特別企画の最新機種緊急レポートの最後はAXパソコンだった。
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AXは規格なのか

 AX仕様を発表したのは,14社からなる「日本語AT検討会」という団体であったが,発表にともない,AX協議会設立に向けて「AX協議会準備委員会」となった.AXとは,この委員会の提唱する日本語化AT互換機の総称である.
 マイクロソフト古川社長のインタビューでも明らかになるが,AXは,規格としてお互いに監視しあうのではなく,米国市場のような自然発生的な統一を狙っている.このため,検定を受け,それにパスしたのちにマークを付けることのできる,世間でいう「規格」とは性格を異にする.
 参加団体は,流通,販売,アプリケーション,周辺,ハードウェア製造と顔ぶれは多彩だが,今後の動向いかんによっては参加企業がふえることもありうる.また、直接ハードウェアを製造していなくても,AT互換メインボードにAXで採用されている日本語表示を行うためのJEGAカードを組み合わせて製品を作ることも可能なので,流通,販売企業が,独自のマシンを販売することも考えられる.
 AXに参加しているハードウェアメーカーとしては,三洋電機のほか,シャープ,三菱電機,アイ電子測器,ミノルタカメラなどがあるが,三洋電機はすでにAX仕様のマシンを発表しており,この他にも年末から来春にかけて製品発表を行うメーカーが出てくるだろう.
残念ながらAXパソコンは市場では負けてしまった。何年か先のDOS/VパソコンでAXの精神が引き継がれていった。
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MBC-17J。最初に紹介されたAXパソコンが三洋電機というのがこのAXパソコンの立ち位置(業界の空気とか雰囲気とか)がわかるような気がする。
AXパソコンとはどんなパソコンだったかスクラップして思い出す。
AX仕様の実体

 ハードウェア面からいえばAXは基本的には,ATの表示関係に変更を加えたものであるといえる.その他の違いのほとんどはOS側やキートップの刻印などのソフトウェア的なものである.そこでAX仕様の話をする前に,その前提となるIBMPC/AT(以下ATと呼ぶ)の概略を説明することにする。
 標準的なATは,CPUにクロック8MHzの80286を使い,メモリはメイン基板上に512Kbytesである.表示回路,ディスクインターフェイスなどはすべて拡張カードになっていて,スロットを使って接続し,CPU基板とは独立した形になっている.基本的にIBMの下位機種であるIBM PCそしてXTとハードウェア,BIOSともに互換性を持っている.
 表示カードは、IBMがサポートするもので3種程度,さらにサードパーティが提供するものを含めると5~6種類ほどある.それぞれが,解像度,カラー/モノクロなどの違いがあり,下は640×200から1024×1024までの開きがある.このなかで最もポピュラーなものは,CGA(Color Graphics Adapter)と呼ばれるものだったが,グラフィックス解像度が640×200のモノクロとなっており,最近はその上のクラスにあたるEGA(Enhanced Graphics Adapter,グラフィックス解像度は640×350で16色カラー)が急速に普及している.
 このような複数の表示基板に対応するため,市販ソフトウェアのほとんどがBIOSを使って表示を行うか,その種別を判断して表示ルーチンを切り換えるなどの構成になっており,最悪の場合でもインストールプログラムを使うことで,自分の機械のハードウェア構成にソフトウェアを合わせることができるのが普通である。
 EGAは,640×350のグラフィックス表示,または80文字×25行のテキスト表示が可能で,さらに下位のCGA互換モードを含む10の表示モードがある.しかし,グラフィックスとテキストを同時に表示すること(スーパーインポーズ)はできない.カラーは16色だが,パレット機能を使い64色から選ぶことができ,水平走査周波数21.85kHzのディスプレイを使用する.
 VRAMは最小64Kbytes,最大256Kbytesまで増設可能であり,最大限に増設した場合には,640×350で16色表示のグラフィックス画面が2ページ使用可能.ハードウェアによる描画機能などはなく,描画はすべてCPUが行う.
 外部記憶としては、5インチ2HDが主流である.AT用のディスクインターフェイスは,フロッピーとハードディスクをサポートするものとなっており,ハードディスクの増設,あるいはフロッピーのみのモデルにハードディスクを内蔵することも簡単に行える.
 以上の解説は、IBMのATについてであるが,アメリカでは,コンパチマシンが数多く出ており,独自の構成になっているものもあるが,ほとんどが,IBMのものとハードウェアレベルでの互換性を保っている。
 AXとは,このATの表示カードをEGA相当のJEGAに変更し,カタカナや漢字キーなどの刻印のあるキーボードを使用したシステムである.このため,IBM PC用のDOSを使ってたちあげると,AX仕様のマシンは、完全なATコンパチマシンとなり,海外の市販ソフトウェアをそのまま実行することができる.なお,AX用のDOSを使った場合には,日本語処理機能が加わるが,ここでも文字コードやその表示などで若干の制限はあるものの,基本的なハードウェアはATのものそのままである。
AXパソコンの元となったIBMのATの解説だったが、読み返すと懐かしく思い出した。結局IBM AT互換機は買わなかった。分析機器にIBM AT互換機がついていたが、PC-9801と比べると画面がチープで文字がチープで使っていて不愉快だった。もっときれいにしないのか。アメリカ人はこんな字でいいと思っていたのか。これでは金を払ったかいがないだろうというような機械だった。
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そんな IBM AT を日本語化する工夫が記事にあった。
AX日本語化のしくみ

 AXの日本語化の中心にあるのは,JEGAと呼ばれるLSIを中核とした表示カードである.これに,BIOS拡張部分やDOSの日本語対応,そして日本語入力FPなどの部分を加えることで,国産マシン同等の日本語処理が行えるようになるわけである.
 JEGAの最大の特徴は,ソフトウェアで2バイトコードの処理を行うことなく,JEGAがハードウェア的に漢字表示を行う点にある.
 国産マシン,たとえばPC-9801シリーズなどでは,文字コードをVRAMのテキストエリアに書き込むと同時に,漢字であることをしめすアトリビュートを設定するといった方式を取っている.つまり表示回路自体は,コード自体で1バイト,2バイトコードの区別をしておらず,アトリビュートでその表示の仕方を決定しているわけである.この方式では,ソフトウェアが2バイトコードと1バイトコードを区別する必要があり,通常はBIOSやOSの文字出力ルーチンでこれを行っている.
 これに対して,JEGAは,CPUの書き込んだ文字コードが2バイトコードかどうかを判断し,漢字とANK文字を混在して表示を行う.このためソフトウェアは,表示ルーチンの中で2バイトコードの処理を行う必要はなく,処理が高速化されるほか,2バイトコードを想定していないソフトウェアでも,漢字を表示させることができる.また,カーソルもその場所のコードにより,半角,全角カーソルと形状が切り換わるようになっている.
 グラフィックス解像度は,最大640×480ドット16色(64色中)となっている.このため,ディスプレイの水平周波数は,31.5kHzのものが必要となる.
 このJEGAによって,アメリカ製のソフトウェアでも漢字表示が可能となるが,2バイトを1文字として扱う機能や,画面の右端における表示などはソフトウェアで行わなければならないことや,8bit目を特殊な用途に使っているソフトウェアもあるので,それらが完全に日本語化されるわけではない.
 なお,このJEGAは,ATのEGAと完全に同等な英語モードと日本語の表示を行う日本語モードの2つのモードを持っており,リセット時には英語モードとなっている.その後,後述のBIOS拡張部分が組み込まれることで,日本語モードとなる.
こういったところが日本人凄いなと思う。新たに凄い規格を作るのではなく、制限された規格のなか何とかしようとする工夫が日本人が得意だった。
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JEGAの表示機能

 JEGAは,単に漢字の表示を行えるだけでなく,アトリビュートにより各種の文字表現が可能である.たとえば,横倍角,縦倍角などの指定を行うことができ,ちょうどワープロ専用機のように画面上でそれらの文字を見ることができるようになる.いままでのパーソナルコンピュータでは、倍角文字の表示は,グラフィックスプレーンに描画を行うことでし行えず,ワープロソフトなどでは矢印などを付加して倍角文字をあらわすこともあった.JEGAでは,このほかに半角文字フォントを2種類持ち,切り換えて表示するなどの機能を持っているため,イタリック体の表示なども行うことが可能となる(表2)。
そうだった。なまじTEXT VRAMを持ったから、ワープロソフトを使っていると倍角文字が表現できない。35年前は見出し、タイトル等の文字の大きさを変えて表現するには倍角文字を使うのが一般的だった。1ページ当たりの行数を変えずに文字の強調ができるのがというかせざるを得なかった。

RAM上に拡張されるBIOS

 通常ATでは,BIOSレベルで画面の出カルーチンが用意されている(表3).このBIOSは拡張が容易な構造になっているので,アプリケーションはBIOSを介して出力を行うように設計しておけば,解像度や仕様の違う表示カードにも対応できるようになる.AXでは,このBIOS部分は,ROM上のものとRAM上のものの2つにわかれる.なお,ATのBIOSはCGAに対応したBIOSとなっており,通常EGAボードにはBIOS拡張のためのROMが載っている.
 AXのROM上にあるBIOSは、ATと完全に互換性のあるもので、AT用のOSを使って起動しても正常に動作するようになっている.しかし,このROMBIOSだけでは日本語表示を行うことはできない.BIOSを日本語処理可能なように拡張するのが,RAM上に組み込まれる部分である.これは,DOS起動時などに“CONFIG.SYS"ファイルなどで組み込まれるもので,BIOSとのインターフェイスを行うINTベクタを書き換え,日本語を扱うル-チンを追加する.
 ATのBIOSは,INTコールによって各種の機能を実行するようになっているため,BIOSの機能拡張を行ってもアプリケーションソフトに変更を加える必要はなく,特殊なハードウェアの場合でもBIOS拡張プログラムを添付することで市販のソフトウェアに対応している.
 AXも同様で,日本語モードの文字出力の場合では,2バイトコードの上位バイト,下位バイトを連続してBIOSの1文字出力ルーチンで出力するだけで,漢字の表示が行える.
 このほか,BIOS上で日本語対応が必要になる部分としては,初期設定関係のルーチンのほか、キーボード,プリンタなどのルーチンがある.AXでは,そのキーボード,プリンタをともに仕様として決めており,AX仕様マシン同士で同じプリンタを共有することも可能である.
 プリンタBIOSには,シフトJISとJISコードへの変換ルーチンがあるが,これはDOSのデバイスドライバから日本語依存部分をなくすためである.コード変換部分では,バイナリデータを保護するためにエスケープシーケンスの解釈を行う必要がある.AXは,プリンタの仕様が決まっているので,この作業をハードウェアを直接操作するBIOS部分に持つことができ,デバイスドライバの負担を軽くし,また,独自のドライバを持つ米国製ソフトウェアにも対応できることになる.
当時はRAMの価格が高かったのでユーザーが使えるフリーエリアを減らすようなものは好まれなかった。だから、これは成功したのかな?まあ、AXパソコンは売れなかったので関係ないか。
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拡張ボードの共有も可能

 ATには,ハードウェア拡張用のスロットがあり,これを使って,RAMカードや各種のインターフェイスボードを接続する.AXは,これと同じスロットを持っており,AT用に設計されたボードを使用することができる.
 現在,日本では,拡張メモリのコンパチボード等が特定機種を対象に出ている程度で,拡張ボード自体の市場はそれほど大きなものではない.しかも,メーカ-の仕様変更に大きな影響を受け,市場としては不安定な部分が大きい.
 米国では,かなりの数のボードが市販されており,ソフトウェアと同じように多数のサードパーティが参入している.中には,純正品と違う仕様のものを作り,それが標準的なものになっている場合もある.例えば,Intel,Microsoft,そしてLotusが協議して決定した拡張メモリの仕様や,Harcurysのグラフィック・カードがそれである.このほか80386や他の32bitCPUの載ったボードなどもあり,旧機種でもこれらを使って最新のマシンと同等の処理速度を得ることができる.今後AXの普及によっては,日本でも各種のボードが流通することも考えられる.
記事中に「も考えられる」とあるが、このように表現されたことは実現されたことがほとんどない。筆者の願望がこのような表現になるのだろう。現在でも製品紹介記事があったとき「も考えられる」と書かれていたら要注意だ。こうして、過去から学ぶことができるのがこのスクラップ作業の効果か。


AX用MS-DOS

 AX用としては,各社共通のMS-DOSが用意されるが,MS-DOSの供給形態がハードウェアメーカーを通してのみとなっているので,AXの場合も,各ハードメーカーが自社マシン用にMS-DOSを販売することになる.そのため,日本語入力FPの選択や付加ユーティリティなどは各メーカーの判断になる.しかし,表示ハードウェア,キーボード,プリンタなどが仕様として定められているので,特殊なハードウェアを利用するソフトウェアでないかぎり,アプリケーションの共有は可能である.また,デバイスドライバ等のハードウェアを操作するプログラムに関しても共有が可能だろう.
 さらに,MS-DOSに各メーカーが添付する外部コマンド,ユーティリティについても,その仕様が統一される.たとえば,プリンタやRS-232Cの設定を行うコマンドやFORMATコマンドのオプション指定などは、各メーカーに任せられているが,この部分も共通のハードウェアを前提にするので,オプション指定の方法や操作などが共通となる.
 このような操作は,あくまでも非本質的な作業であるが,日本の現状では,各ーカーごとにその操作が違っており,ーザーが混乱したり,機種が変わると覚えなおす必要があるなどの問題が起こっている.これに対し,AXでは,このような些細な点についても統一され,1つの機種で覚えたことが他のAXマシンでも通用する.また,外字ファイルやその登録方法も統一され,一部のワープロが行っているように外字を独自に管理する必要がなくなる.あるいは,外字フォントを共用できるという利点もある.
 先の話になるが,今後,IBMPC用として登場する先進的なソフトウェアをATコンパチマシンとしていちはやく動かし,評価することができるという利点をAXは持っている.いままでの状況から考えると,日本のマシン用になるまでに1~2年かかり、手元のマシンで動くまでに長い間またされたことを考えると,このメリットは大きい.
最後まで微妙な表現が散見される。「各メーカーの判断になる」、「可能である」、「可能だろう」、「利点もある」、「メリットは大きい」。だが、結局DOS/Vのように売れなかったわけだから成功したとは言えない。まあ、80286とか80386ではこのような統一規格はPC-9801には勝てなかったということだ。
 
インタビューが2件あった。まずは、日本マイクロソフトの古川社長
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 ――まず,AX仕様というものが出てきた背景について,まとめ役としてお話をうかがいたいのですが…….
 米国では、IBMPCによる標準化は動かしようのない事実ですが,もっと別の観点からみて,ヨーロッパやアジアなどの米国以外の国々でも、PCの互換機のビジネスというものが成り立っています.非英語圏,たとえばスウェーデンなどでは,スウェーデン語用のワードプロセッサがあり,互換機の上で自国語を使いつつ英語の文化に触れている,そしておそらくは,Quick CやTURBO Cなどの最新のソフトウェアも使っているはずです.最新のものを使いながら,その国の文化を大切にしている,あるいは逆に,その国で生まれた文化を互換機を通して,世界に送り出しているのです.
 これに対して日本は,たしかにハードウェアを世界に送り出して、貢献していますが,日本で生まれたテクノロジーを世界に通用させるといった方向では遅れを取っているのではないでしょうか.たしかに日本の文化とか,商慣習などを考えると独自に歩まざるを得ませんが,それと同時にそれが世界に通用する方向でないと非常にまずいわけですよね.
 非英語圏の国でも技術の話,コンピュータの話をする時,技術者はみんな英語を使って話をします。自国の言葉を大切にしているが,言葉が違う場合には英語を使っているわけです.つまり,英語を共通のインターフェイスとしているわけですね。IBMPCのアーキテクチャというのは,これと同じで世界共通のインターフェイスとなっているのではないでしょうか.-アメリカ人はパーソナルコンピュータを買って何年目で後悔するか?という話なんですが、日本だと新しいマシンが出てきて,あっというまに時代遅れになってしまうということもあり,買う時に躊躇してしまうこともあります。個人で買うのもそうですが,企業でも古い機械は,有効に活用されていないというのが現状ではないでしょうか?
 かたやアメリカでは,最初のIBM PCを買った人がまだ使い続けている場合もあるのです。たしかに速度は遅いかもしれません.しかし,最新のソフトウェアを動かすことはできます.これで満足できなければ,キーボードやフロッピーを取り替える,あるいは80386ボードを使うというように最新のマシンと同等になるようにグレードアップをはかることができます.そして,もう残っているのはオリジナルのケースだけになっているかもしれませんが,少なくともパーソナルコンピュータを買ったということに対して後悔はしていないでしょう.
 ――次に,AX仕様はどう運営されていくかということについてですが……
 まだ,AX仕様の運営の仕方を決定してはいません.まあ,AXのマーク,ロゴを決めようという話はあります.
 ひとつ言えることは,マークが付くことで新たな制限事項が起こってはならないということです。マークがあって,一定のクオリティが保証される反面,価格が規制されたり,将来の発展性がなくなったりしてはなりません.だから,もし統一のマークができたとしても,ウールマークやドルビーのマークのような感じになるでしょう。
 仕様についても意図的に細かい所まで決めてしまって、制限をつけるよりも,ここまでは,ハードウェア,ここまではソフトウェアと切り口を決めておき,その実現方法は問わないというのがAXの基本方針です。
 現在のATの状態というものは,規約や規格とよべるものではなく,大変ルーズな状態である反面,フレキシブルで新しいものが出しやすく,市場でお互いに啓蒙しあって進歩していくという形になっているのです.今回のAXの発表に関して,CPUは16bitなのか32bitなのか,という話がありますが,同じソフトウェアが共有できればそれでよく,こだわらないからこそ,さらにその次の可能性も持っているのです。
 また,台湾や韓国製の安価なマシンが登場し、市場が荒れるといった指摘については,「同じ環境を提供するなら,選択の自由は大きいほうがいい」と考えています.たとえばCDプレーヤーは,みんな同じソフトウェアが使えますが,価格はさまざまです。安いものが出てきたからといって、高価なものがなくなってしまうわけではない。その用途に応じた選択の幅が広くなっているわけです.逆に安価なものが登場することで市場そのものが広がる可能性もあります.
 アメリカの場合を見てみれば,80386を使った高価なものから,非常に安価なものまでがありますが,安いものがあるからといって、高いものがまったく売れていないわけではありません.AXは,ユーザーのマシン選択のダイナミックレンジを広くするものであるといえるでしょう.
このような統一規格にからんでくるのがASCII出身者だ。古川社長のインタビューではAXについてふんわりとした発言しか取り出せなかったようだ。まあ、「現在のATの状態というものは,規約や規格とよべるものではなく,大変ルーズな状態である反面,フレキシブルで新しいものが出しやすく,市場でお互いに啓蒙しあって進歩していくという形になっているのです.」と言っているから、AXもそれにならっているのか。最後の「AXは,ユーザーのマシン選択のダイナミックレンジを広くするものであるといえるでしょう.」も何を言っているのか分からない。結局AXとはなんだったんだ。

インタビューの2件目はジャストシステムの浮川社長。
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 ――まず,どのような立場で,なぜ参加しているのかという点についてお聞きしたいのですが……
 立場としていえば,私たちはアプリケーションソフトウェアをAXの上で展開する,ソフトウェアハウスとしてです.
 なぜ参加したか,というと,話は簡単なんですが,アメリカのソフトウェアを使い,同時にそのコンピュータで日本語を使いたいからです.
 アメリカから,英語で「IBMPC用の一太郎はないか」という手紙をもらったこともあります。IBM PCの上で動かすにはどうしたらいいかを考えたこともありました.そんなときに,ヒューレットパッカードからVectraの話があり,その次には東芝のJ-3100ですね.アメリカで発売されているT3100を見たとき,あれだけ大きかったATが,コンパクトになっていて,こんな機械で日本語が使えればと思いました。そしてJ-3100の話があったので,すぐそれに応じたのです。
 このようにIBM PCで日本語を使えるAT互換機に関わっているうちに,ある日マイクロソフトの古川氏から「実は……」と誘われたのが,AXだったのです.
 ――AXをどのように考えていらっしゃるのですか?
 わたしどもはソフトウェアハウスですので、輸出用のマシンと同じ技術でできるなどといった点ではなく、純粋にATコンパチ,PCのソフトウェアが動く機械で日本語が使えるのはいいことだ,と思っています.J-3100やVectraのように個別にAT互換機の仕事をしたぐらいですから,共通仕様ということについては歓迎しています。積極的に推していきたいですね.
 ――AX用の製品としてはどのようなものを計画されていますか?
 まずは、ワープロ,一太郎です.記者発表の会場でも動かしましたが,データショウでも一太郎Ver.3のデモをしました.当然花子も計画しています.
 ソフトウェア的には,一太郎は,花子の機能をすべて包含しているので,一太郎が動くということは花子も動いているということです.つまり,花子のチェックが終わらないと,一太郎も出荷できないのです.ただ,マニュアルなどの問題があるのですが,ソフトウェア的には一太郎が移植できた時には花子も完成しています.
 ――AXは,日本のソフトウェアハウスにとって海外との接点になりえるでしょうか?
 ソフトウェアエンジニアのそばにAXのようなマシンがあると,勉強になりますよね。いままでのオフコン的なソフトウェアから脱したソフトウェアができるかもしれません.そこに日本語対応部分を除けばATと同じなのですから海外に通用するソフトウェア作りを,やってみる人が増えるかもしれません.
 私は,基本的に何かをするときに可能性が大きいほうがいいと思っています.私がいちばん思うのは,コンピュータというのは「汎用品」,色付けされていないものなんです。そのためにソフトウェアがあるわけです.ソフトウェアを入れ換えて使うというのがコンピュータの大前提なのです。その上で文化を作っていくならば,可能性の大きい方へひろがるべきでしょうね。
 私たちの基本方針は,非常に単純なんです.たとえば,かな漢字変換部分を分離したり,文書とアトリビュートを分離してみんなで使う部分と,そうでない部分はきっちり分けることで,可能性は大きくなるわけです.
 ――ジャストシステムでは,やはり海外のソフトウェアなどを研究していらっしゃいますか?
 そうですねよく見ています。もちろん私たちは,ソフトウェア開発の仕事をしているからですが,海外のソフトウェアを見たいと思う人は多いと思いますよ。
 海外のソフトウェアの研究というのは要は,捉え方です。日本のビジネス環境とか,世界の中での日本という位置づけをどのように自分たちのプロダクツへ入れていけるかどうかですね。
 日本だけが単独でよくなるはずはなく,アメリカでよいものができれば,それをすぐ取り込めるような構造にしておく必要があります.また,新しいものがやってくるのはアメリカからだけとも限りません.どこで何が出てくるかは,まったく予想できませんが,何かが起こっているときに日本だけが関係ないままでは困ります。全世界の大きな流れがあるときに,全然別の流れにいたのではだめです。
 パーソナルコンピュータというものが,そのうちにアメリカだけ,あるいは日本だけの「国では支えきれなくなってしまう時期がくるでしょう。ましてや,「つのハードウェアメーカーがなんとかできるものでもなくなるでしょう。IBMでも,多くのソフトウェアハウスとか,莫大なユーザーの意見とか,その資産とによって動かされているのです.だからこのPC互換機の世界というのは,ものすごく大きな広がりをもった世界なのです.
浮川社長のインタビューも大したことを引き出していない。これもなんかふんわりとしたインタビューだった。結果を知っているから思うことだけどこんなふんわりとしたものは成功しないということだ。確固としたものがないからふんわりとした物言いしかできなかったということか。

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